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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第2章 きっかけ

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(16)話の続きと店(仮)

 メリヤージュがシゲルのことを気に入ったという話はともかくとして、他の遺跡についてはフィロメナたちにとっても有益な情報だった。
 フィロメナたちは、それぞれの理由で古代遺跡の調査を行っている。
 今回のような遺跡が他にもあるのだとすれば、その研究をさらに進めることが出来る。
 問題があるとすれば、フィロメナたちだけでは、どうしても限界があるということだろう。
 ただし、これだけの遺跡を有象無象の者たちに荒らされたくはないという思いもある。

 すでに二度目のメリヤージュとの邂逅で、多少は慣れて来たフィロメナが、疑問に思ったことを聞いた。
「大精霊、この場に私たち……いや、シゲル以外の者が調査に入ることは出来るのでしょうか?」
 フィロメナが敢えてシゲルと特定して言い直したのは、どう考えても自分たちはおまけだという認識があったからだ。
 そうでなければ、わざわざシゲルだけに話をしてこの場に呼び寄せるなんてことはしないはずである。
「出来なくはないでしょうが、そもそもどうやってここまで来るのでしょう?」
 一つ目の遺跡はともかく、今いる遺跡に関しては、どうしても高ランクの魔物が出る危険地帯を超えてこなければならない。
 それを考えると、二つ目の遺跡を調査するには、大規模な調査隊を編成して来なければならないだろう。

 遺跡の素晴らしさにそのことをすっかり忘れていたフィロメナは、難しい顔になって首を左右に振った。
「…………下手をすれば、この場が荒らされて終わるでしょう」
「そうでしょうね。過去にもそういった状況になりかねないこともありましたから」
 さらりと告げられたその情報に、フィロメナは一瞬聞き逃しそうになりながらも、すぐにその意味に気付いて驚いた表情になった。
「以前にもこの場に来た者たちがいるのですか?」
 今いる遺跡に来るためには、少なくとも二つの通路を発見しなければならない。
 そうでない場合は、深い森を自力で歩いてこなければならないのだ。
 いかに大きな遺跡とはいえ、魔の森自体が広大なので、その場にあると知っていないとここまでくるのは不可能に近いだろう。

 そう考えてのフィロメナの驚きだったが、メリヤージュはあっさりと頷いた。
「勿論ですよ。そもそもここに来るためのあの通路を作ったのは、ひとつ前の文明の者たちですから」
「そうなのですか」
「ええ。彼らはきちんと整備をした上で、この場が荒らされないように監視もしていました。お陰で当時のままの雰囲気を残すことが出来ているのですよ」
「なるほど」
 メリヤージュの説明に、フィロメナは深く頷いた。
 この場を荒らされたくないと思っているのは、フィロメナも同じである。

 そんなフィロメナに、メリヤージュが付け加えるように言った。
「貴方たちが個人的に数点、この場から小物を持っていくのは構いません。ですが、この場で調査をするならともかく、大規模な盗掘は止めてほしいですね」
「よくわかりました。お答えいただきありがとうございます」
「いいのですよ。私にとっても必要なことですから」
 丁寧に頭を下げたフィロメナに、メリヤージュは微笑みながらそう答えた。

 それ以上フィロメナからの質問がないとわかったメリヤージュは、再びシゲルに視線を向けながら言った。
「先ほどの話を聞いてあなたがどうするのかはわかりませんが、他の者たちは一筋縄ではいきませんから、その点はご注意ください」
「あー、はい。畏まりました」
 何となく既に自分がどう考えているかを見抜いたうえでの助言なのだろうなと思いつつ、シゲルはそう答えて頷いた。
「それでは、私から話したいことはここまでになります。――そろそろ戻らないと、日が暮れてしまいますよ」
 メリヤージュがそう言うのに合わせて、シゲルたちは空を見上げると、確かにそろそろ太陽が地面の下に隠れそうなほどに落ちていた。

 ミカエラとマリーナは、大精霊に会えたという衝撃で、いまだに完全復活からはほど遠い状態だった。
 そのため、これ以上に質問はないということで、シゲルたちは精霊樹の麓から立ち去ることにした。
 最後にシゲルがまた会うことは出来るかと問いかけると、メリヤージュからはいつでも来てくださいという答えがあった。
 それを聞いたミカエラが感激することになるのだが、あくまでもシゲルに対しての答えだったということに気付くのは、拠点に戻ってだいぶ落ち着いてからのことになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 翌日、午前中を個別に遺跡の調査の時間に当てたシゲルたちは、昼食時に集まったときに盛大にため息をついていた。
「何というか……あまりにも広大すぎて、どこから手を付けていいのかわからなくなるな」
 というのが、拠点に戻って来た時のフィロメナの感想だった。
 最後に戻って来たのがフィロメナで、他の者たちは、そのセリフを聞いて頷いていた。

