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088 転生者は異世界で何を見る? -プロローグ2-

「……えっ? おれ……、死んだの……?」


 いまだ一人茫然としていた少年が復帰したのか、カラミエルに言われたことを繰り返している。

 ……復帰はまだのようだ。


「うむ。まぁわしが言うのもなんじゃが、そう悲観するでない。

 ……ほれ、あれじゃ、最近流行っとるじゃろ。……つまりあれじゃ」


 何を言いたいのかさっぱりわからないが、とにかく大丈夫だということを言いたいらしい。


「……つまり生き返れる……ってことか?」


 通じたのかどうかはわからないが、少年が希望の灯った瞳でカラミエルを見つめている。

 どうやら混乱は脱したようである。


「似たようなもんじゃの。元通りにはならんがの……。なんせおぬしの肉体はぐちゃぐちゃになってしもうたからのぅ……」


 なぜか遠い目をしながらつぶやくカラミエル。


「ぐ、ぐちゃぐちゃ……?」


不慮(・・)の事故のせいでな……」


 どうやらこのじじいは他人のせいにしたいらしい。一応の説明のために最初は『自分の手違いで』と本当のことを言っていたが。


「そんな強調しなくても……」


 オッサンがポツリと突っ込むがカラミエルはスルーを決め込む。


「ああ、そうそう思い出した。転生というやつじゃな」


 不利な方向へ逸れそうだった話題を無理やり戻すと話を続ける。


「すでに葬式が行われとる世界に元通りに戻してやることはできん。

 異世界にはなってしまうが、記憶をそのままにして肉体もわしが用意してやろう」


「……異世界」


 少年の返事を待たずにカラミエルはオッサンと少女のほうへと顔を向ける。


「おぬしらは……、肉体はそのままあるようじゃから問題ないの」


「よく見たらあんた……、体が透けて見えるな……」


 オッサンが少年をまじまじと見つめながら興味深そうに観察している。


「ほんとうですね……」


 少女も同じくだ。


「えっ? う、うわっ!? す、透けてる……!!?」


 少年も今気づいたのか、今更驚いている。

 自分の胸や腕を触っているがすり抜けたりはしていないようだ。自分自身なんだから当たり前かもしれないが。

 ただしオッサンの手は通り過ぎた。面白くなったのか遊んでいる。


「ちょ……! 気持ち悪いからやめろ!!」


 少年が自分の胸から生える腕に身震いするように叫んでいる。


「こら、マコト! かわいそうだからやめてあげて」


 それを見ていた少女がオッサンを窘めている。


「へーい」


 そんな様子を見ていたカラミエルは若干呆れかえった様子である。


「おぬしら……自由じゃの……」


「……本当にもう戻れないのか?」


 縋るような眼差しで見つめるが、カラミエルはかぶりを振ると言葉を続ける。


「残念じゃが、神であるわしにもできないことがあるんじゃよ……。申し訳ないことじゃ」


 その言葉に少年は項垂れると「そうか」と呟いてしばらく黙ってしまった。


「で、異世界とやらに行くのはいいとして、その世界は安全なのか?」


 ずうずうしくもお茶のお代わりを要求しながらオッサンが疑問を呈している。

 もっともな疑問ではある。転生なんぞしないほうがマシだと思えるようなところでは意味がない。


「そこは安心せい。直近の危機という意味では、きっちりと安全な場所へ送ってやろう」


 どうにも引っかかる言い方である。


「ただし、世界全体として見れば、命の価値の安い世界ではある。おぬしらがおった地球とは違い、魔法があり魔物がひしめく世界じゃ」


「――はぁっ!?」


 聞き捨てならないとでも思ったのだろうか。少年がカラミエルの言葉に反応した。


「……魔法があるだって?」


 いや違った。興味津々だった。自分が一度死んだことも忘れているに違いないと思えるほどにいい笑顔だ。


「うむ。せっかくわしの手で転生させるのじゃし、すぐに死んでもらっても困るでの。ちょっとした能力を授けてやるわい」


「へぇ」


 オッサンがニヤリと笑い、少女も瞳をキラキラとさせて期待の表情に変わっている。


「ど……、どんな能力なんだ?」


「異世界間通信とかできたらいいな……」


 少年とオッサンの言葉に今度はカラミエルがニヤリと口元を歪める。


「それは向こうに行ってからのお楽しみじゃ。先に何でも知ってしまうと面白くなくなるぞい」


「そりゃそうか……」


「……わかっておるでわないか」


「あの……、どうやったらその能力について確認ができるんでしょうか?」


 頷きあっている少年とカラミエルを尻目に、少女がもっともな疑問を挙げたのだが。


「ん? ああ、そこはほれ、一般人と比較してだな……」


 などという曖昧な返事が返ってきた。

 まあ確かに。才能が何か最初からわかってるのも面白くないということなのだろうか。

 だからと言って一生気づかなければ意味がないわけで。とは言えすぐに死なないための能力なのだろうから、そんなことになることはないだろうが。


「さて、他に質問はあるかね?」


 カラミエルの言葉に三人とも無言で肯定する。


「では送ろうかの。達者でな」


 三人が光に包まれたかと思うと、その光の本流は瞬く間に周囲へと広がっていく。

 空間全体が真っ白になったかと思った瞬間に元の暗闇へと戻ると、そこには一人の老人の姿があるだけだった。

神様視点で書こうと思ってたけど自分の容姿を描写しちゃうとダメですね。

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