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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第3章 水の大精霊

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(1)時間が敵

新章開始!
本日は二話更新します。(1/2)
 遺跡から戻ったシゲルたちは、三日後に王都へと向かった。
 二日の期間を開けたのは、遺跡調査の疲れを癒すためと、長期間家を不在にするための準備をするためである。
 フィロメナの家には、侵入者を撃退するための様々な仕掛けが施されている。
 家に滞在しているときには使う必要が無いその仕掛けを、半日がかりで起動していったのだ。
 ちなみに、それらの仕掛けは、フィロメナ自身が考えた魔道具であったり、魔法(陣)そのものを使っていたりする。
 侵入者があったり、物に触れたりすれば起動する物がほとんどなので、不在中に魔力が空になることもない。
 ただし、いつでも即座に対応できるようにしてあるため、そのときに使う魔力は膨大だったりする。
 もともとの魔力が多いフィロメナだからこそ、使えるような仕掛けでもあるのだ。

 それらの準備を終えて、魔の森にある家を出たシゲルたちは、タロの町で馬を購入してから王都へと向かった。
 馬を買った目的は、もともとフィロメナがもっていた馬車を轢かせるためだ。
 その馬車は、フィロメナたちが魔王討伐に向かっているときに使っていたもので、長期間の旅をするのには便利な機能が色々と備わっている優れものだ。
 入手場所は、当然というべきか、古代遺跡からである。
 流石に馬までは飼っていなかったので、町で用意をしていざ出発となったわけである。

 
 タロの町を出てから十日。
 シゲルはついに、初めての王都の城壁を目にしていた。
「おー。やっぱり、実際に目にすると驚きだなあ」
 小高い丘から見えるずっと続く城壁は、そうしたものを初めて見るシゲルにとっては、非常に新鮮だった。
 やはり写真や映像で見る場合とは、受ける印象がまったく違っている。
 ちなみに、途中で通って来た町や村にも城壁と呼べるものはあったが、王都のものと比べるとまったく違って見えている。

「この辺りでは、一番古くからずっと存在している町でもあるからな。規模が大きくなるたびに、改修工事も行われている」
「それに、手前に見えている城壁は、比較的新しく作られたものよ。もっと進めば、ずっと昔からあるものも見えてくるわね」
 フィロメナとマリーナの説明に、シゲルは感心した顔で頷いていた。
 王都の城壁は二段構えになっていて、今見えている外側の城壁は、主に魔物からの襲撃を防ぐために設けられている。
 大陸内では五本の指に数えられるほどの大国であるホルスタット王国の王都らしい、堅牢な造りになっているのだ。

 
 ギルドカードを提示して、検問を通り抜けたシゲルは、周囲の様子を見て言った。
「遠目で見てわかっていたけれど、この辺りはやっぱり農地になっているんだね」
「そうよ。ここが王都の人口を支えている食料庫というわけ。まあ、これでも全然足りないから外から仕入れたりしているんだけれどね」
 シゲルの言葉に反応してそう言ってきたのは、目を細めながら作物の様子を見ていたミカエラだ。
 森の民と呼ばれているエルフだが、別に農業自体を否定しているわけではない。
 一定以上の人数を養うためには、どうしても狩猟採集だけでは賄いきれないことはわかっているのだ。
 ミカエラの故郷でも自然環境に気を使いながら、農業は行われている。

 見るからに肥沃な大地と見える周辺の様子にシゲルが感心していると、フィロメナが笑みを浮かべながら言ってきた。
「だが、ここまで来ればあと少しだ。予定通り、昼には王都に入れるからな」
「そうか。それは楽しみだ」
 最初の城壁を通った時点で王都と言ってもいいのだが、多くの人々が生活している場という意味での王都は、やはり二つ目の城壁を通ったあとになる。
 国の中心である王都を指すときは、基本的には内側の城壁内にある都市のことを意味している。

 王都には、人や物が多く集まっていて、その国の文化を目の当たりにすることが出来る。
 これまで通って来た町や村にもそれぞれの特色があり、シゲルとしては新鮮味があって楽しかったが、やはりこの世界で初めてとなる王都は別格で楽しみだった。
 その王都に向かって進んでいるシゲルの心は、既にどんな物があるのかと想像に胸を膨らませていた。
 そして、それを見ていたフィロメナたちは、お上りさんを見ているように苦笑をしていたのだが、シゲルはそれには気付いていなかった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 馬車の預けられる宿を取ったシゲルたちは、少し遅めの昼食を取るために、王都の中を歩いていた。
 マリーナは王都の神殿に住まいがあるので、宿を選んだ時点で別れている。
 フィロメナが王都で一番のお勧めという店に入ったシゲルたちは、個室に案内されていた。
 なぜ店の者が個室に誘導したのかだが、店に入るなりフィロメナとミカエラに視線が集まったことを考えれば当然のことだと、シゲルにもわかっている。

