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異世界召喚編
第1章第16話
異世界召喚3日目【救出】その1:

亮真が異世界へ召喚され3日目を迎えた。
時刻は正午ごろ。
亮真はアルーへ向かう街道を歩いていた。
この日亮真は少し遅めの起床し朝食を取った後、鍛冶屋へと向かい研ぎに出した武器を受け取った。
(盗賊団か。出会わなければいいがな…… )

アルーへ向かう前に依頼クエストを受けにギルドへ出向いたときの事を亮真は思い出していた。


「さぁ!腕に覚えのある人は是非此の依頼クエストを受けてくれ!」

昨日受付の青年にギルツさんと呼ばれていた中年がギルド前に立てた掲示板の前で大声を張り上げる。
人ごみを掻き分け亮真は掲示板に張り出された紙を見た。
----------------------------------------------------------------------------------  告

メルフェレン〜アルー間に出没する盗賊団【紅月団】の討伐隊とうばつパーティーを編成する。
条件:
盗賊団【紅月団】の殲滅。
必ず全員を殺害または捕獲する事が絶対条件。

報酬:
報酬は盗賊団員1名に対して5万バーツ。
確認されている団員は8名。
ただしそれ以外でも盗賊団員を認めれば1名に対して5万バーツの報酬を払う事とする。
盗賊団が所持している財宝および所持金に関しては、討伐隊とうばつパーティーの副収入とし良い事とする。
達成値クリアポイント討伐隊とうばつパーティー全員へ50Pポイントを依頼達成報告時に加算するものとする。

期間;
討伐隊とうばつパーティー編成から半月以内とする。

募集要項;
シングルFエフランク以上の者で以下の能力を保有している事。
戦士、法術士(どの系統でも可)どちらでも可とする。

傭兵経験を持つ者(十分な戦闘経験が有るならば冒険者でも可)
募集人数:6名
探索および調査能力を持つ者(十分な探索経験が有るならば冒険者、傭兵共に可)
※戦闘能力を持つ者は優先して採用。
募集人数:4名

承認者:メルフェレン ギルド支部長 アクレス・レキーネ

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張り紙を見た亮真の耳に周りの男達の話し声が聞こえてきた。

「おい!一人倒せば5万だとよ!8人で40万!それにお宝も討伐したヤツの物ってか!」

「うひゃぁ。ギルドもえらい奮発したな?」

「仕方がねぇよ。ゴラエスが失敗したらしいからな……ギルドとしても面子メンツが有るんだろうぜ」

「なに!?”岩砕き”のゴラエスがか?」

「ああ。何でも別の盗賊団を始末して来たらしい」

「は!調査もしないで討伐に行ったのか!馬鹿だねぇ……まぁアイツならそんなもんか!強いのは強いがオツムの方は空っぽだからな」

「おいおい。ゴラエスに聞かれたらお前の首なんざぁ引きちぎられるぞ?」

「おおっと……口が滑ったぜ……」

周りの男達も傭兵や冒険者のようだ。

(ゴラエスさんも大変だな。そぉ悪い人でもなかったみたいだけど……)
男達の心無い批評を聞きながら亮真はギルドの中へ入っていった。


「大変申し訳ないのですがメルフェレン〜アルー間の配達系依頼はいたつけいクエストは全て停止とさせて頂いています。緊急の配達などもあるのですがこちらはEランク以上の方のみとなっていまして御子柴さんへはご紹介出来ないんです」

受付カウンターに居た女性は亮真にそう告げて頭を下げた。

「例の盗賊団ですか?」

「えぇ。ギルドとしては今回の失敗で大きく威信を損ないましたから……領主様や警備隊の方からもねじ込まれまして……あ!ごめんなさい。今のは忘れてください」

「いえいえ、それは良いんですが。それじゃぁ何か俺でも受けられる依頼ってありますか?」

「そうですね〜。Iランクの討伐系依頼とうばつけいクエスト3種とHランクの討伐系依頼とうばつけいクエストですかねぇ。現状だと」

「Iランクの依頼クエストって上のランクの人が受けると達成値クリアポイントは0だけど報酬は2倍なんですよね?」

「ええ。そのとおりです」

「あと、期限に関してなんですけど?」

「Bランク以下の討伐系依頼とうばつけいクエストは原則期限はありませんよ」

「ああ?そうなんですか?」

「ええ。だからBランク以下の討伐系の依頼クエストに関しては受けておいたほうがいいですよ?」

「ならシングルHエイチで受けられる討伐系依頼とうばつけいクエスト全部受けます」

「判りました。ではこちらをご覧ください」

そういうと彼女は一冊の本を差し出した。

「これは?」

Hエイチランクで受ける事の出来る討伐系依頼とうばつけいクエストの一覧と討伐対象名、報酬額、生息地を表にした物です。Hエイチランクで受けられる依頼は20存在しています。全てを口頭で説明するのは大変なのでHエイチランク以上の討伐系依頼とうばつけいクエストをはじめて受ける際に一覧をお渡しするんです。よく読んでおいてください」

