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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第1章 準備編

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(20)精霊石の使い道

 『精霊の宿屋』の収入(精霊石)は順調に増えている。
 といっても、このまま何もいなければ、頭打ちになるとこはわかり切っているので、収入があり次第環境を変えるようにしている。
 今の『精霊の宿屋』は、小屋がある反対側、全体で見れば北西側に花畑を追加で作ってある。
 花が好きな精霊が多いためかはわからないが、訪れる精霊の数も増えている。
 まだ収入という結果では現れていないが、シゲルは大いに期待している。
 『精霊の宿屋』の収入である精霊石は、一体の精霊が六日いるとひとつ貯まるようになっている――ように見える。
 実際には二体の精霊が三日、あるいは三体の精霊が二日いれば一つ来ている可能性もある。
 シゲルは、実際に精霊が精霊石を置いていくところを見ているわけではないので、どうなっているかはわからない。

 とにかく、肝心かなめの収入は、六日ごとに来ているわけではなく不定期に来ている。
 この一週間で来た精霊石の数は、トータルすると七個で、前回取って置いた予備を合わせると八個になる。
 花畑を設置するの使った精霊石は一つ分で、まだ七個の余裕がある。
 シゲルは、そのうちの二個をフィロメナに渡すつもりでいた。
 シゲルの頭の中では、前回渡した一個が最初の一週間の宿代で、今回渡そうとしている二個は、一週間分の宿代とタロの町に向かう前にもらった生活費の分だと計算している。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「……だから、もらい過ぎだと思うぞ?」
 フィロメナは、精霊石二つを差し出してきたシゲルを見て、多少渋い顔をしながらも受け取っていた。
「いや、そうかも知れないけれどね。世話になりっぱなしというのも気が引けるから」
「まあ、それも分かるから貰っておくが……」
 そう返しながらも、フィロメナはまだ同じ顔をしている。

 そのフィロメナの顔を見て、シゲルは笑いながら言った。
「まあ、フィロメナがもらい過ぎで気が引けるという気持ちも分かるから、なるべく多すぎないように気を付けるよ。基本的には一週間に一個かな?」
「それくらいなら、まあ、良いとは思うが……。美味しいものを食べさせてもらっているから、別にいいのだがな」
「それは駄目。親しき中にも礼儀あり、だからね」
「むう……そうか」
 自動翻訳かどうかはわからないが、シゲルの言い回しはしっかりと伝わったのか、フィロメナは不満そうな顔をしつつも頷いた。

「ところで、ひとつ聞きたかったんだけれど、これってギルドに卸したり魔石屋に売ったり出来るのかな?」
 これ、と精霊石を指しながら言ったシゲルに、フィロメナは首を左右に振った。
「出来なくはないが、というか、むしろ歓迎されるだろうが、やめておいたほうが良いな」
「あ、やっぱり?」
「うむ。もし、貴族などに知られれば、間違いなく囲われることになる。下手をすれば一生幽閉暮らしだ」
「うわー」
 フィロメナの言葉に、シゲルは予想通りとはいえ、顔をひきつらせた。

 魔物から採れる魔石と精霊が気紛れにくれるという精霊石は、明確な区別はされていない。
 だが、日常的に狩られている魔物から採れる魔石とは明確に質が違うため、あまり頻繁にシゲルが精霊石を売ると目を付けられることになるのは間違いない。
 魔物の中でもネームドと言われる存在や進化種を狩れば、同じような魔石を入手することができるが、そんなに頻繁に出てくるわけではない。
 むしろ、最初のうちは、町を守るためにも、どこで狩ったのかと根掘り葉掘り聞かれることになるだろう。
 結果として、今フィロメナが言ったようなことになりかねない。
 ちなみに、フィロメナが初見で精霊石だと断言できたのは、『精霊の宿屋』のことを多少なりとも聞いていたからである。

 精霊石を一つ二つ売る程度であれば、大した注目はされないかもしれないが、それでは生活の足しにすることは難しい。
「精霊石を売るのは、最後に手段に取って置いたほうがいいってことか」
「まあ、それが無難だな」
 シゲルの呟きに、フィロメナがそう言って頷いた。
 もしお金に困ったとしても、フィロメナに売ればいいだけなので、町に売るくらいなら最初からそうしたほうがいいのだ。

