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044 暴露

「というかフィアさんって、このゲームの王女様に似すぎでしょ」


 スマホでゲームの登場人物を表示してフィアと見比べる明。画面の中の王女様は五頭身ほどでデフォルメされているが、本人には違いないのでかなりそっくりだ。


「どれどれ……」


 興味本位でスマホの画面を覗き込む穂乃果。


「うわっ、ちょっとこれ似すぎでしょ。

 ……ん? フィアリーシス(・・・・・・・)・フォン・ブレイブリス第三王女?」


 もちろんゲームの登場人物紹介のページだからして名前も載っているわけで。


「え? ……名前も似てるとか、すごいな!」


 こっち方面でも明は鈍感か。いや、気づいてないならそっちのほうがいいけど、穂乃果は誤魔化せないだろうなあ。


「むしろ本人なんじゃないの」


 ほらね。


「……ええっ!?」


 またもやスマホの画面とフィアを交互に比べる明。


「いやだって……、これゲームだよ……?」


 しどろもどろになりながらも反論しているが、あまり声に力はない。


「ちょっと明、私たちさっきまで何を体験したと思ってるの?」


 逆に穂乃果は確信しているようだ。今まで微妙な誤魔化し方をしてきた反動のせいなのだろうか。

 もうここまで来たら誤魔化すのは無理だろうなあ。むしろ変に疑惑を持たれずに信じてもらえそうだ。

 ……まさかさっきまでの舞台になった小説も知ってるとか言うんじゃないだろうな。


「えー? ……いや、そう言われればそうだけど……」


「あーもう、めんどくせえ」


 まだうじうじしてる明に机の上にあった『アンデッドになるために召喚されたわけではありません!』の一巻を手渡してやる。


「……なにコレ?」


 唐突に話題を変えられたとでも思ったのだろうか。訝し気な表情の明だがそんなことは気にせずに小説を押し付ける。


「読めばわかる」


 そう、プロローグだけでも読めばわかるはずだ。国王や団長、神官長の名前が出てくるし、それだけでも気づく……はずだよね?

 今までの明のカンの悪さを思い出して若干眉にしわを寄せるが読んでもらわないと始まらない。

 明も俺と似たような表情になっているが、きっちりと小説は受け取っている。


「読んだほうが早いですよ」


 そんな明にフィアもフォローを入れてくれている。まぁしばらくスマホ充電するまでは家にいるだろうし、それだけあれば気づくところまでは読めるだろう。

 穂乃果も明の傍に来て一緒に見る気満々のようだ。深く読み込む必要もないし、流し読みでも大丈夫だろう。


 ……にしても、せっかく帰ってきたときはこう、感動に打ち震えるもんじゃないんだろうか。……って、あの雰囲気じゃ無理か。押し倒してたし。

 パソコンの前に座るととりあえず電源を入れる。とりあえず帰ったらパソコンを起動するってのが癖になったのはいつからか。自作に手を出したくらいからかもしれない。

 パソコンを起動してから『さて、今日は何をしようか』と考え出すあたり、かなりの末期症状じゃないかと自分でも思うことがある。……引きこもりではないんだけどね。


 立ち上がったパソコンでブラウザを開き、検索窓にこの間と同じキーワードを入れてニュースサイトを巡回する。

 うむ、特に進展はなさそうだな。当たり前か。相変わらず明と穂乃果は行方不明のままだ。


「……あれっ?」


「ちょっと……、こんな偶然って……」


 お、そろそろ核心のシーンにきたか? さすがに明も気づいたかな?


「主人公は二人だけで名前も違うけど、他の人は……」


「お二人の考えてる通りですよ。……読めばわかったでしょ?」


 フィアが得意そうにドヤ顔で胸を張っている。……すごいのはフィアじゃなくて魔法書だからね?

 しっかしなんで主人公がこの二人になったんだろうなあ。


「え……、もしかして、この物語の中に入り込んでたっていうことなの?」


「どうやらそうらしいぞ」


 パソコンから目を離して振り返り、肯定してやる。

 するとそこに便乗するようにフィアが話を続ける。


「だからこそ逆に私も、ブレイブリス王国からこちらに来ることができたんですよ」


「……え、じゃあ、誠さんはこのゲームの中にも入れるんですか!?」


 うおおおぉぃ! フィアの世界をゲームとか言うな! なんとなく伏せてた『こちらの世界の人間に作られた世界』ということがバレるじゃないか!


「あ、ゲームだったんですね」


 ぶふぉっ! 言ってるそばからバレたし! しかもあっさりしてるな!


「いや、その……、あれだ。……フィアの世界だってちゃんと歴史とかがあるわけだし……」


 しどろもどろによくわからない言い訳をしてみるが、フィアはよくわかってないようで首をかしげている。


「どうしたんですか、マコト? 私の世界にも歴史はありますし、私にもちゃんと子どものころの記憶とかもありますよ?」


 あぁ、そうですか。いや別に何とも思ってないんならいいんだけどね。無駄な心配だったのかな。


「いや、なんでもない。

 ――ああ、それよりもだ。お前ら二人、ある程度充電できたら早く帰れ」


 そう言ってパソコンの画面に映る明と穂乃果の行方不明ニュースを見せてやるのだった。

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