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027 物語1 -本物のチート-

 開き直ってあんなことを言っちまったけど、実際にこの世界の魔法はまだ使ったことがないんだよね。

 まあ基本的に今まで使ってきた魔法が無詠唱になるだけ、って言ってしまえば身も蓋もないけど。

 だからと言ってできないとは思っていない。

 よし、……まずは自分で使える魔法から行くか。

 使う魔法の流れをイメージしてから気合を入れる。


(フレアアロー!)


 心の中で詠唱すると、かざした手のひらから炎の矢が二本、ゆっくりとした速度で飛び出していく。


(ウインドカッター!)


 そして飛び出した炎の矢を横から掻き切るようにイメージしてウインドカッターを発動させると、炎の矢が真ん中から二つに分かれたかと思うと姿を消した。


(ウォーターボール!)




 次々と初級のスキルを発動させていくとだんだん面白くなってきた。調子に乗って後から覚えた中級らしいスキルも混ぜて使っていく。

 やっぱり無詠唱はいいね。言葉を発するとそのスキルしか発動させることができないが、無詠唱でイメージするだけでいいとなると同時にいろいろなことができるようだ。

 サイクロンに炎を上乗せしてファイアストームといった魔法や、ファイアボールの爆発に石礫を混ぜてもいい。電撃を纏わせた氷の槍なんてのも威力がありそうだ。

 もちろん氷なんぞ電気を通すものではないが、ゲームによくある魔法が引き起こす現象が理屈っぽくないからと言って、そういう魔法がゲームに存在しないわけでもないのだ。

 まあそんな危ないものはここではやらないが、目の前では威力はないが派手な魔法が炸裂しまくっていた。


 ふむ、こんなところか。そろそろ終わりにするかな。

 最後の魔法にはダイヤモンドダストを選択する。吹雪かせないでキラキラする現象だけをイメージして発動させる。


「……キレイ」


 ぽつりと聞こえてきた声は王女様のようだ。他の三人からの反応はない。

 やりすぎた自覚はあるが、もうこの世界では自重しないことに決めた。邪教徒とやらの問題を片づけた後はもう二度と来ることのない世界だ。それに関係者は王女様のみであるし、その王女様も元のモンスターズワールドの世界に返せばもう関わることもないだろう。

 あぁ、誘拐犯になる前に早く戻らないと……。もう手遅れかもしれないけど。


「……こんなところかな」


 ようやく振り返ると、言葉のなかった三人はポカーンと口を開けているだけだった。

 王女様と言えば両手を胸元で握り合わせうっとりとした表情だ。


「……ちょっと、……チートすぎるでしょ……」


 掠れながらもようやく出た穂乃果のセリフに、他の二人も我に返る。


「……すげぇよ、誠さん」


「まさか、ここまでとは……。魔法で氷を扱うなんて、高難易度をあっさりと……。それに異なる属性の魔法が同時に発動していたようにも見えましたし……」


 セルフィナさんも我に返ったかと思ったが、今度は一人で何かブツブツ言っている。

 氷って高難易度なのか? まぁスキルに『氷魔法』というのはなさそうだったけど。


 世の中のファンタジー小説なんかじゃ、温度を操れる火魔法で水温を下げて氷を生み出すとかいう設定もあるが、本当のところはどうなんだろうね?

 例え温度を上げられても、酸素と燃えるものがなければ炎は出ないんだし。まぁ、魔力がその代わりになると言われればそれまでだけど。

 俺としては、気体、液体、固体をそれぞれ風魔法、水魔法、土魔法で操れると言われたほうがまだ納得できたりする。つまり、氷は土魔法ってね。

 あ、そうすると火魔法で温度を操って冷やして、空気中から水分を取り出すとかか? いやいや、もう魔力で直接生み出すとかのほうが簡単でいいんじゃね?


 適当に考えすぎて結局安直な理論に俺の中で落ち着いてしまった。

 まああれだ。素人が考える魔法理論なんてのは置いておこう。そういうのはセルフィナさんあたりに頑張ってもらえばいい。

 イメージが大事だと言われてるのに理論どうのこうのというのもおかしい気もするが、それはきっと気のせいだ。


「で、どうでしたか? 俺の魔法は」


 別の方向へ一人で突っ走っていそうなセルフィナさんを引き戻すべく声をかける。


「――はっ! ……ああ、ええと、はい。素晴らしかったです。問題ないでしょう」


「そうですか。それはよかった」


「しかしここまでのモノを見せられると……、はっきり申し上げると私が教えられることはない気がしますね……。むしろ私が教えてもらいたいくらいです」


「……んん?」


 最後のセリフがぼそぼそと聞こえなかったので思わず変な疑問形のセリフが出てしまう。


「ああ、いえ、ここまで素晴らしい魔法を操るとなると、しばらくの間はアキラさんとホノカさんに教えていこうかと思いまして」


「そうですね。俺はそれで構いませんよ」


「フィアさんもそれで構いませんか?」


 未だにうっとりと俺を見つめる王女様にセルフィナさんが声をかける。


「……え? あ、はい。大丈夫です」


 ちゃんと聞いていたのかは分からないが、問題ないらしい。

 セルフィナさんからまたこちらに視線を向けると、若干頬を染めつつもセリフを続ける。


「……では私はマコト様に魔法を教えてもらうことにしますね」

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