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049 モンスターズワールド -両親-

「そなたが娘を連れ去った張本人で間違いないかな?」


「ぶほっ!?」


 ここは城の応接を目的とした部屋の一室だ。いきなり謁見の間とかに連れて行かれるのかと思ったのだが、それはどうやら回避されたようだ。助かった。……のかな。

 謁見の間という他の貴族などの人間からの視線が集まる場ではないとは言え、応接室はそこそこ広く、俺とフィアと国王夫妻の他には、近衛騎士と思われる護衛の人間が四人ほどいる。

 そんな中、挨拶もそこそこに席に着いた俺に齎された国王からの第一声がソレだった。


 俺が座るテーブルの反対側に左からフィア、国王で父親であるレオンハルト・フォン・ブレイブリス、王妃で母親であるアリエル・フォン・ブレイブリス、と三人が腰かけている。その左右と後ろにそれぞれ騎士が二人ずつ、こちらを警戒するようにして立っている状態だ。

 というかいきなり『連れ去った張本人』とか誤解にもほどがある。思いっきり噴き出してしまったが仕方がないだろう。

 レオンハルト王の顔色を窺ってみるがその表情は読めない。隣のフィアは真剣な表情で、反対側にいるアリエル王妃に至ってはニコニコと笑顔を絶やさずにいるのだが、そこからは何も読み取れない。


「いや、あの……、連れ去ったとはいささか語弊のある言葉ですね……」


 緊張に震える声ではあるが犯罪者にされるわけにはいかない。ここは抗議しておかないと。


「ほぅ。違うと申すか……。ではどういう言葉が相応しいかね」


 威圧感たっぷりに肩眉を上げるがこちらを糾弾するわけではなさそうだ。続きを促す言葉をかけるレオンハルト王。

 ……にしても俺みたいな一般人にこうも簡単にレオンハルト王とアリエル王妃が姿を現してもいいのかね。しかもアポなしで来たはずなのに待ち時間もなしときたもんだ。

 まあ、長らく行方不明だった娘が現れたともなればしょうがないのかもしれないが。


「えーっと……」


 なんと言ったらいいものか。あの魔法書は……って、フィアは知ってるんだし、レオンハルト王にばれるのも時間の問題か。


「異世界転移する本を持ってるんですけどね、王女様が勝手に使って別世界へと飛んで行かれましたので、あわてて後を追って護衛をさせていただいておりました」


 うむ。だいたい合ってるはずだ。断じて連れ去ったわけではないのだし。フィアを守ったのも事実だ。

 これで相手が納得してくれるかどうかはわからないが、フィアが勝手に先走ったのは事実だ。

 恐る恐るレオンハルト王の表情を窺うが、微妙に顔を顰めていた。アリエル王妃はニコニコ笑顔に若干の苦笑が混じっている気がする。フィアは……、なんだか真っ青だ。

 ええと、これはどういう状況だろう。レオンハルト王の顰めっ面をみた限りでは、『娘がそのようなことをするわけがなかろう!』とか怒られるのかと思ったけど違うのか。


「……本当なのか? フィア」


 レオンハルト王が顰めたままの顔を隣のフィアにギギギっと向けている。

 問われたフィアと言えば、自分の父親であるレオンハルト王を真っ青な顔をしたまま見返していたが、やがてフイと目を逸らす。

 そんな様子を横目で見ていたアリエル王妃がとうとう口を開いた。


「フィア」


 母親の短い言葉が出た瞬間、ビクッと体を震わせるフィア。

 なんとなく父親よりも母親のほうが強いという予感がする。アリエル王妃には逆らわないようにしよう。


「あっ……、えーっと、それよりも、これおみやげです」


 何とか話を逸らそうとしたのか、思い出したようにお土産をポケットから取り出してテーブルに置いた。

 もちろんそこにあるのはソーラーLEDライトだ。おもちゃの方の。

 ってか、今それを出しますかね。思ったよりもしっかりした両親みたいだし、そんなもので話を逸らしたりできるわけが――


「なんだこれは」


「まあっ」


 ありました。

 二人の視線はテーブルの上にあるLEDライトに釘付けだ。さっきまで表情が読めないと思っていたのにこの変わりよう。

 ここにきてようやくこちらも相手を観察する余裕が出てきた気がする。

 レオンハルト王はがっちりとした体格で髪と同じ色の赤い髭を蓄えた蒼の眼光鋭い国王だ。

 隣に佇むアリエル王妃は艶やかな金髪をストレートに肩口まで伸ばしたほっそりとした体型をしている。その吸い込まれそうな紫色の瞳は今はテーブルの上にあるLEDライトに向けられているが。

 こうしてみるとフィアの瞳は父親似、髪の色は母親似といったところか。

 などとじっくりと観察している間にもおみやげの説明がフィアからなされていたようで。


「な、なんとっ! 魔力を使用せずに明かりを灯す道具であるとっ!?」


「素晴らしいですわね!」


 フィアを叱る様子に見えていた二人はまんまと当の本人に意識を逸らされたのであった。

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