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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第2章 きっかけ

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(12)新たな発見

 フィロメナに促されて一緒に神殿の外に出たシゲルは、ふと疑問を口にした。
「それにしても、いくら結界に守られているからって、こんなにきれいに建物を維持できるのかな?」
「勿論、それだけでは無理だろうな」
 あっさりと帰って来た結論に、シゲルは疑問の視線をフィロメナへと向けた。
 それを見て少しだけ笑ったフィロメナは、さらに続けていった。
「別に難しく考える必要はないだろう? 特にシゲルであれば。何しろシゲルは、精霊が色々するところを、間近で見ているではないか」
「あっ。ああ、そういうこと」
 シゲルがもっている『精霊の宿屋』では、契約精霊たちが箱庭内に設置した建物を維持できるように働いている。
 それを考えれば、大精霊であるメリヤージュが同じことができないはずがなかった。
 ついでに、大精霊はほかの精霊たちを動かすことができるので、別に自分自身が建物の維持管理をする必要はない。

 また一つ建物の綺麗さの謎が解決したところで、シゲルとフィロメナは手近な建物に入った。
 神殿を囲うようにして立っている建物は、それぞれが特徴のある造りをしているわけではなく、ただの四角い建物に窓が幾つかついているという造りになっている。
 何のための建物なのかは、一つ一つ中を調べないと、外観からはわからない。
「うーん。これといって、特徴的なものがあるようには見えないなあ」
「うん? 何を言って……ああ、そうか。シゲルが、他の遺跡を知っているはずがないか」
 シゲルの言葉に不思議そうな顔をしたフィロメナだったが、途中で納得したように頷き始めた。

 その意味が分からずに、シゲルは首を傾げて聞いた。
「どういうこと?」
「そもそもこれまで見つかっている古代文明の遺跡は、大きな建物がひとつあったりするだけで、ここまで生活に密着したような場所はほとんどない」
「ああ、なるほど。資料的価値としては、ここは十分に見どころがあるということね」
「それもそうだが……ほら。これなんかは、典型的だ」
 フィロメナはそう言いながら、ちょうど調べていた部屋の天井を指した。

 シゲルは、フィロメナが指した物を見て、首を傾げた。
「あれって、蛍光灯……って、えっ!?」
 シゲルとしては、指摘されるまでごく当たり前に認識していたが、そもそもこの世界ではそんな物は存在しないはずだった。
 あるはずがない物が存在していることに、改めてシゲルは驚いた。
「そのケイコウトウとやらがなにかはわからないが、魔道具の照明の一種だな。残念ながらここにあるものは、天井と一体化しているので、持っていくことは出来ないようだが」
 意外に冷静に分析しているフィロメナを見て、シゲルは古代遺跡では既に見つかっている物だと理解できた。
 ちなみに、フィロメナの家にある照明も、こうした古代遺跡で見つけた物である。

 魔道具である以上は、魔力で動くのであって電力で動くわけではない。
 それでもどこか懐かしさを感じるような証明に、シゲルは目を細めながら改めてその照明を見た。
「うーん。この照明、点けることはできないのかな?」
「どうだろうな? 魔力が残っていれば点くだろうが、そもそもどうやって点けるのかもわからないことが多いからな」
 フィロメナが持っているような独立したタイプの魔道具であれば、研究が進んでいて魔力を補充しながら使い続けることもできる。
 だが、ここにあるような設置型の照明道具の場合、そもそもどこから魔力を補充するのかもわからない物が多い。
 少なくともこの部屋には、そうした魔力を補充するための物は見当たらない。

 フィロメナの台詞を聞いて、残念そうに部屋の中を見回したシゲルだったが、ふと気になる物を見つけた。
「――――えーと、まさか、これがスイッチになっているなんて……」
 それはないだろうなあと思いつつ、シゲルは見覚えのある形をしたスイッチ(?)をパチンと押してみた。
 すると、天井に付いている照明に、見事に灯りが点いた。
「……えっ?」
「シ、シゲル、今何をした!?」
「えっ、いや、何って、このスイッチを押しただけ――」
 シゲルはそう言いながら、今度は反対側にスイッチを押した。
 すると今度は、照明から灯りが消えた。

 シゲルにしてみれば慣れている操作であったが、フィロメナにとっては驚きだったようで、その気持ちを顔に表したままシゲルを見た。
「な、なぜつけ方を知っているんだ?」
「いや、なぜと言われても、似たようなものを知っているから?」
 世界が違っても文明が進めば似たようなことを考えるのかなと、シゲルはどうでもいいことを考える。
 技術の中心にあるのが電力か魔力かの違いだけで、もしかしたら古代文明はシゲルが知っている文明と同じような発展を遂げていたのかもしれない。
 この部屋にある照明は、シゲルにそう思わせるのには、十分すぎる代物だった。