「はぁ……判りました」

それほど厚みが無いのが唯一の救いだ。
(ランクが1個上がっただけでそんなに変わるのか……)

「では依頼の方はカードに登録したので手続きは以上です。お疲れ様でした」

受付嬢はそういうと頭を下げる。
亮真は渡されたカードと本を手にギルドを後にしたのだった。


メルフェレンを後にして2時間ほど過ぎた頃だろうか。
街道は鬱蒼うっそうと茂った森の中を貫いていた。
馬車が3台以上すれ違えるほどの道幅あるため歩くには問題ないが、森に目を向けると大木が生い茂りってる。
その所為で日の光が遮断され昼間と言うのにやけに薄暗かった。
しかも例の盗賊団の所為だろう。
街道なのに誰も歩いていない。
今街道を歩いているのは御子柴亮真タダ一人だ。

(おいおい……嫌な予感がするんだけど……)

薄暗い森に挟まれた街道。
兵を伏せるには絶好の場所だ。
当然、盗賊団が襲ってくるのにもちょうどいい場所でもある。

(まぁ大丈夫だと思うんだけどな……)

亮真がアルー行きを決行したのは、帝国からの追っ手を意識したからだ。
少しでも早く国境を越えてしまいたい。
だがそんな彼の思惑は、女の絹を裂く悲鳴の所為で崩れ去った。


「きゃぁぁああ!」

「うるせい!静かにしねえか!」

「イヤ!離して!」

「おとなしくしやがれ!」

丁度道が右へ大きく曲がる地点だ。
亮真の死角になっていて状況が見えない。
亮真は声のする方へ駆け出した。
亮真は街道の曲がり角にそびえる大木に駆け寄ると、木陰からそっと覗き見た。

そこに居たのは襲撃を受けた馬車と複数の男達、それに少女が2人。

「ククク。今日も大漁だなぁ。オイ。最近ツキがめぐってきたんじゃねぇか?」

「まったくだ。昨日の村も意外と溜め込んでいたしな」

「女も田舎の村の割には悪くなかったな。尤も俺らには回ってこなかったが……」

「そりゃぁしょうがねえさ。売り払うのに犯したのと手付けてないのだと値段がぜんぜんちがわぁ」

「年増ばかり相手にするのも飽きたぜ。やっぱこいつらみてえに若いのじゃねえとな」

一人が仲間が捕まえている少女達を指した。

「ハハハ。違えねえや!」

「おい!商品に手を出すんじゃねぇぞ?頭領かしらに殺されるぜ?」

金髪の少女を捕まえている男が仲間に言った。

「だがよぉ。これほどの上物だぜ?」

銀髪の少女を捕まえている男が言い返す。

「そうだぜ?それによ。ノルマはこの馬車の荷で十分じゃねえか?」

馬車の中身を漁っていた男が出てきて言った。
あちこちから賛同の声が上がる。
彼女達ほどの美女を前に押さえが効かなくなってきているのだ。

「私達に手を出したら舌を噛みます!」

男達の話を聞かされ遂に我慢できなくなったのか、銀髪の少女は毅然と叫んだ。
だが男達の笑みは消えない。

「ハッ!俺達はお前ら奴隷が其の首輪で自殺できない事も、反抗できない事も知ってるんだよ!」

少女達の顔が真っ青に引きつる。
まさか盗賊たちが其の事を知っているとは思わなかったのだろう。
男の言うとおり首輪に付与された力が彼女達の行動を阻む。
自殺する事も反抗することも、彼女達奴隷には許されない事だった。