 例えばマリーナであれば、神殿を既に一つ見つけていたのだが、これだけ大きな町ならば他にあってもおかしくはない。
 個別の神殿を調査するだけでは、メリヤージュが言うところの遥か昔の(超?)古代文明の実態を掴むことは不可能だ。
 それならば、まずは町全体を調査するのが先だろうということになる。
 だが、やはり目に入って来る物すべてが物珍しいものばかりなので、つい個別の調査もしたくなってくる。

 ミカエラに手伝ってもらいながら、昼食を運び終えたシゲルは、頷きながら言った。
「まずは何日ここに滞在するかを決めてから、きちんと計画を立てたほうが良いだろうね」
「確かにその通りね。このままだと、目先のものばかりに囚われて、全体を見逃してしまいそうよ」
「そうね。私もそれに賛成だわ。まずは今回の期限を決めましょう」
 シゲルの言葉に応えるように言ったマリーナに、ミカエラも頷きながらそう言った。

 まずは期限を決めるという方針には全員が賛成した。
 その上で話し合いをした結果、この日を含めて丸三日を調査する期間と決まった。
 食事には幾分余裕があるが、ぎりぎりまで粘るのはまずいだろうと判断からだった。
 そもそも、これだけ大きな遺跡の調査など予定していなかったので、あまりたくさんの食材は持ち込んでいなかった。
 もう少しだけいたいという意見も出たものの、結果として三日ということに落ち着いたのである。

 
 昼食休憩を終えたシゲルは、フィロメナたちと別れて拠点の周辺を調べていた。
 本当なら町全体を見て回りたかったのだが、それをするのには広すぎて、徒歩では無理だと悟ったのだ。
 丸一日調査が出来るようにと、シゲルは残りの二日の昼食はおにぎりでも作って持たせようと決意していた。

 それはともかくとして、シゲルはとある建物の前で、戸惑った様子で立ち止まっていた。
 その建物は、一階の前面のほとんどがガラスになっていて、室内がしっかりと見えるようになっている。
 その造りから、どう見てもシゲルの目には、個人の商店のように見えていた。
 そして、その推測を裏付けるように、ガラス越しには商品らしきものも置かれていた。
「こんなところで悩んでいても仕方ないから入ってみるか」
 そう呟いたシゲルは、店(仮)の入り口らしきところの前まで歩いた。

 そして、入り口の前に立ったシゲルは、予想外の出来事に思わずその場で立ち止まってしまった。
「…………いや、まんま自動ドアかよ」
 入り口を見た時からそうではないかと思っていたが、その予想は外れていなかったらしい。
 見事に見覚えのある動きをして開いたドアを見て、シゲルは感心するやら呆れるやら複雑な感情を抱いていた。
 ここまでシゲルが知っている文化と似通っているものを見つけてしまうと、どうしても先入観を持ってしまう。

 その先入観を振り払うように首を振ったシゲルは、店の中に入ってみた。
「うーん……。何の店だろう、ここは?」
 すでに店と決めつけてしまっているシゲルは、それに気づかないまま周囲を見回した。
 丁度コンビニくらいの広さの店内は、棚が置かれていて、商品らしきものが置かれている。
 ただし、コンビニとは違って、中央には棚が無く、その代わりに大きめの物が幾つか置かれている。

 棚の中には、いくつか見覚えのある物が置かれていた。
「あれって照明道具だよな。……ってことは、やっぱり魔道具屋かな? にしても、何に使うのかわからない物ばかりだな……」
 そう呟いたシゲルは、中央に置かれている大きな物に視線を向けた。
 中には箪笥のような物まである。
 シゲルは目についた箪笥の引き出しを開けてみた。
「あ、やっぱりアイテムボックス系の箪笥か」
 手を入れてみて、見た目よりもはるかに底があったので、シゲルはそう結論付けた。

 それよりも、シゲルにとっては、更に気にある物があった。
「ということは、やっぱりこれって乗り物系なんだろうな」
 タイヤのない自転車やバイクのような形をしている魔道具に目を向けたシゲルは、そっと触れてみた。
 勿論それだけでは動くことはない。
 ただし、もしその予想が当たっていれば、町での移動が楽になるだろうと、シゲルはその道具を店の外に引っ張り出すのであった。
どんな物を見つけたのかは次話で!
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