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119 買い物再び

「ということで、買い物に行くわよ!」


 翌朝、フィアがなぜかとても張り切っている。


「買い物?」


 俺が訝しんで確認するが、フィアは当然と言った雰囲気で胸を張っている。

 そしてフィアの隣にいる瑞樹からは、何かを諦めたかのようなため息が出るのみである。


「そうよ。だって今着てるミズキちゃんの服だって私のだし」


「ああ……。なるほど」


 そういえばそうだった。

 現代日本に戻ってきたからと言って、瑞樹は実家に戻れないんじゃないかと考えてはいたが、だとしたらどこに住むんだという話だ。

 実家からの荷物なんて持ってこれないだろうし、持ってこれたとしても性別も体格が変わっているのだ。服は全滅ではなかろうか。

 いや、まだ実家に戻るのかどうか本人に確認したわけではないが、今すぐ行動できることでもないので少なくともそれまでの面倒は見なければならない。

 というか実家に戻れずに日本で暮らす決断をした場合どうすんだ? 未成年だし、面倒見てやらないといけないか? アパート借りて放置ってのも……、って実質的に瑞樹の立場はフィアとそう変わらないよな……。

 種族がすでに人間じゃないし、世に放り出すとかダメだ。


 なんとなく予感はしていたが、よくよく考えるとそう選択肢は多くなかった。

 ……まぁいいか。お金はあるし。なんとかなるだろ。


「んじゃ、今日は買い物行くか」


「そうそう。足りないものは服だけじゃないからね」


 確かにそうだ。現在の我が家には俺とフィアの物しかないのだ。妹のさくらの物も使いまわせるものがあればいいが、サイズが合わないだろう。


「というわけで、運転よろしく!」




 朝食を食べてすぐに出発ということになったが、季節は梅雨である。

 だからして、当然とでもいうかのように外は雨が降っていた。

 まぁ車なので関係ないのだが。


「すごーい」


 助手席に座るフィアはワイパーにくぎ付けだ。

 たまに往復するワイパーと一緒にその首も左右へと揺れ動いている。


「ホントにフィアさんって、異世界人なんだね……」


 慣れてきたとはいえ、現代科学を珍しがる様子というのはそうそうなくなるものではない。

 後ろの座席から、まさに確信を得たといった雰囲気の言葉が聞こえてきた。


 その様子はいつものモールに着いてからも変わらないと思っていたが、今日はそうでもなかった。

 金髪美少女と銀髪美少女の組み合わせは破壊力抜群である。周囲の視線も集めまくっている。そして俺を睨みつける視線も多い。


 いつもであれば俺にくっついてあちこち引っ張りまわされたものだが、今日のフィアは主に瑞樹にくっついている。

 瑞樹の買い物に来たので当たり前と言えば当たり前だが、ちょっと寂しさを感じるのであった。


「じゃあ次はここね」


「えっ!?」


 そう言ってまたもや瑞樹を引っ張って店の中へ入って行こうとする。

 女性物の服を扱う店に入るときにも少し抵抗が見られたが、今回はその時の比ではないほどに顔が強張っている。

 ギギギと音のしそうな感じで顔を俺に向けると、助けを求めるような表情になるが、残念だが俺にはどうすることもできない。


「いやだーーーーーー!!」


 悲痛な表情で首を横に振ってやると、そのまま引きずられるようにして瑞樹は店の中へと消えた。

 そう――、下着を扱うお店へと。


 気持ちはわかる。

 ちょっと前まで男子高校生だったのだ。こういう店には入りたくないだろう。

 だが、自分の容姿を確認してほしい。

 違和感のない服装というのは、どう考えても女性物だ。たとえ見えないからと言ってもフィアがそれで納得するわけがない。


 おっと、直接被害を被っていないとはいえ、俺も店の前で待つという行動は遠慮したい。

 通路のソファにでも座って休憩するか。


「ふう……」


 女の買い物は長いというが、今日改めて実感しているところだ。

 今までは、珍しいモノがあれば片っ端から引き寄せられるフィアだったので、「買い物」に時間をかけている感覚はなかった。

 だが今回は真面目に買い物をしている。そして改めて長いということがわかったのだ。それは異世界人でもやはり変わらないらしい。


「お待たせ」


 などとくだらないことを考えていると、瑞樹の買い物が終わったようだ。

 フィアと、まだ若干頬を染めて恥ずかしそうにしている瑞樹が戻ってきた。


「おう、そろそろ昼飯にするか」


「そうだね。お腹すいたかも」


「……そういえば腹減った」


 若干昼時を過ぎているが、むしろ空いていていいかもしれない。


「何か食いたいものあるか?」


「ハンバーグ!」


 フィアが即答する。相変わらずだった。


「じゃあおれもそれで」


 瑞樹はフィアの子どもっぽいところに苦笑気味だったが、特に異論はないようで。


「じゃああの店に行くか」


「やったー!」


 両手を上げて喜ぶフィアに、俺と瑞樹の頬が緩む。

 そして以前にもフィアと二人で行った、ハンバーグ専門店へと向かうのだった。

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