 今回は、渡した二つとは別に、自分で使うために一つ分をフィロメナに渡して、現金化してもらっている。
 フィロメナの家にいる限りは必要ないともいえるが、好きなときに好きな物を遠慮なく買えるというのは、とても精神的に楽になれる。
 冒険者ギルドの依頼で手に入れた報酬もあるが、それはほとんどが町に滞在していたときに使った消費及び消耗品として消えている。

 残っている精霊石を使ってどうしようかと考えているシゲルに、フィロメナが落ち着かない様子で話しかけて来た。
「……ところで、今日の昼はなんだ?」
 どうみても餌を持っているヒナのような顔をしているフィロメナを見て、シゲルは思いっきり吹き出してしまった。
「いや、ごめん。まだ何も決めていないけれど……何が良い?」
「シゲルが作る物なら、なんでも」
 返されて一番困る答えをもらったシゲルは、精霊石のことから思考を切り替えて、お昼ご飯のことを考え始めるのであった。

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 フィロメナに催促をされた考えたお昼のメニューは、シゲルが久しぶりに食べたいからとハンバーグとスープだった。
 勿論、ご飯はしっかりと炊いてある。
 目を輝かせながらハンバーグを口にするフィロメナを見ながら、シゲルは可愛いなあと考えていた。
 そのときの顔を見て、フィロメナが不思議そうな顔をしてきたため、シゲルは思ったままの感想を口にした。
 そして、その感想を聞いたフィロメナが顔を赤くしたりしていた。

 美人なフィロメナの可愛い一面を見て満足したシゲルは、片づけを終えた後に、自室に入って『精霊の宿屋』の調整を行うことにした。
 まずは、余っている精霊石を、全て環境を整えるための精霊力に変えた。
 そして、南東側に湧き水で出来ている小さな池を作った。
 勿論、水の属性を持った精霊が来てくれればいいなと考えての事だ。
 さらに、地属性の精霊を狙って、小屋の脇に一メートルほどの大きさの岩石をいくつか置いておいた。
 効果があるかは不明だが、おまじない程度に役に立てばいいと考えてのである。

 それらの作業を終えたシゲルは、余っている精霊力を使って、西側から芝生を普通の野草などに変えていった。
 花畑を作ったときに気付いたのだが、人工的な芝生のままで置いておくよりも、そうしたものに変えたほうが、効率がいいとわかったのだ。
 それはおそらく、管理する面で精霊が楽になるのと、やはり自然の物を精霊が好んでいるのだろうとシゲルは考えている。
 設置した物以外の半分ほどを芝生から置き換えた時点で、自由に使える精霊力はなくなった。
 残してある分は、管理維持に必要な分で、足りなくなれば残してある精霊石を使う予定でいる。

 
 そんなことをした後に、メッセージログに重要なメッセージが残されていた。
 『精霊の宿屋』では、常に画面を開いているわけではないので、メッセージはログとして残されるようになっている。
 その中に重要な物も流れてくるので、チェックは欠かせない。

 今回流れて来た重要なメッセージは、『精霊の宿屋』の拡張機能が解放されたというものだった。
「拡張機能? ……って箱庭を大きくできるのか」
 内容を確認していたシゲルは、思わずそう呟いてしまった。
 現在は、グラウンド程度の大きさだが、この拡張機能を使うとその倍の大きさにできるということだ。
 ただし、大きさを拡張するためには、当然のように精霊石が要求され、その数は全部で二十個分だった。

 その数が多いのか少ないのかは微妙なところだ。
 今の精霊石の収入からすれば多いともいえるし、広さが倍になるということを考えれば、少ないともいえなくはない。
「いずれは頭打ちになることを考えれば、さっさと拡張したほうが良いのは確かだよなあ……」
 シゲルはそう呟きながら、今度どうするべきかを考えた。

 収入になる精霊石のことを考えれば、広げたほうがいいのはわかっている。
 だからといって、ただ単に広さを広げても、それに見合うだけの精霊が来るかどうかは別である。
 いずれは拡張に使った精霊石を回収できるだろうが、効率が良いかどうかと考えれば話は別だ。
「――――うーん。まあ、そんなこと考えても仕方ないか」
 別に極端な効率厨というわけではないシゲルは、あっさりと精霊石を貯めて拡張することを決めた。
 そのまえに、残っている芝生をすべて変えてしまうつもりでいるが、それ以外は拡張のために残しておくことにするのである。
これで第一章は終わりです。
続いて第二章になります。
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