 個室の席に落ちついたシゲルは、目の前に座っているフィロメナを見た。
「いやいや、やっぱり想像していた通り、人気者だね」
「……私たちにとっては面倒なだけなのだがな」
 シゲルとミカエラ以外には誰もいないとわかっているので、フィロメナは仏頂面を隠さずにそう言ってきた。
 ミカエラも苦笑をしているところを見ると、同意見だということはわかる。

 フィロメナたちに対する腫物のような扱いは、実は最初の城門を通るときから始まっていた。
 御者をしていたフィロメナの顔を見るなり、ベテランらしい兵士がギョッとして、その近くにいた新人兵士は、フィロメナが出した身分証を見て同じような顔になっていた。
 流石に顔だけを見てフィロメナ、マリーナを認識できる者はいないように見えたが、それでも兵士たちの反応を見れば、魔王を討伐したパーティがどういう扱いを受けているのかはよくわかる。
 その上で、この店のこの対応なのだから、フィロメナの言い分もシゲルには実感として理解できていた。

 顔を顰めているフィロメナを見て、シゲルは笑いながら言った。
「まあ、その辺は有名税と思って諦めるしかないよね」
「……他人事だと思って」
 フィロメナほどではないにしろ、ミカエラが恨めし気にシゲルを見ながらそう返してきた。
「まあまあ。それに、折角の食事を前にそんな顔をしていたら、美味しい物も美味しく感じられなくなるよ?」
 シゲルが慰めるようにそう言うと、フィロメナとマリーナはそれもそうだと気持ちを立て直していた。

 
 そんなどうでもいい会話をしていると、注文した料理が運ばれてきた。
「――――うーん。やっぱり王都だけあって、食材は良い物を使っているみたいだけれど……基本的な味付けは変わらないんだな」
 王都の来るまでの旅でわかっていたのだが、少なくともこの国では、調味料の類が非常に少ない。
 辺境と言われているタロの町だけだと淡い希望を抱いていたのだが、王都でもこれだと、この世界の食事事情はさほど期待できないかも知れない。
「そういえば、シゲルは新しい調味料を作ろうとしていなかったか?」
 以前、マヨネーズを作ったときに、シゲルはフィロメナにそんなことを話していた。
 その話を思い出したのか、フィロメナは期待するようにシゲルを見てきた。
 何故だかミカエラも、同じような顔になっている。

 フィロメナとミカエラからの視線を受けたシゲルは、苦笑しながら首を左右に振った。
「前から暇を見つけては何とかしようとしているのだけれどね。中々どうにも」
 やはりいきなり味噌や醤油を作るのは難しい……というよりも、それらの二つはどうしても作るのに期間がかかるので、まだまだ実験段階を越えてはいなかった。
 ちなみに、米を見つけた時点で米麹を作り始めていたのだが、それが上手くいってるかは見た目で判断するしかない。
 一応、この世界に来る前も、自分自身で研究用として作ったこともあるのだが、それと同じものであるかは感覚で判断するしかなかった。

 ただし、なぜか契約精霊たちが、出来た麹を見て激しく反応していることがあった。
 それを見て、もしかしてという考えはあるのだが、それが正しいかはまだわかっていないので、判断は保留にしてある。
 味噌や醤油以外の調味料となると、やはりシゲルにも難しかった。
 流石にマヨネーズくらいだと作り方も知っていたので簡単にできたが、他の調味料となると知識があやふやになっている。
 それでも時間のかからない物を何とかしようと頑張っているのだが、上手くいっていないのが現状だった。

 シゲルの答えに、フィロメナが残念そうな顔になった。
「そうか。シゲルが作った物なら期待できると思うのだが」
「そうね。早く新しい味が食べてみたいわ」
 フィロメナに続いてミカエラも頷いた。
 美人二人にそう言われては、男としては頑張ろうと張り切る気はあるのだが、いかんせん時間はシゲルにもどうしようもない。
 こればかりは、待ってもらうしかないのであった。
ちゃんと味噌と醤油は作り始めています。
……フィロメナ辺りが反応促進の魔法を開発したりしませんかね?w
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