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023 物語1 -ストーリー-

 さて、ひとまず目前の危機は去ったがこれからどうしようか。

 冒頭から死んでアンデッドになるはずだった主人公がピンピンしているのだ。もう今後は小説のストーリーは当てにならない。

 とは言え、本来ならどうなるんだったかな。当てにしてはいけないが、参考にはしたいものだ。


 えーっと確か主人公たちが殺された直後にアンデッドになって復活するけども、さすが勇者として召喚されただけはあるのか、敵に操られることなく周りにもバレることなく話が進むんだっけか。

 操られちゃったりしたらプロローグからのバッドエンドだしね。そこはご都合主義といったところか。

 ふむ。次に何か敵勢力からアクションがあるまでは多少は参考にできるのかも……? 知らないところでじわじわと……、という可能性もあるが。


 差し当たっては勇者としての訓練とかがあるんだったか。最初は屋内、次に野外に出てダンジョンとかにも向かうんだっけか?

 それからええと……。……あれ?


 いくつかエピソードはあったが、敵勢力からのアクションがないままにその先のストーリーの記憶がないことに愕然とする。


「……そういや一巻しか持ってねぇ!」


 思わず頭を抱えてその場にうずくまる。


「……どうしたんですか?」


 突然の行動に声を上げたのは隣に立っている王女様だ。さきほどまで周囲を物珍しそうに見回していた二人の高校生もこちらに訝し気な視線を送っている。


 朝食を終えた後、今後の具体的な話と共に魔法や武術の訓練をするために訓練施設に四人集められたのだったが、肝心の王国側の人間はまだここには来ていない。

 また昨夜襲撃があったことは、撃退した俺以外の三人にはまだ伝えていない。だからかどうかわからないが、今のところストーリー通りではある。本来であればアンデッド化してからだが。

 一番安全だと思われる王城で、召喚初日に襲われたとわかったら不安にもなるだろう。危機感を覚えて今後の訓練に気合を入れて取り組んでくれればいいが、必ずしもそうなるとは限らないし。まあ念のためだ。


「いや、なんでもない……」


「……そうは見えませんけど。なにやらかしたんですか?」


 (アキラ)が疑惑の視線をこちらに寄越しながら確信をもって問いかけてくる。

 襲撃についてはすぐに判明することだろうから、ここで言っても問題ない気はするが、先ほどの懸念もあることだし王国側から言われるまでは黙っておこう。


「何もやらかしてないぞ。……ただ今後について悩んでるだけだ」


 嘘は言ってないから大丈夫。


「ふーん……」


 穂乃果は半信半疑だ。こいつはなぜか王女様の婚約者発言があってから俺へ向けてくる視線が厳しいものになっている気がする。

 もの言いたげな雰囲気を醸し出していたが、この訓練施設へと近づいてくる足音によって意識が逸れたようでこれ以上追及されることはなくなった。


 ほっと溜息をつくと足音の聞こえる廊下側へ視線を向ける。

 しばらくすると廊下へとつながっている通路の奥から二人の人物が姿を現した。


「やあ、待たせたね」


 一人は昨日も見た騎士団長のセシルさんだ。もう一人は見たことがないが、ゆったりとした全身を覆うグレーのローブを着こんでいる女性だ。

 髪は緑色のストレートロング、瞳の色は透き通った碧色をしている。そして特徴的なのがその長い耳だろうか。

 こ、これはもしや……!


「……エルフ?」


 俺と同じことを思ったらしいぽつりと聞こえた声はどうやら穂乃果のようだった。

 見開かれた目が爛々と輝いており鼻息も荒くなっている。

 そんな隣にいる残念娘を見て、明はどう反応したらいいのかローブ姿のエルフと穂乃果に視線がいったりきたりだ。


「私は初めまして、かな。宮廷魔術師団員のセルフィナ・アルマンドよ。よろしくね」


 目の前で立ち止まると自己紹介をされたのでこちらも同様に自己紹介を返す。


「初めまして。マコトです」


「フィアと申します」


「明です」


「…………あ、穂乃果です」


 無言だった穂乃果は、明に肘でつつかれてからようやく自己紹介を返していた。

 にしても宮廷魔術師団ね。やっぱり魔法を使う集団もあったようだ。最初に召喚されたときにはいなかったようだが。


「さて、今日から魔法の訓練を始めてもうらおうと思っているんだが、その前に謝罪させていただきたい」


 あー、昨日の襲撃についてかな?


「……は?」


「えっ?」


 明と王女様は意味が分からないとばかりに驚いた顔だが、穂乃果は案の定というか、視線がエルフ……かどうかは確定していないが、宮廷魔術師団員の女性に行ったきり聞こえていないようだ。


「まさか王城内であのようなことが起こるとはな……。本当に申し訳ない。

 本日からは見回り兵の数も増やすので安心して欲しい」


「あのようなこと……、ですか?」


 具体的な話が出ずに困惑する王女様が、騎士団長のセシルさんに疑問の声を上げる。


「むっ? もしや、マコト殿、何も話されていないのですかな?」


 若干やっちまった感を漂わせながらこちらに話を振ってくるセシルさん。ちょっと巻き込むのやめてもらえませんかね。って当事者の俺が言うのもなんだけど。


「ええ、召喚初日で不安なところにさらに不安を煽るようなことを知らせる必要もないかと思いまして」


「そうですか。これは申し訳ないことをしましたな。しかしこうなってしまっては黙っているわけにもいきますまい」


 さすがの穂乃果も異常事態に気が付いたのか、王女様と明と同じく視線が俺の方にきていた。

魔法の訓練開始直前まで行くつもりだったのに無理だった。

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