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ようやく前作に追いつきました。
後は亮真に国境を越えてもらうだけ・・・・
異世界召喚編
第1章第20話
異世界召喚6日目【拘束】:

ザッザッザッ

草木を踏み分ける音が盛りに響く。
亮真がアルーの町から北上し森に入って1日半が過ぎようとしていた。
彼の周りにローラ達姉妹の姿は無い。
アルーの町で野営の準備を済ませると、亮真はただ一人森の中に分け入った。

森は闇が支配していた。
森は星の瞬きすら木々で遮られ火の光が無ければまったく何も見ることが出来ない。

「とりあえず何事もなしか……」

大木の根元で火に当たりながら亮真は呟いた。
たかが2日程一緒に居ただけの姉妹の顔がやけに懐かしく思える。
異世界にいきなり放り出されれば少しばかり感傷に浸ったとしても誰も責めはしないだろう。
町で購入した干し肉を口で噛み千切りながら周囲を窺う。
たった一日半ながら亮真は街道を逸れて移動することの恐ろしさを十分に思い知らされた。
勿論亮真の手に余るほどの強敵は居ない。
街道を逸れたとはいえ、それ程大回りをしているわけではないからだ。
だがその数には圧倒される。
1匹倒せば倒した怪物モンスターの血に誘われて別の怪物モンスターが来るという悪循環に陥りやすいのだ。
先日野犬ワイルドドックらを狩った時には意識しなかったが、疲れたら戦いを切り上げて安全地帯である街道に出られるのと、神経の休まる暇もないくらい連続で襲い掛かってくる怪物モンスターを狩るのではおのずと違いが出たのだった。


(来たか?)

火に当たり体を休める亮真の肌が微かな空気の流れを感じた。
暗闇の中から視線を感じる。
怪物モンスターの物ではない。
もっと陰に篭った粘つくような視線だ。
同じように森を通り抜ける冒険者達の視線とも違う。
もし火に当たりたいのならそのまま声を掛けてくるはずだ。
こんな視線を相手に悟られれば盗賊と誤解されて先制攻撃を受けかねない。
それに盗賊とも違う。
欲に脂ぎった感じを受けない。
値踏みをしているのは間違いないが金銭関係の値踏みではない。
亮真は剣の柄に手を掛けた。
たとえ誰であろうと攻撃してくるならば斬るつもりだ。
其のとき暗闇から男の声が響いた。

「驚かしたようですね。申し訳ありません。」

亮真の手に力が入る。

「まあまあ。そう警戒なさらずに。少々お時間を頂きたいのですが構いませんかね?」

癇に障る言い方だ。
言葉は丁寧だが有無を言わせぬ圧力がある。

「良いだろう。」

ガサ・・・ガサ・・・

亮真の言葉の後直ぐに木々を掻き分ける音が響く。
火を挟んで真向かいに立つ男の顔を見て、亮真の顔にわずかな動揺が浮かんだ。
七三分けに整えられた髪。
細長い卵形の顔。
身長は170程か。
オフィイス街に行けば腐るほどいそうな日本のサラリーマンといった風体の男だ。
もっとも鎧を着け剣を佩いている日本のサラリーマンは居ないが。

「おや?どうかされましたか?」

男が亮真の動揺を機敏に察して尋ねてくる。

「いや・・盗賊には見えないなと思ってね・・・」

亮真の言葉に男が笑みを浮かべる。

「いやいや。恐れ入りますね。此処に座っても?」

亮真の返事を聞かずにさっさと真向かいへ座る。

「許可した覚えがないんだけどね?」

亮真の言葉を聞いても男は悪びれない。
それどころか勝手に話し出す始末だ。

「まあまあ。2~3質問をさせて頂くだけですから。」

何を言っても無駄だと諦め亮真は先を促した。

「あなたは冒険者のようですが何でこんな森の中に居るんですかね?お仕事中ですか?」

男の問いに亮真は正直に答えた。

「アルーの町で国境が封鎖されたと聞いてさ。しかも何時解かれるかも不明って話なんで。森を抜けることにしたのさ。まあ腕にはそれなりに自信が有るし野営の準備もしているのでね。」

「ほう・・・そうですか。しかしあまり関心出来ませんねぇ?いくら自信があるとは言ってもお一人で森を突っ切るなど。よほどお急ぎの御用でもお持ちですか?例えば誰かに追われているとか?」

男の目が細まる。

「いや。ただ町で封鎖が解かれるのを待つより、少しでも経験を積む方がいいと思ってね。」

「成る程成る程。」

此処で亮真は逆に男へ尋ねた。

「それでそんなことを聞きたがるあんたは何者だい?」

「おお。申し遅れました。私は斉藤英明と申します。オルトメア帝国夢魔騎士団サキュバスナイツの副団長を務めております。」

(やっぱり追っ手だったか・・・だけど斉藤?外見を見れば日本人に見える。だけど……)

亮真は内心の疑問を押し隠し演技を続ける。
相手の出方が判らな今はただの冒険者を装ったほうが得策だ。

「其の副団長さんが何だってこんな森の中に居るんです?」

「いえね。実はある男を追っておりまして。この森に通って国外に逃亡すると思われるのですよ。」

「へえ?ある男ね。なにやったんです?」

亮真の問いに斉藤はいかにも残念という表情をして答えた。

「いやあ。申し訳ない。極秘なんですよね……」

これは亮真の予想通りの反応だ。亮真とてここで斎藤が正直に理由を話す訳が無いことを知っていた。
だがここで斎藤に尋ねなければ逆に不振がられる事も判っていたのだ。

「あぁ失礼。ところで、私に用って結局何なんです?まさか私を疑ってるのですか?」

すると斉藤はとんでもないと言った表情を作って言った。

「いやいや。相手の男の顔が判らないんですよ。」

「え?顔が判らないのに追いかけてるんですか?」

(ふう。やはり判ってなかったか……ま、当然だな。顔を見たやつは全員殺しておいたんだから。)

