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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第3章 水の大精霊

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(12)女王との会話と少しずれた常識

 ユリアナの答えを聞いたフィロメナは、一応納得したように頷いたが、ここでシゲルがミカエラ、マリーナと視線を交わしたあとに割り込んだ。
「今のお言葉ですと、例えば後ろの方たちが噂を広めるという事もありえると思いますが?」
 シゲルがそう聞くと、フィロメナはハッとした表情を作って、すぐにキッとユリアナをにらんだ。
 普段は決して鈍くはないフィロメナだが、色恋沙汰が絡むとどうしても迂闊なところが増えるようだった。
 もっとも、シゲルはその分、今回のように自分が出来る限りフォローすればいいと考えている。

 フィロメナからにらまれたユリアナは、わざとらしく口元に手を当ててホホホと笑った。
「あら嫌ですわ。私がそのようなことを考えるとでもお思いですか?」
 ユリアナがそう言うと、何とも言い難い空気がその場に漂った。
 その答えは、するともしないとも言っていない。
 あくまでも考えを相手に委ねているだけだ。
 女王である以上は、その程度の腹芸は出来て当然だ。
 今の会話が腹芸に入るかどうかは、微妙なところだろうが。

 周囲の微妙な空気に気付きつつ、ユリアナはそれを無視する形でミカエラとマリーナを見た。
「それに、貴方たちはどうなのかしら?」
 それを聞いた瞬間、シゲルは誤魔化したとすぐにわかった。
 それでもそれを口にすることはしなかった。
 何故なら、フィロメナたちがなにも言っていなかったからだ。
 ただの知り合いや友人相手なら突っ込んでも良いかも知れないが、相手は女王だ。下手をすれば無礼に当たり、そこを責められるかも知れない。

 マリーナがどう考えたのか表情では分からないが、ユリアナの問いにすぐに答えた。
「そうですね。少なくとも今まで会った方たちよりは、はるかに良いと思っていますよ?」
 その答えに、シゲルは微妙な顔をしたが、フィロメナとミカエラは「えっ」という顔をしていた。
 フィロメナとミカエラに合わせるようにユリアナもあらあらという顔になっている。

 彼女たちの反応にシゲルは少しばかり戸惑っていた。
 シゲルとしては、答え保留の先延ばし回答だと考えていたのだが、ほかの者たちはそうは受け取らなかったようだった。
 それから、フィロメナの反応も意外だった。
 彼女の事なので、マリーナの答えでもっと焦ると思っていたのだ。
 それが、驚きだけだったので、もしかしたらという考えがこのときのシゲルの脳裏に湧いていた。
 しかし、それをここで口にすることはしない。
 何がきっかけになって、シゲルが渡り人だとばれるかわからない。
 そのためにも、余計な情報を与えることだけは、避けなければならないのだ。

 ユリアナは、面白そうな笑みを浮かべながらマリーナを見た。
「へー。貴方がねえ。そこのところ、もう少し詳しく」
「個人的なことなので、お断りします」
 ユリアナの要求に、マリーナはきっぱりとそう言い切って、さらに続けた。
「それよりも、そろそろ先ほどの答えを教えていただけないでしょうか?」
 何のことか分からずに、シゲルとフィロメナは疑問の顔になったが、自分たちが来る前に何か質問をしていたのだろうと思い至った。

 マリーナの問いに、ユリアナはつまらなそうな顔になりながら肩を竦めた。
「あら、残念ね。これからが面白い所だったのに」
「ネタとしてはもうこれくらいで十分ですよね?」
 わずかに睨むようにして言ったマリーナに、ユリアナは右手を上げながら答えた。
「わかったわよ。水の大精霊について、ねえ。今更、なんの目的があってと聞いてもいいのかしらね?」
 フィロメナたちは、魔王を倒す旅をしてきたときでさえ、まともに大精霊に会おうとはしていなかった。
 それが、なぜ今更とユリアナが考えるのは当然だろう。
 勿論、フィロメナたちにも言い分はあるのだが、それはいまは関係ない。

 何を言っているのかという表情をはっきりと表に出しながら、フィロメナが答えた。
「以前の時は、どこかの国に入るたびにやれ何々を倒せだの、どこどこに行ってほしいだの、さんざん各方面から注文を付けていたではありませんか。そんな私たちに好きに旅が出来る余裕があったと?」
 若干不機嫌になったフィロメナを見て、ユリアナがしまったという顔になった。
 いくらユリアナでも、本格的にフィロメナと仲違いするのはごめんなのだ。
 今までの会話は、これまでの付き合いで、踏み込んでも大丈夫だとわかっているところまでしか踏み込んでいない。
 そこはしっかりと見極めていたのだ。

 フィロメナの逆鱗近くまで触れてしまったと自覚したユリアナは、それでも国の上に立つ者として必要なことだけは伝えなくてはならない。
「貴方たちも、当時はそれが必要なことだとわかっていたからこそ、自分たちから動いていたわけよね?」
 ユリアナは、自分たちだけの要望だけで動いていたわけではないだろうとフィロメナを牽制しながらすぐに矛先を変えた。
「それにしても水の大精霊ねえ。残念ながら国として出せる情報は、ほとんどないわよ?」
 ユリアナのその言葉を聞いて、フィロメナはほとんど睨み付けるようにして見ていた。

