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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第1章 準備編

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(14)精霊の進化と魔法訓練

 翌朝、シゲルはフィロメナに仕舞ってもらっていた卵を出してもらって、玉子焼きを作った。
 本来なら朝から卵かけごはんと行きたかったのだが、流石に鮮度が分からなかったので自重した。
 できることなら卵を使った例の調味料を作りたいが、何度か卵を買って鮮度の様子を見てからにする。
 もっとも、卵の鮮度なんて見極められる目を持っているかどうかと問われれば微妙なところと答えるしかないので、どこかで冒険するしかなくなるだろう。
 あるいは、店番の人に、いつ生まれた卵かをきちんと確認できたものを使って作るという手もあると考えている。
 昨日の買い物では、そこまで確認する余裕はなかったのだ。
 それに、そもそも買った物の全てをフィロメナが金銭的負担している。
 何となく食事に関することは、何を言っても買ってくれそうな雰囲気はあるが、シゲルはそこまでおんぶに抱っこになるのは、遠慮したいと考えているのである。

 マヨネーズ(例の調味料)ができれば、もっと料理の幅が広がるんだろうなあとか考えつつ、シゲルは『精霊の宿屋』の確認もしていた。
 といっても、相変わらず精霊力に変わりはないので、出来ることは少ない。
 いっそのこと今ある精霊力は全て環境改善のために使おうかなんてことも考えたが、少なくとも料理をしている最中にすることではないと諦めた。
 それに、今日の午前中は、フィロメナから魔法の基礎について教わることになっている。
 なんだかんだでまとまった時間が取れるのが午後からになるので、その辺りでゆっくり考えるつもりでいた。

 というわけで、朝食の料理中にしたのは、あくまでも状況の確認だけである。
 それでも一つだけ大きな変化があった。
「おー。精霊が進化しているな」
 精霊たちの状態を確認したシゲルは、それぞれの精霊が初期精霊から下級精霊に進化していることに気が付いた。
 契約精霊の進化には条件があるのだが、どうやら今回の場合は、特定の作業を五時間以上行うということが条件だったらしい。

 ラグは箱庭の管理、リグはシゲルの護衛、シロは探索とそれぞれ五時間以上行って条件が満たされていた。
 もっとも、三体とも元が初期精霊だったので、ようやくスタートラインに立ったというところだとシゲルは考えている。
 というのも、『精霊の宿屋』に訪ねてきている精霊たちは、全てが下級精霊となっているためだ。
 初期精霊は、この箱庭世界の為に用意された精霊か、あるいは何か特殊な条件を満たしたときに出てくると考えていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「――なあ、シゲル。これは一体、なんだ? きちんと皿に乗っている以上、食べ物だとは思うが……」
 レティティアがそう言いながら示しているのは、シゲルが苦心しながらなんとかそれっぽい形にした玉子焼きだった。
 玉子焼き専用のフライパンなんて便利道具はないので、普通の丸い物で作ったために、多少いびつな形になっている。
「あ~、それは玉子焼きっていって、卵を焼いたものになるんだけれど……こっちにはないんだ」
「卵を……? いや、どうだろう? 私が知らないだけかもしれないが、少なくとも今まで見て来た町ではこういったものは無かったな」
「うーん。そうなのか」
 あるいは各家庭で作っているだけで、わざわざ売り物になっていないだけかもしれない。
 それでも勇者として各地を旅しているフィロメナが一度も見たことが無いというのであれば、本当にないのかもしれない。
 そもそも元の世界でも、西欧ではなかったはずなので、この世界になくてもおかしくはないかとシゲルは考えていた。

 昨日から使い出した箸を使って、苦心しながら玉子焼きを切り分けて、なんとか口に入れたフィロメナは、目を丸くして驚いていた。
 それを見ていたシゲルは、少し笑いながら聞いた。
「味はどうかな?」
「美味い!」
 ごくごく簡単で分かり易い答えに、シゲルはそれはよかったと頷いた。

 
 そのままなし崩し的に朝食が始まったが、きちんと「いただきます」の挨拶はしている。
 幸せそうな顔で料理を口にしているフィロメナを見ていると、シゲルとしても嬉しくなってくる。
 つい、ニヤケた顔でフィロメナを見てしまったシゲルだったが、それを見咎められてしまった。
「なんだ?」
「あー、いや、なんでもない」
 一度はそう言ったシゲルだったが、フィロメナに首を傾げられてしまったので、きちんと説明することにした。
「いや、随分と幸せそうに食べてくれるんだなあと思ってね」
「なっ!? いや、だって、シゲルが作った料理が美味いから……!」
 ワタワタとした顔でそう言ってきたフィロメナに、シゲルはつい笑ってしまった。