亮真は内心自分の判断を誇りに思った。

「まあ実際かなり大変でしてね……上役からは早く捕まえろと催促されていまして……まあそこであなたにお願いしたいことがあるのですよ。」

斎藤は丁寧に切り出した。

「お願いですか?」

「ええ。少しばかりお時間を頂いて確認したいのですよ。何。形式的なものです。身元の確認が出来れば直ぐに出発していただけますから。まあ探している相手のの顔が判らない以上しょうがないのですよ……体格の良い男性で森を通ろうと言う方達全員にご協力いただいているんですよね。申し訳ないのですが。」

口では申し訳ないと言い笑みを浮かべてはいるが、斉藤の目は笑っていない。

「もし……協力できないと言ったら?」

亮真の言葉に斉藤は右手を軽く上げた。

「其の時はしょうがないですね。無理にでもご協力いただきます。」

ヒュ・・・・カッ

森の中から矢が亮真の直ぐ脇に打ち込まれる。

「成る程ね。こうなる訳だ。」

地面に突き立つ矢に視線を向けながら亮真が言った。

「ええ。ご理解いただけたところで改めてお願いします。どうか私と一緒に来ていただけませんか?」

慇懃無礼とはこの事だ。
ノーと言えば森から矢が飛んでくるのに断れるヤツなど居るわけがない。

「しょうがないでしょうね……お付き合いしますよ。」

しぶしぶといった表情で亮真は答えた。

「いやあ。ご理解いただけて良かった良かった。では我々の野営地までご足労頂きますね。なぁに直ぐそこですよ。」

そういうと斉藤は手枷を取り出した。

「それは?」

亮真の問いに斉藤が悪びれずに言う。

「念の為に拘束させていただきます。なぁに形式ですよ。形式。上司にお会いいただいた後は外しますから。それまで我慢してくださいな。」

有無を言わせぬとはこの事だ。
亮真は両手を差し出す他無かった。


「殿下。拘束しました。」

斉藤の言葉にシャルディナは命令書を書く手を止めて目を向けた。

「拘束した?誰を?……異世界人を?」

「ええ。間違えなく異世界人。正確には地球の日本人ですね。」

亮真を連れて野営地へと戻った斉藤は、亮真をテントに残し見張りを割り振った後にシャルディナへ面会した。

「……なぜそいつが異世界人だと判ったの?顔も判らないのに。」

訝しげな表情で尋ねるシャルディナに斎藤が答える。

「私と同じ国の出身だからですよ。それにこっちの世界に来て間もない。匂いで判ります。」

斉藤の回答にシャルディナの顔が綻んだ。

「そう……貴方が言うのなら間違えないでしょうね。それで?どうするの?」

「陛下のご命令は拘束か殺すかだったと聞いていますが。」

斉藤の言葉にシャルディナが頷く。

「ええ。捕まえられなければ殺せと命令されているわ。」

「ということは捕まえた以上は帝都へ護送する必要が有りますな……」

斉藤の言葉にシャルディナが問いかけた。

「あら?何か問題でも?」

斎藤の表情が曇ったことを敏感に感じたからだ。

「ええ……私は護送せず此処で確実に始末したほうが良いと思います。」

幾分ためらいながらも斉藤ははっきりと言った。
皇帝の命令を無視するように進言したのだ。
其の重圧は想像を絶する。
斉藤の進言を聞きシャルディナの顔に戸惑いが浮かぶ。
彼女が夢魔騎士団サキュバスナイツの団長を就任してから5年。
その間、影から彼女を支えてきたのは斉藤だったからだ。
其の進言は適切で誤ったことなど無い。
その斉藤が言うのだ。
無下には出来ないが、皇帝の命令を無視することもまた彼女には出来なかった。

「理由を聞かせて……」

シャルディナの問いに斉藤の口が重々しく開いた。

「理由ですか……理由は私の勘です。」

今度はシャルディナの顔が曇る。
いくら信頼する副官の進言であっても勘で皇帝の命令を無視することは出来ない。

「勘ね……いくらなんでもそれじゃ無理よ。」

「申し訳ありません。ですが……そのう……実際にあいつと話したときにヤツは危険だと感じました。笑顔を浮かべて私を話していましたが腹の中では何を考えているのやら。それに何の抵抗もせずに拘束されたことも引っかかります。形式だけだといって手枷をさせた時にも過剰な抵抗はしませんでした。まるで本当に確認すれば自分が解放されると確信しているかのように……」

斉藤の話を聞きシャルディナの心がざわめく。

(確かに気になるわね……特に無抵抗だったというのが……ガイエスを殺した事といい逃げるために宮殿に火を付けた事といいかなり容赦の無い男のはず。逃げられないとしてもおとなしく捕まるとは思えない。)

「ねえ。本当にそいつが問題の異世界人で間違えないの?」

「異世界人であることは確実です。問題はガイエス様を殺したヤツかどうかですが、状況から判断してまず間違えは無いです。偶然まったく関係ない異世界人が召喚されてこの森を通るなど在り得ません。」

斉藤の言葉にシャルディナも頷く。
証拠はないが状況を考えればまず間違いないというところだろう。

「なら方法は一つね……」

「というと?」

シャルディナは椅子から立ち上がるとテントの入り口へと歩みだした。

「案内なさい。実際に話してみるしかないでしょう?こうなったら。」

















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