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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第2章 きっかけ

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(10)味覚が同じ理由

 ミカエラとマリーナが来た翌日には、シゲルたちは再び遺跡の探索に向かっていた。
 そして、地下にある部屋で、食事の準備をしていたシゲルは、改めて三人の女性を見ていた。
 ミカエラを見て最初に目につくのは、やはりその長い耳であり、それがエルフであることを物語っている。
 その容姿も美形ぞろいと聞いていた通りに、はっきりと整っている。
 第一印象の通り元気な性格をしているミカエラの金髪は、肩口あたりで切られている。
 やはりエルフらしく背中に背負っている弓は、ここに来るまでの戦闘でわかった凄腕の使い手に相応しい造りになっている。

 それに対してマリーナは、まず目を引くのが、体型が目立たないように作られているはずの神官服でもはっきりと出ているその体つきだ。
 フィロメナも負けてはいないのだが、それでもやはり軍配はマリーナに上がるだろう。
 もっとも、あまりまじまじと見ていると、フィロメナから怖い視線を向けられるので(体験済み)、はっきりと確認したわけではない。
 その色気たっぷりの体型と柔和な印象を与えている緑目と相まって、優し気なお姉さんという印象を与えている。

 フィロメナも含めて、三人が三人とも美形であるがゆえに、シゲルにとっては並んで歩くのをためらわせるほどだ。
 もっとも、外で三人揃って一緒にいるのがフィロメナの家から森の中を歩いているだけなので、他人に見られるという経験は今まで一度もしていないのだが。
 それはともかく、そんな三人の美人と一緒に行動しているという現在の状況に、シゲルは人生の不思議をかみしめていた。

 
 そんなシゲルの様子に気付いたのか、フィロメナが若干ムッとした顔をした。
「シゲル……どこを見ている?」
 たまたま視線をマリーナに向けていたシゲルは、ドキリとしながらも冷静を装って答えた。
「どこって、この部屋全体?」
「ふーん」
 どこをどう見ても疑っていますという態度を取っているフィロメナに、シゲルは慌てて言葉を続けた。

「前に来たときも思ったけれど、この部屋は一体何のために存在するのかなって思ってね」
「それは……確かにそうだな」
 シゲルの誤魔化しのための言葉は、フィロメナの疑問にも繋がったのか、すぐに周囲を見回した。
 それを見て、シゲルは内心でホッとため息をついたが、フィロメナはそれには気付いていないようだった。
 マリーナ辺りはニヤニヤしながら見ていたので気付いているかもしれないが、シゲルは敢えてそれは無視した。

 それに、シゲルが今いる部屋について疑問に思っていたのは確かなので、敢えてその話題を続けることにした。
「祠と祠を繋ぐためにしても、わざわざ地下に作る必要があったのかというのも疑問だしね」
「それは確かにそうかもしれないけれど、古代遺跡は結構地下にもいろいろな物を残しているわよ?」
 続いてのシゲルの疑問に答えたのは、マリーナだった。
 シゲルが古代遺跡について詳しくないとわかっていて、補足の情報を付け足したのだ。

 マリーナの説明に、シゲルは腕を組んで首を傾げた。
「うーん。それって、長い年月の間に、風化とかに耐えられなくなって、地下のものが残ったってことじゃない?」
「いや、それであれば、地下にあるものも同じことが言えるのではないか?」
 シゲルの疑問に、フィロメナがそう言ってきた。
 シゲルも何となくのイメージだけで不思議に感じていただけなので、そう言われてしまえば反論できるだけの材料は持っていない。

 揃って首を傾げているシゲルたちに、唯一部屋の壁などを見ていたミカエラが近付いてきて言った。
「あまり考えても仕方ないんじゃない? この通り、推測できるような物は、ほとんど何も残っていないんだし」
「……それもそうだな」
 単純すぎるミカエラの答えに頷きつつ、フィロメナがシゲルを見た。
「ところで、まだ出来ないのか?」
 シゲルたちは、昼食を取るつもりでこの部屋で休憩を取っていたのだ。
 そのため、先ほどからシゲルは話をしながら目の前にある鍋を覗いたりしていた。
 ちなみに、火を使う以上一酸化炭素中毒その他が怖いので、きちんと前もって空気穴が存在していることを確認してから料理を開始している。

