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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第2章 きっかけ

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(18)挨拶と戦利品

 遺跡の調査を行った三日間、フィロメナたちは精力的に活動していたようで、さまざまな収穫があったようだった。
 シゲルが見つけた乗り物(仮)は、他の面々にも行き渡り、調査の後半には全員が乗れるようになっていた。
 最初に見つけた店(仮)では足りずに、たまたまシゲルが町を巡って見つけた他の店(仮)に残りの分を見つけていた。
 それを報告すると、すぐに食いついてきて、皆に行き渡ったというわけだ。
 フィロメナたちは、初めのうちはバランスを取ることに苦労していたようだったが、あっさりとコツを掴んで乗れるようになった。
 その結果、広い街のなかは乗り物(仮)で移動することが出来るようになり、調査もはかどったらしい。

 シゲルもこの三日間で別の大きな発見をしていた。
 それがなにかといえば……、
「うーん。まさか、こんなものまで登録されるとは思わなかったな」
 シゲルが町の探索をしている間、精霊たちにも同じ指示を出していた。
 その結果、新たな素材と設置物が登録されたのだ。

 まず新しい素材は、遺跡の建物に使われているらしい未知の建材だ。
 それがなぜ建材かと分かったのかといえば、新しい設置物の登録条件として記されていたからである。
 遺跡を探索しなければ、まったく見つけられないような条件に、シゲルは脱力することになっていた。
 もっとも、遺跡を探索する以外に、別のルートもあるのかもしれないが、それはわかっていない。

 さらに、それらの素材と設置物が増えたことにより、新しい環境も登録された。
 それがなにかと言えば、町(小規模)の設置だ。
 ただし、それを箱庭内に設置するには、莫大なコストがかかるので、今の『精霊の宿屋』ではとても手が出せない。
 逆に言えば、いまいる遺跡は、それだけ多くの手間暇がかかっているということが分かる。
 とにかく、予想外のところで収穫を得たシゲルは、ホクホク顔で遺跡の調査を終えていた。

 
 三日間の調査を終えた翌日。
 シゲルたちは、メリヤージュの元を訪ねていた。
 ミカエラが何の挨拶も無しに居なくなるなんてありえないと主張し、シゲルも含めた他の面々が同意したのだ。
 公園に張られている結界は、前の時と同じようにシゲルがメリヤージュに教えてもらって通過することが出来た。

 そして、精霊樹の麓に来たシゲルたちを見て、メリヤージュが微笑みながら言ってきた。
「わざわざ来てもらってすみません」
「いいえ! とんでもありません!」
 小さく頭を下げて来たメリヤージュに、ミカエラが元気よくそう答えた。
 どうやら、フィロメナと同じように、二度目の邂逅という事でミカエラも大分慣れて来たようだった。
 ただし、多少テンパっていることは変わりないようで、若干勢いだけで答えている様子も見られるのはご愛敬だろう。

 そんなミカエラを横目で一瞬だけ見たシゲルは、メリヤージュに向かって頭を下げた。
「お陰様で、随分と色々なことが分かりました。これも調査を許可してくださったおかげです。有難うございます」
 シゲルがそう言うと、フィロメナたちも同じように頭を下げる。
「いいえ。何かのお役に立てるのであれば、良かったです」
「勿論。色々と得難い物を得ることが出来ました」
 シゲルの言葉に、メリヤージュは軽く頷いて、
「そうですか。それは良かったです。――ああ、それから、貴方たちが持って行こうとしているものは、気にせず持ち帰ってください」
 メリヤージュがそう言うと、シゲルたちは何となくばつが悪そうな顔になっていた。
 いくら許可を得ていたからといって、町を管理しているメリヤージュから見れば、盗掘と変わりがない。
 シゲルたちが後ろめたく感じるのは当然だった。

 そんなシゲルたちに、メリヤージュが微笑みながら続けた。
「もし、気になるようであれば、同じようなものを作って元のものを返してくれればそれで構いません。私たちでは、管理することはできても、もう新しい物を作ることは出来ませんから」
 そう言ったメリヤージュだったが、返って来ることはほとんど期待していない。
 以前シゲルたちに話をしたように、昔にも同じように魔道具や様々な物を持ち帰って行った者たちはいた。
 そんな中で、実際に返してきた者たちは、片手で数えるほどしかいない。
 高度な文明が作り出した物をそう簡単に再現することなど出来ないということは、メリヤージュもよくわかっているのだ。

 フィロメナは、メリヤージュがあまり期待していないことを理解したうえで、頷いていた。
「そうさせていただきます」
 もし、この遺跡にある高度な魔道具が、そんなに簡単に再現できるのであれば、そもそも今の魔道具がここまで廃れているはずがない。
 失われた高度な技術を回復するということは、容易に出来るようなことではないのだ。

