挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第3章 水の大精霊

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

48/146

(8)王都での準備終了

 マリーナの旅の許可が下りるまで三日ほどがかかった。
 その間に、シゲルたちは王都の散策をしたり、軽い依頼を受けたりしていた。
 幸いにして(?)、初日にいきなり王から使者が来た以外は、大きなトラブルもなく過ごすことが出来ていた。
 ただし、フィロメナは、ほとんどべったりという感じでシゲルの傍にいたので、敢えて接触してくる者がいなかった可能性もある。
 初日のことを考えれば、シゲルに遠慮したというよりも、そちらのほうがあり得るだろう。

 数日かけて王都を回った結果わかったことは、やはりなぜかこの世界の食事事情は思った以上によくないということだった。
 とにかく、調味料の類が少ない。
 香辛料の類が多くあるからかと思えばそういうわけでもないので、シゲルは何か理由でもあるのかとさえ疑っている状況だった。
 もっとも、フィロメナたちにとってはこれが当たり前なので、そんな理由は知らないという答えが返って来るだけだった。
 もし周囲の国で新しい調味料ができていれば、大陸で五本の指に入るホルスタット王国に入ってこないはずがない。
 ということは、周りの国でも同じような状況だと推測できる。
 あるいは、小国の文化など受け入れる余地などないと、余計なプライドを持っている可能性も無きにしも非ずだが、王都の商人を見る限りではそんな感じは受けない。

 三日かけて王都にある市場を回りつくしたシゲルは、そんなことを考えてポツリと呟いた。
「……もしかしたら、そちら方面を期待してこの世界に連れて来たとかか?」
 と、いささか自意識過剰なことを言ったら、それにフィロメナが反応した。
「うん? 何か言ったか?」
「ああ、いや、なんでもない。何となく、自分がここに来た意味ってあったのかなあって思っただけ」
 首を振りながらそう答えたシゲルに、フィロメナは少しだけ視線を向けて来たが、ただ短く「そうか」とだけ返してきた。

 実際に確認する術がない以上、そんなことをいつまでも考えていても仕方ないと割り切ったシゲルは、その後は適当な会話をしつつ町の散策を続けた。
 途中、衣装屋に入って恥ずかしがるフィロメナに、可愛らしい服を勧めてみたりもしていた。
 その際、フィロメナが「シゲルが勧めるなら」と小さく呟いていたのを、シゲルはしっかりと聞き逃さなかった。
 ついでに、他の衣装に紛れておすすめ服を買っていたのも見逃さなかった。
 それを突っ込むとまたややこしいことになりそうだったので、その服を着てくれるその時まで楽しみにしておこうと決めるシゲルなのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シゲルとフィロメナが町を一巡りして宿に戻ると、そこには既にミカエラとマリーナがいた。
「すまんな。遅くなったか?」
「いいのよ。二人で楽しんできたのよね?」
 マリーナがからかい気味にそう言うと、フィロメナは素直にコクリと頷いた。
「ああ。お陰様で良い時間を過ごせた」
 あっさりとフィロメナがそう返事をすると、ミカエラとマリーナがおやという顔になっていた。
 今までのフィロメナであれば、多少なりとも顔を赤くして反論して来たのだが、それがあっさりと受け入れるように変わっている。

 ほぼ同時に顔を見合わせたミカエラとマリーナは、ずいと視線をシゲルへと向けて来た。
「何かあった?」
「もしかして、つい盛り上がって口づけでもした?」
 いやそんなことはしていないと答えようとしたシゲルだったが、それよりも先にフィロメナが反応した。
「な、何をいうか!? 町の往来でそんなこと、出来るはずもないだろう!」
 そのいつもの様子に、ミカエラとマリーナは安心したような表情を浮かべて頷いた。

 それを見て、またいつものが始まるなと察したシゲルは、それよりも先んじてマリーナを見ながら聞いた。
「ところで、ポーションはどうだった?」
「あら、残念ね。ここからがいい所だったのに。……って、フィー、そんなに怖い顔で睨まないで頂戴。ポーションは特に問題なかったわよ。むしろ、質が良い方だって言っていたわね」
 初日にサンプルとしていくつポーションを持って行ったマリーナは、翌日には出しても大丈夫な分をシゲルに要求して来た。
 早速、立場作りとして利用するつもりだと言っていたので、シゲルも必要な分を渡していたのだ。
 その分精霊力が減って、また『精霊の宿屋』を拡大する機会が伸びてしまったが、必要なことだとそこは割り切っている。

