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105 転生者は異世界で何を見る? -森-

本日6話目

 森にたどり着いた俺たちは、さっそく薬草探しを始めていた。ヨモギっぽい植物だが、森の外周には生えていないのだろうか。

 瑞樹はひとまず落ち着いて薬草探しを続行することに決めたようだ。今すぐにでも日本へ帰るという選択肢は取らなかった。


「だって、魔法とか使ってみたいじゃん?」


 いつでも帰れるなら尚更だろう。俺も一週間は付き合うと宣言したし、責任は取らないとね。


「この辺には見当たらないね」


 ヨモギっぽい植物は見当たらないが、たまに【鑑定】を使ってみるも、雑草という判定しか出てこない。

 どうやら薬草以外の売れそうな植物すら生えていないようだった。


「もうちょっと奥へ行ってみるか」


 俺たちは道なき道を分け入るように森の奥へと入って行く。森と言っても、山ではないので奥へ進むのにもそこまでの苦労はない。足元の草木は邪魔だが。

 先頭になって地面を踏み固めているが、めんどくさいぞこれは。なんとかならんもんか……。魔法でなんとかできるかな……?


「……マコト? どうしたんですか?」


 急に立ち止まった俺に、後ろからフィアの声が飛んできた。その後ろには瑞樹が付いてきている。

 フィアの言葉をスルーして足元に意識を集中させると、地面が均されて平坦になり、植物が道を開けてくれるイメージで魔力を流し込む。


「うおおっ、マジか……。魔法って何でもアリだな……」


 イメージ通りの現象が目の前で起こったことにより瑞樹が興奮気味にはしゃいでいる。


「やっぱりマコトはすごいです」


 フィアも誇らしげだ。

 しかしこれで歩きやすくなったな。でも間違って薬草もダメにしてしまわないように、ちょっと先を【鑑定】しながら行くか。


「あっ!」


 しばらく進んだところで後ろを歩いていたフィアから声が上がった。


「おっ、あった!」


 続いて瑞樹からも声があがる。


「薬草見つかった?」


 振り向いて二人をみると、左側後方を見つめている。同じくそちらへと視線を向けると、五メートルほど先に確かにヨモギっぽい植物が生えていた。


 ――――――――――――――――――

 【薬草】

 切り傷、擦り傷に効果のある薬草。

 飲むと治癒力を促進し、患部に塗ることでも効果がある。

 またポーションの原料にもなっている植物。

 ――――――――――――――――――


「お、薬草で合ってるみたいだな」


 確か根っこは残して刈り取るようにデクストが言ってたな。根っこは根っこで需要があるから刈り取る人間がいるらしいが、薬草が採れなくなるのも困るから根っこは残してくれとのことだった。


「ほい、これ使ってくれ」


 俺は二人にアイテムボックスから取り出してたナイフと、薬草を収納する布袋を渡す。


「ありがとう。……あ、あっちにもある」


 改めて見渡すとちらほらと飛び飛びではあるが薬草が生えているのが見える。群生地……なのかな?

 でもこんなにすぐ見つかるなら薬草不足になることもない気がするけど。


「あんまり遠くに行くなよー」


「「はーい」」


 フィアと瑞樹に注意しながらも俺も薬草をナイフで刈り取って袋へと詰めていく。

 こんな簡単でいいのかね。


「……ん?」


 その時、俺の【気配察知】に何かが引っかかった。数は二つ。百メートルほど離れたところで動かずに……、いや微妙に動いてるな。

 なんだろう。一度見たことあるヤツなら気配だけでわかることもあるが、この世界で感じる初めての気配だ。森に出るモンスターかもしれない。


「気を付けろ! 近くに何かいるぞ!」


 二人にギリギリ聞こえる声で注意を促す。フィアと瑞樹の向こう側から気配がするので、危険がないように二人の前へ出ようとゆっくりと近づいていく。


「えっ!? 何っ!?」


「しっ!」


 あわててキョロキョロする瑞樹を窘めるように、フィアが静かにするよう指示を出す。

 森の中だけあって、百メートル先にいる気配の主の姿は見えない。


「ゆっくりこっちに――」


 慌てないように指示をする途中で、感じていた気配が動き出す。

 こちらに向かって速度を上げたのだ。


「やばい!」


 慌てて俺も駆け出して二人の前に出るのと、草むらから気配の主が飛び出すのは同時だった。


「ひゃあっ!!?」


 瑞樹が驚いてしりもちをつくが、フィアはいつでも動けるように身構えている。


 俺との距離は十メートルほどだろうか。飛び出した勢いのまま俺を確認すると、さらに速度を上げてソレが突っ込んできた。

 デクストの言っていたワイルドボアだろうか。イノシシのような見た目の全長三メートルはある大きい個体と、二メートル程度の小さい個体の二匹だ。

 小さいと言っても大きいほうと比較しての話である。二メートルのイノシシですら、日本の常識では巨体だろう。


 俺はナイフと袋をアイテムボックスに仕舞うと、両手の拳を構えて魔力で身体強化を施し大きいほうのワイルドボアへと向き直る。


「フィアは小さいほうを頼む!」


「はい!」


 フィアに小さいほうを頼むと、元気な声が返ってきた。

そろそろ晩御飯。

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