 
 メリヤージュへの挨拶を終えたシゲルたちは、遺跡を後にした。
 それぞれに遺跡に対する思いはあるようだが、それを話す前に、まずは魔物が出てくる危険地帯を抜けないといけない。
 そうして、二つの通路と小部屋を抜けたシゲルたちは、無事にフィロメナの家へと到着するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フィロメナの家に着いたシゲルたちは、それぞれが冒険の埃を落として、ようやく人心地ついていた。
 安心できる場所で寛ぎ始めたシゲルたちがまず始めたのは、今回の戦利品に確認だった。
 全員が乗り物(仮)とそれを入れるための袋を持ってきていたが、それ以外にもいくつか持ち帰って来た物はある。

 まず、シゲルが持ってきたものは、鞄タイプのアイテムボックスとお湯を作り出すことが出来る魔道具だった。
「アイテムボックスはまだわかるが……そんな魔道具を何に使うのだ?」
 不思議そうな顔になって聞いて来たのは、フィロメナだった。
 ただし、ミカエラやマリーナも同じような顔をしている。
「それは勿論、どこでも風呂に入るため!」
 きっぱりとそう言い切ったシゲルに、他の面々はやっぱり不思議そうだった。

 そもそもこの世界では、風呂に入る習慣があまりない。
 というよりも、いくら魔法があってもお湯を作ることは本職の魔法使いでないと難しいので、あまり利用されていないのだ。
 温泉が湧き出ているところや貴族の屋敷などには備え付けてある場所もあるが、一般的には普及していない。
 ちなみに、フィロメナの家には風呂はあるが、それはフィロメナ自身が魔法を使えて、簡単にお湯を作れるからである。

 シゲルは、今後のことを考えて、旅先でも簡単に風呂に入ることが出来るようになるこの魔道具を持ってきたというわけだった。
 お湯をためるための湯船は、大きい樽などを作ってもらえば、いくらでも代用することが出来る。
 幸いにして、大きい物を入れるためのアイテムボックスは、乗り物(仮)を入れているアイテム袋を使うことが出来そうなので、持ち運びに苦労することはない。

 何やら風呂に情熱を燃やしているシゲルに、フィロメナたちはピンと来ない顔をしていた。
 勿論、家にしっかりと備え付けているフィロメナは、風呂が気持ちいいことはわかっているが、そこまでする必要はあるのかという考えなのだ。
 長い間、いろいろな場所を旅して来た者ならではの感覚だろう。
「…………まあ、シゲルが欲しかったのであれば、それでも構わないが」
 一生懸命に風呂の良さを説明したシゲルだったが、結局フィロメナにそう結論付けられてしまった。
 その努力が報われることがなく、シゲルはガクリと肩を落とすことになるのであった。

 
 シゲルの戦利品(?)はともかくとして、フィロメナたちもそれぞれ特徴的な物を持ち帰ってきている。
 ミカエラとマリーナは、神殿で見つけた書物を持ってきていた。
 書かれている文字は遥か昔に存在していた古代文字だったので、かろうじて読むことが出来る。
 書物自体はたくさんあったのだが、その中でもミカエラは精霊に関するもの、マリーナは神々について書かれたものを選んできていた。
「本当は書物を保存するための魔道具を持ってきたかったのだけれど、それは諦めたわ」
 というのが、マリーナの弁だった。

 あの遺跡がどれくらい古い物はわかっていないが、数千年単位ではきかないことはわかっている。
 それだけの期間、本を保存することができる魔道具が貴重な物だということはシゲルにもわかる。
 ただし、ひとつしかないそれを持ってきてしまうと、その場にある本すべてが失われてしまう可能性もあったため、持ってくるのを断念したのだ。

 そして、最後のフィロメナが持ってきた魔道具はといえば…………、
「なんと、氷を作れる魔道具だ! 素晴らしいだろう? 私がこれを見つけた時は……って、どうしたんだ?」
 見つけた魔道具の素晴らしさを力説しようとしたフィロメナだったが、他の面々から白い眼を向けられて首を傾げた。
「フィー、あなたねえ。それって、発想がシゲルと変わらないんじゃない?」
「そうよね。どう考えてもシゲルに料理の幅を広げてもらうためですよね、それ」
 長年の付き合いがあるミカエラとマリーナは、あっさりとフィロメナの目的を見抜いていた。
 それに対してフィロメナは、盛大に自爆をすることになるのであった。
最初に比べてフィロメナのイメージが崩れている気がしますが、もともとそういうキャラですw
ミカエラとマリーナが来て、本性(?)が出て来たというところでしょうか。
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