「でもまぁ念のためだ。オイ、2人に布でも噛ませておけ」

「止めて。放して!」

2人は必死で男達の手を振りほどこうとするが、純粋な腕力で敵うはずも無い。

「オイ!あんまり聞き分けが無いと、向こうの女がどうなるか判らないぞ?」

「!」

抵抗した銀髪の少女が、もう一人少女に剣が突きつけられているのを見て観念したのか、おとなしくなった。

「しかし、お前らのご主人様も薄情だよなぁ?俺らに襲われて自分だけ護衛とトンズラだもんな」

銀髪の少女に脅しをかけた男が彼女達をあざ笑う。

「ゲイツよ。そりゃぁしょうがねえんじゃないか?俺ら【紅月団】に狙われて命があるだけましよ」

「ちげえねえ!」

ゲイツと呼ばれた男が高らかな笑い声を上げた。

「オイ!これ見ろよ。500万バーツはくだらねえぞ!」

幌の下か持ち出した品を物色していた男が叫んだ。

「うおぉぉ。信じられねえ。本当に500万はあるぞ……」

「これ全部金貨かよ……」

雑貨類や衣装、宝飾品と言った物が詰まった箱の他に、貨幣コインの詰まった箱が一つ。
中は殆ど金貨ばかりだ。
男達の顔が厭らしく歪んでいく。

「なあ、こんなに稼いだんだったら、この女共は好きにして良いんじゃねえか?」

「おう。俺もそう思うぜ……金貨に宝石類。こんなにあるんだ。先におこぼれを貰ったってかまわないだろうよ。」

「だが頭領かしらにばれたら……」

心配そうな表情を浮かべる男にゲイツは歪んだ笑みを浮かべて言い放った。

「なぁに。犯した後で2人とも始末すればいいじゃねえか?どうせ獲物に女奴隷が居たかどうかなんて俺ら以外には判らねえんだぜ?」

ゲイツの言葉を聞き男達の顔にも厭らしい笑いが浮かんだ。

(1・2・5……7人か……)

大木より10M程先に男達は居た。
男達の服装は街中でみた傭兵や冒険者と大差ない。
鎧を着、武器を持っている。
だが其の顔に浮かんでいるのは残虐な捕食者の顔だ。
他者を犯し、傷つけ、奪い、殺す。
自分達が強者であるとゆう驕りと自信。
彼らの顔にはそれらが陰のようにこびりついていた。

(醜い面をしてやがる……)

亮真は16年の人生の中で、これほど欲望に歪みきった醜い顔を見たことが無かった。

(どうする?助けるか?……でも。ここで面倒に関わるのは不味い……)

亮真は躊躇した。

(ここで彼女達を助けても何も面倒は起きないかもしれない。だが。起きるかも知れない……。助けるなら7人全員を確実に始末しなければ……1人でも逃がせば援軍を連れて仕返しに来るだろう。できるか?この距離で彼女達を盾に取られれば俺に打つ手は無い。)

助けるべき理由。
助けるべきではない理由。
自分の保身。
自分の正義。
帝国の追手。
いくつもの要素が脳裏を駆け巡る。
そんな亮真の耳にゲイツの下卑た言葉が届いた。

亮真の顔に怒気と殺意が浮かぶ。
(俺は何を悩んでいるんだ。こんな連中を生かしておいていいのか?)
正直な気持ちだ。
(俺がここでコイツらを見逃して仮に元の世界に帰れたとしてそれで良いのか?俺はそれで納得できるか?)

この訳の判らない異世界へ無理やり召喚され、元の世界に帰る為にはどんな手段だって取るつもりだった。
この国の民全ての命と引き換えで帰れるのなら、引き換えても良いとさえ思っている。
だがそれでも目の前の女の子が犯され殺されるのを黙ってみている程、割り切れては居なかった。
(俺の両手は血に染まっている。別にそれが悪いとは思わない。無理やりこの世界に引きずり込み、死ぬまで戦わせようとした連中の命など俺にとってゴミみたいなもんだ。元の世界に戻ってこのことで批判されたって俺は堂々と言える。「必要だから殺したんだ!」と、だが彼女達を見殺しにして同じ事が言えるか?……無理だ!他人がどうのじゃなく俺自身が俺を許せねえ)

目的のためには冷徹で冷酷になれる亮真も、基本的には善良な人間と言う事だ。
世間一般の常識や正義感を持ち合わせて普通の人間。
唯一違うとすれば、それは覚悟だけだ。
相手を殺してでも其の正義を貫こうと言う覚悟だけが、普通とは違うかも知れない。
亮真は戦輪チャクラムを袋から掴み出すと、奇襲を掛ける為に最適なポジションへと森の中を駆ける。
もし奇襲に失敗すれば人数上圧倒的に不利だ。
それに今回は顔を隠してない。
もし一人でも逃がせば援軍を引き連れて仕返しに来るのは目に見えている。

(成功の確率を上げるにはしょうがねえか……悪いな)
亮真は心の中で危機迫る彼女達へ謝罪した。
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