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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第2章 きっかけ

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(8)告白

 シゲルとフィロメナが祠から戻ってから半月が経っていた。
 その間は、いつも通りの生活に戻っており、特に大きな変化は起こっていなかった。
 いくつか上げるとすれば、まずは精霊たちのランクが上がったことだ。
 初期精霊の三体とサクラは中級精霊のFランク、スイは下級精霊のBランクにそれぞれ変わっている。
 勿論、それに伴って、行動範囲や時間も広がっている。

 あとは、『精霊の宿屋』を訪ねて来る精霊が増えていて、精霊石が以前よりも楽に稼げるようになっている。
 といっても、取得した精霊石のほとんどは、『精霊の宿屋』を開発(開拓?)するための精霊力となっている。
 そのお陰で、『精霊の宿屋』の環境は、ちょっとした自然の庭という感じになっている。
 ただし、何か特別なものを追加で置いたというわけではなく、今まで芝だったり、雑草を置いていたところをタロの町周辺の草原と同じ環境にしただけである。
 草原といっても、様々な自然物があるために、置き換えるだけでもかなりの精霊力を使っている。
 もっとも、全部を使ったわけではないので、今度はまた何か新しい物を設置しようかと頭を悩ませている最中である。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そんな感じの『精霊の宿屋』を自室で確認していたシゲルだったが、いきなり聞いたことがない声が聞こえて来て慌ててベッドから起き上がった。
「フィー、来たわよー!!」
 どう考えても家の玄関から聞こえて来たその声は、女性のものだった。
 誰であるかはわからなかったシゲルだが、なぜそんな声が聞こえて来たのか思い当たりがあったシゲルは、すぐにベッドから起き上がってリビングへと向かった。
 以前探索できなかった祠の先を行くためのメンバーが来たのだ。

 
 シゲルがリビングに入ったときには、既にフィロメナが二人の女性と楽しそうに話をしていた。
 一人は軽装で、背中に弓を背負っておいて、もう一人は、シスター服のようなものを着ている。
 誰がどう見ても、三人揃って久しぶりに親友と会えて嬉しいという感情が出ている。
 流石に割って入るのは、空気が読めていないと思われると考えたシゲルは、しばらく隅っこで待機をしながら様子を見ていた。

「久しぶりね、フィー。元気にしていた?」
「ああ、勿論だ。ミカエラとマリーナはどうだ?」
「勿論、元気よ!」
「ありがとう。私も特に変わりはないわ。ところで、あちらの方は紹介してくれないのかしら?」
 一通りの挨拶を終えたところで、ミカエラと呼ばれた女性がフィロメナに何かを話そうとしたところで、もう一人の女性がシゲルを見てそう言ってきた。

 いきなり三人の視線が自分に向いて、シゲルは思わずドキリとした。
 何しろミカエラとマリーナは、フィロメナと並び立っていても遜色ないくらいの美貌の持ち主だったのだ。
 もし人外の美しさを持つメリヤージュと会って耐性ができていなければ、呆然と立ち尽くしていたことだろう。

 もっとも、多少の余裕があるからと言って、自分から話を切り出せるほどではない。
 シゲルは、仲立ちをしてもらえるように、視線をフィロメナへと向けた。
 その意味に気付いたのか、フィロメナは頷きながらミカエラとマリーナを見て言った。
「ああ。彼はシゲル。少し前からこの家で同居をしている――」
 その説明を聞いたシゲルは、思わず天を仰いでしまった。
 ああ、フィロメナさん、その言い方は少しまずいのではないですか、と。

 案の上、フィロメナがすべて言い終わるよりも先に、ミカエラとマリーナの絶叫寸前の声が家の中に響き渡った。
「「どうきょーーーーーー!?」」
 その二人の様子を見て、流石に自分の失敗に気付いたのか、フィロメナが慌てた様子で続けた。
「いや、ちょっと待て。同居といっても一緒に住んでいるだけだ!!」
 それを同居と言うのですよフィロメナさんと、胸中で突っ込みを入れるシゲル。
 勿論、火に油を注ぐことになるので、言葉にはせずに、胸の中に閉まっておくのは忘れない。

 ミカエラとマリーナの視線が、せわしなく自分とシゲルの間を往復するのを見て、フィロメナはまた言い方に失敗したと悟った。
 といっても、これまでこんな経験をしたことがないフィロメナは、焦るばかりでまともな言い訳を思い付くことができなかった。
「――――だ、だから誤解だ! 私とシゲルの間で、特別なことは何もない! うん、何もないぞ!?」
 誰がどう見ても、何かあるとしか見えないようなフィロメナの態度に、シゲルはついに頭を抱え、ミカエラとマリーナはニヤニヤとしだした。

