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072 白川楓

お待たせしました。

そして気が付けば10万PV超えてました。

ありがとうございます。

「誰だ!」


 入口の扉を開けようとして手を伸ばしたところだったので、ちょうど背を向けていたところに声をかけられた。

 くっそ、油断した!

 引き返そうと気を抜いてしまったか……。こういう時こその【気配察知】スキルだろうに、なぜ使わなかったのか。

 内心悔しさに歯噛みしつつも、瞬間にはフィアを背後にかばうように回り込む。

 今更ながらに【気配察知】を使うが、部屋の中にはもう一人気配があった。……楓さんかな?


 奥の扉から出てきたのは二十歳前後くらいだろうか。美人と言うよりは可愛い雰囲気のある女性であった。

 すらっとした細身の体型で、サイドテールにした髪は肩口まで伸びている。


 しかし、どう答えたものか。質問に質問で返すのもなんだし、どちらにしろ避けては通れないことだ。


「……家出した人物の捜索を依頼されました、『なんでも屋 榊』の者です。……白川楓さんという方をご存じないですか?」


 いきなり楓さんがいる前提で話をすれば怪しまれるかもしれないので、捜索中にたまたまここに寄ったという体で話をする。


 よくよく考えてみればそれほど脅威はなさそうだ。今まで雰囲気に流され過ぎて正常な判断ができていなかったんじゃなかろうか。

 探った気配によると奥にいるのはあと一人らしいし、これが楓さん本人だとすれば今目の前にいる女性をなんとかすれば安全は確保できるかもしれない。


「ああ……、あのじいさんの回し者か。

 ……確かに連絡が遅くなったのは申し訳ないとは思うが……、にしてもそんな大げさなことになってるとは……」


 んん……? どういうことだ?

 てっきり身代金目的の誘拐だと思ったんだが、違うのか……?


 訝しんで眉を寄せる俺に気が付いたのか、両腕を組んで渋面だった表情を若干戻してこちらに向き直り話を続けた。


「楓なら無事よ。じいさんから逃げてきたところを匿ってるだけだし」


「あ……、そうなんですか……」


 誘拐とかじゃなかったんですね。それなら一安心です。

 というか、『連絡が遅くなった』と言ってたな……、依頼人には楓さんの無事は伝えられてるってことなのか?

 事務所から直接こっちに来たのも悪い気がしたが……、ってそういやさっきしてた身代金要求まがいの電話がそうなのか……?


「連絡が遅くなったって言うのは……、さっきのでんわ……、ですか……?」


 俺の服の裾を掴みながら、フィアが後ろから問いかける。

 そうだそうだ、それが聞きたかったんだ。

 明日までに用意しろって、てっきり身代金かと思ったんだが話の流れからして違うのだろう。

 楓さんが言った『おじい様なんて大っ嫌い!』というセリフから推測すると、何かをやらかしてしまったおじい様への弁償の品か何かを催促する言葉でもあったんだろうか。


「ああ、そんなところだ。

 ……ここで立ち話もなんだし、中に入りたまえ。楓もいるしな」


 それだけ言うと、奥の扉を開けっ放しにして部屋へと引っ込んで行く女性。

 ふむ。誘拐というわけじゃなさそうだったし、危険なこともないかな……?


「……とりあえず行ってみるか」


「はい」


 奥の部屋へ入っていくとそこは、学校の教室ほどの広い部屋であった。オフィス用テーブルが二つと対になる椅子が二つ、そしてくつろげるようにソファーとソファーテーブルが置いてあるだけで、がらんとした空間だった。

 そこには楓と思われる少女がソファーに座ってスマホをいじって……、いや携帯ゲーム機で遊んでいた。

 人が入ってきたにもかかわらず、楓と思われる少女はこちらに一向に気づかずにゲームに耽っている。

 俯いているために表情は窺えないが、左右端で結ばれたツインテールが手元のゲーム機にまで垂れさがっている。


「楓」


 まったくこちらに気づかない楓に、女性が声を掛ける。……がやっぱりまだ気づかないようで。


「……楓!」


 少しだけ声を荒らげて再度声をかけるとようやく気が付いたようで、楓が顔を上げた。


「……どうしたの? 彩」


「はあ……、楓にお客様よ」


 彩と呼ばれた女性が大きくため息をつくと、言葉と共にこちらを指示してきた。


「……? お客……?」


 つられるようにこちらに顔を向ける楓。

 そこにあったのは、面倒くさそうな表情を顔に張り付けた美少女だった。その表情が示す通り、手に持ったゲーム機を放そうという素振りもない。早くゲームに戻りたいとでも言いたげだ。


「……誰ですか?」


「楓のおじいさんからの刺客(・・)らしいわよ」


 彩の言葉を聞いた楓がピクリと反応したかと思った瞬間には、その顔から表情が消え、額に青筋が浮かんだ……ような気がした。


「――なんですってええぇぇぇ!!」

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