更新遅れて申し訳ありません。
今回は亮真が召喚された異世界の名前が出てまいります。
ちょっと名前の付け方がややこしい事になっていますがその辺の理由は本編を読んでいただければと思います。
異世界召喚63日目【召喚されし者の絶望】その2:
「何だと……?」
亮真の問いにアナマリアは眉ひとつ動かさずに言ってのけた。
「永遠に時空の狭間を漂うと言ったのよ……つまり貴方は死ぬ事になる」
「ふざけるな!」
この異世界に召喚されてからずっと亮真の中で押し込められていた何かがはじけ飛んだ。
ダン!
亮真の拳が木製の机にめり込み無数の亀裂が机の幕板部分に走る。
かなり高価そうな机だが今の亮真にとっては関係ない。
「亮真様!」
「お手が!」
亮真の後に黙って控えていたローラ達姉妹が悲鳴を上げた。
手加減をせずに机へ叩きつけられた亮真の拳から血が滴る。
「亮真様!お手を」
「うるせえぇぇ!邪魔だ!」
治療の為に駆け寄る姉妹を振り払い、血の滴りを無視して亮真はアナマリアを睨みつける。
「もう一度言ってみろ」
その瞳には暗く冷たい憎悪が宿り、その声には明確な殺意が含まれていた。
「脅されても結論は変わらないわ。あなたは元の世界。つまり裏大地へ帰る事は出来ないわ」
「裏大地だと?」
「そう。あなたが元居た世界。それを私たちは裏大地と呼ぶの。私たちが住む世界、大地の裏側ってことね」
アナマリアの説明に亮真の心が冷静さを取り戻していく。
どれほど激昂しようと結論は変わらないのだ。
なら今は話を聞く事が最優先だ。
(だが……この世界が大地?……俺が住んでいたのが裏大地か……まぁ当然か。この世界の人間がつけた名前だもんな……)
これは現実世界でもよくある話だ。
どの国にも太陽は平等にその光を与えるのに日の本の国などとつけたり、地球は丸いのに世界の真ん中という意味で中華と国の名前を付けるのと同じ。
名前を付けるときに裏表を表すなら、自分の住む世界を表とするのは人間の心理として当然だ。
アナマリアは話を続ける。
「尤も物理的に裏表があるわけじゃない。人間が住む異世界が貴方達と私達の住む2つしか見つからなかったから便宜的につけられただけの話」
「どっちが表でも良い!俺が帰れないっていう理由を言え!」
アナマリアは肩をすくめて言った。
「簡単な話よ。裏大地から大地に人間を召喚するには、大地に存在する神へ生気を捧げて召喚を許可してもらわなければいけないの。それは大地には結界が張られていて、外からの侵入を阻んでいるからなのだけれども、その結界は裏大地側にも張られているのよ」
「ちょっとまて?結界が張られているのは良いとしてだ。現実に俺はこの世界に召喚されたんだろ?俺をこの世界に入れた神へ祈れば済む話じゃないのかよ?」
「いいえ。結界内へ入れるかどうかはそれぞれの世界に存在する神が許可するかどうかなの。つまり大地から出た後に裏大地へ入るためには、裏大地の結界を張っている神へ許可をもらわなければならないって訳」
亮真の頭がアナマリアの言葉をわかりやすく変換していく。
(出るのは自由?でも入るのは許可制……これってオートロックのホテルで部屋から閉め出されるって状況と同じじゃないか?)
ホテルなどでよくあるオートロックシステム。
中からは簡単に開くが扉が閉まると自動で鍵が掛かり、外からは入るには鍵が必要というあれだ。
二つの世界をホテルの部屋に、時空の狭間をホテルの通路に置き換えるとイメージがしやすいかもしれない。
「つまり大地の結界を超えるだけなら可能だけど、裏大地側の結界を超える事が出来ない。結果時空の狭間?に漂って死ぬことになるってことか……」
「そういうことですね。」
「だがそれなら裏大地の結界を張っている神の名前が分かれば!?」
亮真はそうアナマリアへ反論しつつも返される答えを頭の片隅で予想していた。
一体いつから大地の人間が地球人を召喚していたかはわからないが、10年や20年なんて年月ではない事だけは確実だ。
つまり万単位の人間がこの大地へと無理やり召喚されたということだ。
そのうちの何人かは亮真と同じように逃げ出し元の世界に戻ろうとしたのではないか?
少なくとも、亮真が地球へ戻ろうとする地球人の第1号ではない事だけは確実だろう。
ドサッ!
アナマリアはヒビの入った机の上に色あせた書籍を放り出した。
「これは今まであなたがた異世界人が元の世界に戻ろうとした記録です。」
広辞苑に匹敵するほどの分厚さを誇る書籍を開きアナマリアは続けた。
「送還術式を組むことはそれほど難しくありません。召喚術式を少しアレンジするだけで出来ますから。ですが祈りを捧げる神の名が分からなければどうしようもないのです。」
アナマリアが書籍のあるページを開き、亮真へ突き出した。
「ここに貴方がたの世界の神の名が記されています。つまりここにのっている神の名を組んだ術式はすでに使用され効果がない事が確認されているという事です。」
「つまり……俺がここに記載の無い神の名前を知っていない限り……」
「元の世界に帰還する事は不可能だという事です」
非情な宣告が亮真の胸に突き刺さった。
「月読、スサノウ、天照……エホバ、ヤハゥエ……」
亮真はミレイシュの宿屋に戻ると、サーラ達姉妹を締め出しアナマリアより借り受けた書籍を必死で調べていた。
アナマリアの家から戻る亮真の顔には悲壮感が漂い、サーラ達姉妹は言葉をかける事すら出来なかった。
亮真が籠る部屋の前の通路には、サーラ達姉妹が立っていた。
二人の視線は亮真の部屋のドアに注がれている。
「もう5時間よ……」
サーラの言葉にローラが頷く。
時間は既に深夜に差し掛かっている。
「亮真様……」
姉妹には亮真の気持ちが痛いほど良くわかっていた。
自分達が亮真の立場ならどうだろうかと想像するだけで震えが来る。
だが姉妹達に亮真を救うことは出来ない。
彼女達に出来る事はただ部屋の前で亮真の身を案じるのみだった。
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