 慌てまくっているフィロメナを助けるように、マリーナが口を挟んだ。
「フィロメナ、少し落ち着きなさい。まずは、彼に私たちを紹介してもらってもいいかしら?」
 その言葉で多少は落ち着けたのか、フィロメナはシゲルにミカエラとマリーナを紹介した。
 ちなみに、ミカエラはシゲルが見る初エルフで、しっかりと長い耳があることは確認できていた。
 マリーナは、見た目通りフツ教の神官だ。

 
 一応の紹介が終わったところで、ミカエラがなにやらニヤニヤとした笑みを浮かべてフィロメナを見た。
 それを見た瞬間、シゲルは内心で、これは駄目だ、と思った。
 その顔はどう見ても、揶揄う気満々にしか見えない。

 そして、案の定、ミカエラはにやけ顔のままフィロメナに痛恨の一撃を放った。
「それで? フィーとシゲルの関係は? どこまで進んでいるの?」
 シゲルからすれば、お前は小学生かと突っ込みたくなるようなことを言ってきたミカエラだったが、フィロメナは顔を真っ赤にしていた。
「だ、だから! さっきも言っただろう!? 私とシゲルは特に、何もなく!」
「へー、何もないのに、一緒に暮らしているんだ? へー」
 勿論、ミカエラは、フィロメナの言い訳をまったく信じることなく、ますます揶揄うような顔をしている。
 実際のところはともかく、フィロメナの態度は誰がどう見ても恋する乙女そのものであり、何を言っても無駄だということはわかる。

 ちなみに、シゲルはフィロメナがこんな状態になるところは初めて見た。
 一緒に生活していたといっても、所謂色恋ハプニング的なことが起こることが無かったので、敢えて関係を進展させようとは思わなかったのだ。
 シゲルは鈍感主人公ではないつもりなので、一応フィロメナの気持ちには気がついていた。
 ただ、恋愛経験が少なそうなフィロメナに下手に突っ込んで、今の関係を終わらせたくないとも考えていたので、最初からの関係を続けていたというのもある。
 美人でスタイルもいいフィロメナとの生活を手放したくないというシゲルのヘタレな部分が出ていたというわけだ。

 ミカエラから散々に揶揄われて顔を赤くしているフィロメナを見ながら、シゲルは可愛いなあと暢気なことを考えていた。
 自分に火の粉が降りかかってこない限りは、こんなものである。
 ついでに、フィロメナが本当に嫌がっているのであれば止めていただろうが、そうは見えなかったという事もある。

 そんなシゲルに、マリーナが不意をついて聞いて来た。
「ところで、フィロメナはこんな感じだけれど、シゲルさんはフィロメナのことをどう思っているのかしら?」
「え? それは勿論、好きだけれど?」
 ここで下手に狼狽えたりしたら、ますます揶揄われるだけだと考えたシゲルは、はっきりきっぱりとそう答えた。
「あらあら、まあまあ」
 その答えに、質問をしたマリーナは、面白そうに口元に手を当てて、目を細めた。

 その一方で、少しの間沈黙していたフィロメナは、更に顔を赤くしていた。
「シ、シゲル!? と、ととと、突然、何を、言うのか!?」
 半ば立ち上がりながら手をパタパタさせているフィロメナを見ながらシゲルは、普段のキリッとした姿もいいけれど、こんなのも良いなあと、割とどうでもいいことを考えていた。
 そして、ミカエラとマリーナから期待するような視線を向けられていることに気付いたシゲルは、真面目な顔でフィロメナを見ながら答えた。
「いやだって、嫌いだったらこんなに長く一緒にいないし。フィロメナは嫌だった?」
「べべ、別に、嫌、というわけ、では……」
 シゲルの問いかけに、フィロメナは身を縮めるようにして椅子に座り直した。

 顔を赤くしたままチラチラとシゲルを見ているフィロメナに、ここぞとばかりにマリーナがさらに問いかけた。
「それで? シゲルははっきりと言ってくれたけれど、フィロメナの答えは?」
「うぐっ!?」
 マリーナの容赦ない突っ込みに、フィロメナは言葉を詰まらせた。
「わわ、私も……!」
「私も?」
「わ、私も、シ、シゲルが……す、好き……だ」
 最後の方はフィロメナではありえないほどの小声だったが、はっきりとそう言った。
 それを聞いたシゲルは、内心でガッツポーズを取っていた。
 勿論、こんなところでそれを見せれば、ミカエラとマリーナに燃料を投下することになるので、グッとこらえておく。

「あー、やれやれ。久しぶりに親友に会えたと思ったら、まさか、こんな場面に出くわすことになるとはねえ」
「まあまあ、良いじゃないの。折角なんだから、祝ってあげましょう」
 ミカエラがやってられないという顔をしているのに対して、マリーナは微笑ましいものを見たという顔をしている。
 それを見ていたシゲルは、フィロメナの様子を気にしつつも、なるほどいろんな意味でいい(・・)友人なんだなと思うのであった。
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