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029 一時帰宅

「うおおお、懐かしの我が家だーーーー!」


 翌日、朝食を食べ終えた俺たちは二人で元の世界の懐かしの自室へと帰還していた。

 帰りたくないというフィアだったが、「また連れて行ってあげるから」というとあっさりと納得してくれていた。

 誘拐犯の疑いが晴れてフィアが城に戻れば、正体不明な俺なんぞと一緒にいられるはずなどないだろう。そう思って激しく抵抗されるかと思っていたがちょっと拍子抜けだ。


 しかし万が一また俺と行動を共にすることでもあれば、あの邪教徒に狙われている世界にフィアを連れて行くのは吝かではない。

 むしろ向こうの世界でフィアがいないことの言い訳やらが回避できるのだ。

 一人で戻った理由をしつこく聞いてくるようなら城から抜け出すなりして、勝手に問題解決してもいいかもしれないが。

 さすがにこの世界を放置というのは、罪悪感に負けそうになりそうなのでやらない。


「やっぱりマコトの世界が一番面白いですね!」


 戻ってきたというのにやけにテンションが高いフィア。あっさりと帰ってきたのはこれが理由か?

 ベッドの枕元にあったLEDライトを点けたり消したりして遊んでいるようだ。

 やはり魔法とは異なる科学というものに興味津々なのだろう。もしかすると教科書みたいな教本でも与えておけば大人しくなるかもしれないな。


 さて、元の世界に戻ってはきたが、すぐに魔法書が使えるようになるわけではない。

 前回モンスターズワールドの世界から元の世界に戻り、邪教徒の世界――正式な書籍名があるが長くて面倒なのでもうこれでいいや――に行く前は、フィアに長いことこちらの世界の物についてしゃべっていた記憶がある。

 おそらく三、四時間ほどではないかと思うが、少なくともその時間があれば、魔法書が再使用できるはずだ。

 明日の朝食までは自由時間なので、十分に帰れる計算のはずである。

 まあそれまで何かで時間を潰すか……。


「そうだ、フィア、何か飲むか?」


 何となしに聞いてみたが、自室の扉のドアノブに手を掛けた状態だったのがまずかったのだろうか。


「……はい!」


 こちらを振り返ったフィアが弄んでいたLEDライトを元の場所に置くと、人の動きとは思えない素早さで俺の横にやってきた。


「何があるんですか?」


 キラキラした目でこちらを覗き込んでくるフィア。なんとなしに彼女の背景までもが輝いているような錯覚に陥る。

 ああ、そういえばフィアからすると異世界の飲み物になるのか。それにこの部屋からもまだ出たことなかったしな。そりゃ気になるか。


「んー、お茶とかジュースとかかな。あ、炭酸もあるよ?」


「……たんさん?」


 不思議そうに首をかしげるフィア。さすがに炭酸飲料なんて異世界にはないか。地球上でも自然に湧き出る炭酸水なんてものもあるらしいが、異世界にはなかったのかな。


「まあ飲んでみればわかるさ」


 未知の飲み物を飲んだ後の反応にちょっと期待してしまい、頬が緩むのを感じる。

 そんな顔を見られないようにと部屋の扉を開けて廊下へと早足に飛び出した。


 日が昇っているとはいえ薄暗い廊下ではあるが、周りが見えないということもない。電気を点けずに廊下を歩いている後ろを黙ってフィアはついてきているようだ。

 階段に差し掛かったところで振り返ってみるが、キョロキョロと興味深そうにあたりを見回すがこちらに質問を投げかけてくることはしない。

 そんなことで立ち止まるよりも炭酸飲料のほうが気になるのかもしれない。

 そして一階にあるリビングに入ったところで後ろから奇声が聞こえた。


「ふわあああああ!! 大きいです!!」


 振り返ってみるとフィアがテレビを凝視している。そういえば俺の部屋ってテレビ置いてなかったな。パソコンにチューナーがついてるから見れないことはないけど。

 リビングに置いてあるテレビは50インチのテレビだ。部屋にあるパソコンのモニタとは比べ物にならないサイズだ。

 しかしただのサイズ違いでこれだけ驚くとか、キッチンを見たら卒倒するんじゃなかろうか。ああ、テレビを点けたら後ろに人がいないか確認しに行きそうだな。


「フィア、こっちだぞ」


 フィアの行動を苦笑しながら想像しつつ、本来の目的である飲み物のある方向へと誘導する。

 冷蔵庫を開けると適当な炭酸飲料のジュースを取り出す。


「あ……、え……、マコト、その大きい箱はなんですか……?」


 こちらを振り返ったフィアがキラキラした目で冷蔵庫を見つめている。


「これは冷蔵庫と言って、物を冷やす道具だな」


「……これも『でんき』という力で動く道具ですか?」


 前回部屋の照明について長々と説明させられたことを覚えていたようである。理解が早くてよろしい。


「ああそうだ。氷も作れるし、便利だぞ」


 それだけ言うと、食器棚からガラス製のコップを二つ取り出してジュースを注ぐ。そしてシュワシュワと音を立てるコップをフィアへと差し出した。


「ほれ、飲んでみろ」


「――えっ」


 シュワシュワと音を立てるコップを受け取ったはいいが、毒でも見るかのような強張った表情になっている。

 まあ確かに怪しい飲み物だよな。まあ俺も飲んでるんだから安心してくれ。

 そんな俺とコップを交互に見つめていたフィアだったが、ようやく決意したのかコップに口をつけた。

あるえー?

思ってた展開にたどり着けない。なぜだ。

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