 シゲルに笑われたフィロメナは、わずかに頬を赤くしてシゲルをにらんだ。
「むう。なぜかシゲルには調子をくるわされてばかりいるな」
「別に狙ってやっているわけじゃないんだけどね」
「そんなことはわかっている。……だからこそやりづらいんじゃないか」
 後半の言葉は、非常に小さな音だったので、シゲルの耳にまで届かなかった。

 首を傾げているシゲルに、フィロメナは首を左右に振って返した。
「なんでもない。それよりも、片付けが終わったら、昨日言った通りに魔法を教え始めるからな?」
「よしっ! やった!」
 思わずそう言ってしまったシゲルに、フィロメナはつい苦笑をしてしまった。
 シゲルは昨日もまったく同じ反応をしていたので、そこまで喜ぶことかと考えたのだ。

 そもそもこの世界では、生活魔法はごく当たり前に使われていて、むしろ魔法を使えない者のほうが少ない。
 というよりも、いない。
 勿論、実践的な魔法使いレベルになると数が減るのだが、普段の火をつける程度の魔法は、誰でも使えるのだ。
 そんな世界なので、シゲルの反応は、フィロメナにとっては非常に新鮮に見えるのだ。

 浮かれたままのシゲルに、フィロメナは敢えて釘を刺すように言った。
「昨日も言ったと思うが、シゲルは検査の結果は高いレベルだが、実践レベルで使えるようになるまでは時間がかかると思うからな?」
「それはわかっているよ。でも、やっぱり、今まで使えなかったものが使えるようになると、嬉しいじゃない?」
 シゲルがそう答えると、フィロメナは小首を傾げた。
「……そんなものか?」
「そんなものなの。とにかく、魔力でもなんでも使えるようになることが嬉しいんだよ」
 シゲルはそう念を押したが、フィロメナは相変わらずよくわからないという顔をしていた。
 この辺りの自分の感覚は、実際に魔法のない世界から来た者でないとわから無いのかもしれないなあと、シゲルはフィロメナの顔を見て、そんなことを考えていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 朝食の片づけを終えたあとは、フィロメナが宣言した通りに、シゲルに対する魔法の訓練が始まった。
 まずは、定番通りの魔力を感じ取ることが最初の課題だ。
 これができなければ、魔法など使うことはできない。
 普通であれば子供でもできるようなことなので、フィロメナはここで躓くとは考えていなかった。
 だが、残念ながらシゲルはいきなりここで躓いていた。
 考えてみればそれもそのはずで、この世界の子供たちは、それこそ生まれた前から母親が魔法を使うところを体験している。
 さすがに胎児の時から魔力の流れを認識しているかはわかっていないが、それくらいに当たり前にある感覚を、他の世界で生まれたシゲルは持っていないのだ。

 さてどうするべきかと悩むフィロメナだったが、彼女が答えを出す前に動いた者がいた。
 シゲルの護衛についていたリグである。
「――――うん? リグ? どうかした?」
 それまで黙ってシゲルの肩に乗っていたリグが、いきなりシゲルの顔の前に飛んできて、右手を差し出してきた。
 意味が分からずに首を傾げていたシゲルに、リグはシゲルの右手の上に乗った。
「ああ、自分も右手を差し出せばいいの?」
 シゲルがそう問いかけると、リグは嬉しそうにコクコクと頷いた。

 何をするつもりなんだろうかと考えつつ右手を上げたシゲルに、リグはその右手にひょいと触れた。
 普段はシゲルの肩に乗っているリグは、意識しなければ重さや熱を感じることはない。
 ところが、このときはリグから熱を感じた。
 一瞬、肌に直接触れているせいかと考えたシゲルだったが、すぐにそれは違うと打ち消した。
 そんなことの為に、わざわざリグがこんな行動を取るはずがない。

 そう考えたシゲルだったが、すぐのその熱が何であるのか実感することができた。
 そして、自分の中にも同じようなものが存在しているということもだ。
 すこし驚いた顔でシゲルがリグを見ると、彼女(?)は嬉しそうな顔で右手から離れて飛び回っていた。
 シゲルが魔力を実感できたとわかったのだろう。

 シゲルとリグのやり取りを見ていたフィロメナも、そのことが分かったのか少し驚いた顔になっていた。
「……うむ。どうやらきちんと感じ取ることができたようだな」
「うん。そうみたい。リグに感謝だね」
 シゲルがそう答えると、フィロメナもそうだなと笑い返してきた。

 魔力を感じ取れるようになれば、次は体内で自由に魔力を移動させたり、全身に巡らせたりするための訓練になる。
 これはさすがに時間がかかるので、やり方をある程度教えたフィロメナは、自室に戻って行った。
 魔力循環に関しては変なことをしても、危ないことが起こるわけではないので、目を離しても大丈夫なのだ。
 リグもこればかりはシゲルの努力次第だと言わんばかりに、先ほどのようになにかを伝えようとすることはなかったのである。
マヨネーズ無双!
……は、まだ始まりません。
実際に作り始めるのも、まだ先になります。
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