 それに気付いたユリアナは、若干慌てた様子でさらに続けた。
「待ちなさい。別に隠しているわけではなくて、本当にそうなのよ。私たち()でも把握しているのは、市井に流れている噂程度のことだけ。それに付け加えるとすれば、オモニ湖になにかある、ってことくらいかしら」
 その言葉を聞いたフィロメナは、若干だがきつい目線を緩めた。
 ユリアナが嘘を言っていないとわかった為だ。
 その代わりに、嫌味のひとつでもぶつけることにした。
「長年の付き合いがあるにも関わらず、随分と怠慢な気がしますね」
「……そうね。私もまったくの同感だわ」
 こればかりは反論の余地はないと、ユリアナはあっさりとそれを認めた。
 この辺りが女王として出来る最大限の譲歩といったところだろう。
 普通は、女王自ら国の不出来を認めることは、ほとんどないのだ。

 
 これ以上の情報をユリアナ女王から引き出すことは出来ないと判断したシゲルたちは、その後の会話はそこそこに切り上げた。
 まあ、切り上げたといっても、後ろに控えていた侍女に促されてユリアナが残念そうな顔になりながら話を打ち切ったのだ。
 仮にも女王という立場にいる以上、忙しいという事は理解できる。
 そもそも、こんな場所まで足を運んでいること自体が不思議なのだが。

 とにかく、ユリアナが居なくなった室内では、シゲルたちは同時に大きくため息をついていた。
「何というか……、嵐のような人だったね」
 シゲルがそう言うと、フィロメナが納得したように大きく頷いた。
「ああ、なるほど。確かに的確な表現だな」
 普段は晴れの日のようにさっぱりとして来て気持ちがいいのだが、ときに大嵐のように波風が吹きたつようなことをしてくる。
 女王自ら宿に突撃してくるなんてことは、そのいい例だ。
 シゲルの感想に、ミカエラとマリーナも同意するように頷いていた。

 ユリアナ女王に関する感想はそこそこにして、シゲルは先ほどの会話で気になったことを確認することにした。
 話題としては微妙なものなのだが、ここはきちんとはっきりさせておかないと、後でとんでもない事態に発展しそうなのだ。
 そのためシゲルは、言いにくそうにしながらもフィロメナを見ながら聞いた。
「あの……、ちょっと確認なんだけれど、こっちの世界の婚姻ってどうなっているの?」
 シゲルの質問に、一瞬赤い顔をしたフィロメナだったが、すぐに真面目な問いだと理解して首を傾げた。
「うん? どういうことだ?」
 その質問が、結婚の時の式や形式を聞いているわけではないことは、シゲルの顔を見ればわかる。
 では具体的に何を聞きたいのかが分からなかったのだ。
 それはフィロメナだけではなく、ミカエラとマリーナも同じだった。

 始めは聞きにくそうに俯いていたシゲルだったが、やがて覚悟を決めたように顔を上げた。
「いやだから、一夫一妻とか、一夫多妻だとか。そういう決まりはあるのかと」
 フィロメナたちは、先ほどのユリアナとの会話で、シゲルが落ち着かなさそうにしていたときのことを思い出した。
 ついでにマリーナはついとシゲルから視線を逸らした。

 そして、シゲルの問いに、面白そうな顔になりながら答えたのがミカエラだった。
「特に基準なんかないわよ。昔は制度として持っている国もあったみたいだけれどね」
「つまりは?」
「一夫一妻も多夫多妻も完全自由ね。何十人も女を囲った王もいれば、同じように少年たちを囲った女王なんてのもいたみたいよ?」
 シゲルとしては、そこまで極端な例が知りたかったわけではないが、とりあえず聞きたいことは聞けた。
 これで、変な誤解で面倒なことにならなくても済む。

 シゲルも男なので、ハーレム願望がまったくないというわけではない。
 ただし、それが現実だとすれば、いろいろと複雑な関係を構築していかなければならないということも、十分に理解していた。
 なので、シゲルとしては、フィロメナの了解がもらえない限りは、余計な道に進むつもりはない。

 そう覚悟(?)を決めたシゲルに、ミカエラが相変わらずニマニマという表現が正しい顔で聞いて来た。
「それで? シゲルとしては、どうなのかな?」
 何の事かは、ミカエラがマリーナのことをチラチラ見ながら聞いていることで、言われなくても分かる。
「嫌いだったら一緒に旅なんてできていないよ。それに、それ以上については、まずフィロメナの許可をもらってからだね」
「おー、そう来るか」
 シゲルの答えに、何故かミカエラは感心した顔になって、フィロメナを見た。

 そして見られたフィロメナといえば…………、アタフタしていた。
「わ、私かっ!? い、いや、別に、相手がマリーナで、シゲルが望むというのであれば、別に…………」
 そのフィロメナを見て、マリーナが盛大にため息をついてから言った。
「フィロメナ、少し落ち着きなさい。それに私だって、今はまだそこまでの気持ちがあるかどうかなんて、わかっていないわ?」
「そ、そうなのか?」
「ええ。勿論、さっき言ったことは、間違いなく事実ですけれどね」
 マリーナが現在、シゲルを『男性』として見ているかどうかは、まだ微妙なところだ。
 そのため、それ以上のことについては、まだまだこれからというのがマリーナとしての本心なのであった。
調子に乗って書いていたら、少し長めになってしまいました><

ちなみに、婚姻制度ですが、そもそも男しかいない、あるいは女しかいない種族がいる世界で、一夫一妻で縛るのは、(種族的に)自殺行為だと思われるのでこうなっています。
ついでに、「男の数<女の数」になります。
これは、女だけの種族が多いからです。
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