 お預けされている犬のような目で見てくるフィロメナを見て、シゲルは苦笑をした。
「もうちょっとだけ待って」
「シゲルの料理がおいしいのは確かだけれど、そうやって催促するところを見ると、完全に餌付けされている従魔の図よねー」
 そこはペットじゃなくて従魔なんだとどうでもいい感想を持ったシゲルに対して、フィロメナは顔を横にずらしながら言った。
「そこは一応自覚しているから、それ以上は言わないでくれ」
「あら、自覚しているんだ」
 少し驚いたような顔をしたミカエラに向かって、フィロメナは「まあな」と頷いた。

 あっさりと肯定したフィロメナに驚かなかったのは、マリーナだ。
「確かに、フィロメナがハマるのもわかるけれどね」
「それは私も認める」
 マリーナの言葉に、ミカエラも頷いた。

 そんな三人の様子に、当の本人であるシゲルは首を傾げた。
「自分の料理なんて、そこまで美味しいと言えるほどのものではないと思うけれどね。三人が三人ともそう言うとなると、何かあるのかと疑ってしまうなあ」
「ああ、それなら思い当たりはあるわ」
 すぐにそう返してきたマリーナに、全員の視線が集まった。
「あら? シゲルはともかく、フィーやミカエラもわからないの?」
「……わからないな」
「……私も」

 揃って首を傾げているフィロメナとミカエラを見て苦笑しながら、マリーナは続けて言った。
「エルフのミカエラはともかく、私とフィーは、それこそ子供と言っていい年から一緒に行動して来たでしょう?」
「ああ、そうだな」
「そこから八年以上も一緒に行動して来たんだもの。味覚が似通ったところで、驚くことはないんじゃないかしら? ミカエラだってほとんど同じ期間行動して来たのだしね」
 フィロメナたちは、才能があると認められたそのときから、ほとんど一緒に行動していた。
 それを考えれば、マリーナの言葉にはそれなりの説得力がある。

 納得した顔で頷くフィロメナとミカエラに対して、シゲルは別のところで驚いていた。
「いや、ちょっと待って。八年以上って、一体いつから一緒に行動して来たの?」
 どう見てもフィロメナとマリーナは、二十歳を超えているようには見えない。
 ミカエラは(人族から見れば)見た目詐欺のエルフなので除外だ。

 シゲルの言葉で顔を見合わせたフィロメナとマリーナは、ほぼ同時に答えた。
「「十才の時だな(よ)」」
「十才って……」
 流石に予想外だったシゲルは、思わず絶句してしまった。
 それに、確かに十才の時から一緒にいたなら、味覚が似通うこともあり得るかとも考えていた。
 多少強引な気もしなくもないが、元から趣味趣向が似ていれば、考えられなくもない。

 十才に反応しているシゲルに、フィロメナが苦笑しながら言った。
「この世界では、そのくらいから働き始めるのも珍しくないからな。そこまで驚くようなことでもない」
 どうということもないという顔で告げられた事実に、シゲルは改めて元の世界との差異を感じていた。
 もっとも、シゲルがそう感じるのは、日本という国に生まれ育ったからであって、国が変われば同じような状況に置かれている子供たちも少なくはないのだが。
「あー、そうか。まあ、それなら納得できる、かな? それはともかく、そろそろできたよ」
 これ以上、この話を続けても仕方ないのと、ちょうどタイミングよく昼食が出来上がったので、シゲルは話題を変えるつもりでそう付け加えた。
 案の定、ほかの三人もこの話題を続けるつもりはなかったのか、昼食ができたという言葉に強く反応するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 昼食を終えて少し経ってからシゲルたちは、奥に向かって移動し始めた。
 そして、反対側の祠から外に出てすぐに、ミカエラが呆れたような顔になっていた。
「確かにこれは、フィーとシゲルだけだと、無理ね」
 いきなり魔物が「こんにちは」してくるような距離ではないが、それでも目視できる位置に、高ランクの魔物が闊歩している。
 フィロメナが無理だと判断して、すぐに引き返してきた理由が良くわかる。

 そして、ミカエラに続いてマリーナがさらに奥の方を見ながら言った。
「そうね。それに、本当に本格的な遺跡がありそうね」
「やはりそう見えるか」
 マリーナの言葉に、フィロメナも頷いていた。
「えっ? どこ?」
 だが、残念ながらシゲルの目には、そんな遺跡らしきものはまったく見えない。
「ほら。あっちの方だ」
 フィロメナがそう言って遠くの方を指したが、それでもシゲルにはただの森が続いているようにしか見えなかった。

 どれだけ目が良いんだよと思いつつ、シゲルが首を振るのを見て、フィロメナたちは苦笑をしていた。
 どうやらこの場においては、シゲルのほうが異端であるらしい。
 それを理解したシゲルは、それ以上確認をすることは諦めて、先に進むように進言するのであった。
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