 とにかく、渡したポーションがきちんと受け入れられたことは、シゲルとしては一安心だった。
 それが顔に出ていたのか、耳が赤いまま戻っていないフィロメナが、不思議そうな顔をして聞いて来た。
「なんだ。最初に渡した物で大丈夫だと言われていたのだろう?」
「いや、それはそうなんだけれどね。やっぱり不安にはなるよ」
「そうか」
 シゲルの答えに、フィロメナは納得した顔で頷いた。

 フツ教の神殿でポーションが売れるとなれば、大陸のどこに行っても大丈夫だというお墨付きを得たようなものである。
 きちんと発行してもらった許可証をマリーナから貰ったシゲルは、それを大事に遺跡でゲットした鞄タイプのアイテムボックスに仕舞っておいた。
 それがあれば、ホルスタット王国の王都でお墨付きを得たという証明になり、門前払いをくらう事だけはなくなる。
 売ろうとした神殿でポーションがだぶついていたりすれば、買い取ることはできないと拒否されることもあるだろうが、そうしたことはほとんどないということだった。
 これでシゲルは、いつでも現金を手に入れる手段を得たことになる。

 
 シゲルのポーションの話が終わったあとは、本題のこれから先の予定について話し始めた。
「一応確認だが、前にも言った通り、南を目指すという事で構わないな?」
 フィロメナがそう問いかけると、他の三人が頷いた。
 そもそもシゲルはこの世界の地理に詳しくないので、最初から意見などあるはずがない。
「確か、以前に水の大精霊が確認されたところがあるんだっけ?」
「ああ、そうだ」
 シゲルの問いに、フィロメナが大きく頷いた。

 それを補足するように、ミカエラとマリーナが続けた。
「水の大精霊はとっても穏やかな気質らしくて、昔から姿を見せているからね」
「その分あちこちに姿をお見せになっているけれど、特に南に集中しているという事は、わかっているわ」
 大精霊も性質は様々で、水の大精霊は比較的よく人前に姿を見せるタイプらしい。
 ちなみに、木の大精霊であるメリヤージュは、水の大精霊ほどではないが、姿をよく目撃されている。
 ただし、魔の森で見つかったのは、初めてのことだ。
 もっとも、以前遺跡に来た者がいるという話からして、見てはいても敢えて話を広めなかったということもありえるのだが。

 とにかく、まず目指すべき場所は南ということになる。
 目撃されている場所はホルスタット王国内ではないので、当然国を越えて旅をすることになる。
 シゲルは、そのことに幾分ワクワクしていた。
 その間ずっと馬車の中というのは多少うんざりしなくはないが、それよりも見たこともない風景を見れることを期待していた。

 そのシゲルの様子に気がついたのか、フィロメナが若干苦笑しながら見て来た。
「楽しみなのか?」
「それは、この世界のあちこちを、実際にこの目で見られると思うとね」
 多少恥ずかしく思いつつ、素直に頷くシゲルを見て、フィロメナたちは少し羨ましそうな顔をしていた。
 彼女たちは、魔王討伐の旅であちこちを見てきているので、すでにそういう感覚があまり湧かなくなっている。
 付け加えると、彼女たちが行った場所は、ほとんどが魔王かその手先に実害を被っている所だったので、あまり良い印象が無かったりするのだ。
 そのため、素直に旅行を楽しもうとしているシゲルが、羨ましかったのだ。

 
 旅の準備は、マリーナが教会での交渉をしている間にそろえてある。
 あとは実際に出発するだけだったので、シゲルたちは翌日には王都を出て行った。
 その際に、どこかの貴族が止めに入ったりすることもあるかと多少は身構えていたのだが、結局そんなことは起きなかった。
 アドルフ王がしっかりと抑えているのだろうというのが、フィロメナの言葉だった。
 こうしてシゲルたちは、再び旅の人となったのである。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