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082 家事

 朝食を摂ったあとは後片付けである。もう今日は家でゴロゴロしていようか。

 昨日あんなことがあったからか、今日は出かけようとする気が起きなかった。

 モール以外の商店街巡りでもしようかと昨日は考えていたのだが、それは次回にすることにしよう。

 そして買い物を一旦保留にしたことを決意した途端に、異世界で経営する商店がどうなっているのかが気になってきたのだった。


「よし、今日はフィアに家事を教えようか」


「はい。よろしくお願いしますね」


 嬉しそうにほほ笑むフィアに癒される。

 二人でキッチンに並びながら食器を洗っていく。そんなに数はないのですぐに終わる。


「次は洗濯でもするかな」


「任せてください!」


 フィアがとても張り切っている。

 風呂場の脱衣所に設置してある服の入った籠を持ってきて、次々と洗濯機の中へと放り込む。

 服についているタグに記載されている内容によって、ネットに入れて洗濯することを教えてあげると、「先に言ってください!」と頬を膨らませて怒られた。かわいい。


 洗濯機が回っている間は部屋の掃除である。

 使わなくなった部屋は一週間に一度ほどしか掃除はしないが、今日はフィアに教える日でもあるので家中の掃除を二人で一緒にこなしていく。

 途中で洗濯が終わったので、二階のベランダに出て一緒に干していく。


「この『はんがー』って便利ですよね」


 苦戦しながらもシャツをハンガーにかけながらフィアがポツリとつぶやく。


「そうなのか?」


 俺がハンガーにシャツをひっかけて、それをフィアが物干し竿に吊るすほうが効率がいいんだろうが、今はフィアに練習をさせる時間だ。


「はい。物干し用の紐を服の袖から袖へと通して干すのが一般的みたいですから、結構場所を取るんですよね。

 その点このはんがーは素晴らしいです!」


「へぇ、そうなんだ」


 王女から主婦目線な言葉が出たことに驚きつつも、ふとこのハンガーも売れるんじゃないかと思いつく。


「じゃあこのハンガーも売れるかもしれないな」


「――!! そうですね! きっと売れますよ! ……リアにも教えてあげないと!」


 聞くところによるとリアとは、城にいるフィアの侍女頭らしかった。

 フィアの乳母を務めていたということもあり、主婦目線な愚痴――意見をいろいろと聞かされていたそうな。

 ふむ。しかし……洗濯の紐か。ハンガーでいっぱい洗濯物吊るしたら激しく重量でたわみそうだな。物干し竿も売れるだろうか。

 いやそれくらい現地で代わりになるものを調達できないかな。所詮はただの棒なわけだし。


 洗濯物を干し終えてまた部屋の掃除へと戻る。

 上から埃を落としていき、最後に掃除機をかけて終わりだ。


「終わったー!」


「お疲れさまでした」


 額の汗をぬぐいながらリビングでお茶にする。春の陽気とは言え、家の中で動いてるとさすがに暑いね。

 ダラダラとテレビを見ながらのんびりしようとも思ったが、フィアがそうさせてはくれない。

 最近日本にいなかったからとニュース番組を見ているのだが、フィアからの質問攻めが半端ない。

 というか答えられないことが多くてだんだんと萎えてきた。


「あ、あの……、ごめんなさい……」


 そんな俺の様子がわかったのだろうか、フィアがしゅんとして謝ってくる。


「ああ、いや、気にしないでくれ。

 ……と言っても無理だろうが。まあ俺はあくまでも一般人だからなぁ」


 ニュースと言ってもいろいろある。

 政治や地域、スポーツに技術系などなど挙げればキリがない。

 技術系には答えられないことはないが、分野が異なるとさっぱりだ。情報系の大学を出た俺には無理な話だった。


「まあ気を取り直して……、昼飯にするか」


 気分を変えて腹ごしらえとしよう。


「……はい」


 まだすっきりしないのか、フィアの表情は冴えないままである。

 ふとした疑問を解決してくれる便利なものはないものか。いやまぁ、ネットが使えればいいんだろうけど、フィアにはまだ早い気がするしが……。

 そろそろスマホを買ってやる頃合いなのかな。


「うーん、そろそろフィアのスマホを買いに行こうか」


「――えっ?」


 キッチンへと向かっていたフィアの歩みが俺の一言で止まる。

 振り返ると訝しげだった表情が徐々に輝いていくのが見える。何を言われたのかようやく理解が及んだというところか。


「スマホがあれば自分で調べものもできるだろうしな」


 自分で教えられずにスマホ任せにしてしまうことに苦笑してしまう。

 でもまあフィア本人も欲しがってたし、気にしないことにしよう。


「あ……、ありがとうございます!」


 飛び上がりそうな勢いでうれしさを爆発させると、そのまま俺に抱き着いてくるのだった。

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