 
 使い方を教わって何度か照明を点けたり消したりするフィロメナに、シゲルはあまり頻繁にやると劣化が激しくなるかもしれないと助言しておいた。
 もっとも、シゲルが知っている照明器具とは根本が違うので、その助言は間違っているかもしれない。
 そもそも、照明が点くための魔力がどこから来ているのかもわかっていないのだ。
「――――それにしても、この照明一つとってみても、ここは遺跡とは思えないな」
「そうだな。どちらかといえば、ここだけ古代文明が続いていると言われてもおかしくはないと思う」
 シゲルに同意するように、フィロメナも頷きながらそう言ってきた。
 たまたま使っている人がいないだけで、今すぐにこの遺跡(?)に移住しようと思えば、出来るかもしれない。
 照明が使えただけでそう判断するのは早計だが、そう思われても仕方ないほどに、この遺跡は新しさを感じさせた。

 灯りが点いたままの照明を見ながら、シゲルは思い付いたことを言った。
「不思議なのは、なんのために、ここの施設を維持しているのかってことかな?」
「ああ、やはりシゲルもそう考えたか。私もそれが不思議だったのだ」
 あるいは、周辺に結界を張っていると思われるメリヤージュに聞けば、答えが得られるかもしれないが、残念ながら今のところ姿を見せる気配はない。
 そもそも、以前シゲルの前に姿を見せたことが異例中の異例だったのだから、それも仕方のないことなのだが。

 
 あまり天井にある照明だけにこだわっても仕方ないと、シゲルとフィロメナは建物をしらみつぶしに調べ始めた。
 今回のようなことがあるのであれば、シゲルにも役に立てることがあるかもしれないと、フィロメナとは別行動である。
 といっても、今いる建物では、めぼしい物はなにも見つからなかった。
 新たな発見として敢えて上げるとすれば、シゲルとフィロメナを捜しに来たマリーナが、照明が点いていることに驚いたことくらいだった。
 結局この日は、遺跡に入った時間が遅かったこともあり、それくらいの収穫で夕食の準備に取り掛かるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 翌日、朝食を終えて片づけをフィロメナたちに任せた(彼女たちが自分たちがやると言った)シゲルは、一人で神殿を見ていた。
 シゲルには歴史的な価値など分からないが、メリヤージュの像をもう一度詳しく見てみたいと思ったのだ。
 なので、自分が新しい発見をするなんてことは、かけらも考えていなかった。
 だからこそ、神殿に入ったところで、ラグとシロがある場所に向かって飛んで行ったのを見て、驚いていた。
「ラグ、シロ。どうしたんだい?」
 慌てて急ぎ足程度で追いかけたシゲルは、昨日建物の中で見つけたスイッチと同じような物があるのを見つけた。

 そのスイッチは、壁にある装飾にちょうど隠れるような場所にあった。
「うーん……。まあ、いいか。押してみよう」
 昨日のことを考えれば、スイッチを押せば何かが起こる可能性が高いが、好奇心には勝てなかった。
 お陰で後からフィロメナに怒られることになるのだが、このときのシゲルはそんなことはまったく考えていなかった。
「――ポチッとな」
 誰も見ていないのをわかっていながら、わざとらしくスイッチを押したシゲルは、その直後に口をあんぐりと開けることになった。

 
 慌てた様子のシゲルがフィロメナたちの所にかけて来たのは、ちょうど朝食の片づけが終わったころだった。
「あら、シゲル? どうしたの?」
 シゲルの様子がおかしいことに真っ先に気付いたのは、神殿の近くにいたマリーナだった。
「し、神殿! スイッチ! ガーって!!」
「うん。全然意味が分からないわ」
 手を振り回しながら説明をするシゲルに、マリーナは苦笑した。
 といっても、神殿で何かが起こったことだけは分かった。

 フィロメナとミカエラも比較的傍にいたので、シゲルの様子にすぐに気付いて近寄って来た。
 その間に落ち着いたシゲルだったが、少し慌てすぎたと反省をしたのと、折角なので三人を驚かせようとその場で説明をするのは止めた。
 そして、神殿の中に入ったフィロメナたちは、昨日はなかったはずの空間が、壁の一角に現れているのを見つけて驚くことになる。
 ついでに、どういう状況で発見をしたのか説明をしたシゲルに、フィロメナの説教がさく裂するのもそのすぐ後のことであった。
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