ティーンルーティーントゥラブル〜ラッカセイトゥラブル〜(2/19)PDFで表示縦書き表示RDF


ティーンルーティーントゥラブル〜ラッカセイトゥラブル〜
作:一筆





 ――えーと、誰?
 彼女のように脳内の引き出しをぶちまけても、ぼくには彼女の名前が浮かばなかった。酷い話である。
「おはようございます……」
 最初から最後まで掠れた声で答えた。すると彼女は「えっ? 何?」と言いながら近付いてきた。……いや、関わらないでくれ。
「いや……おはようございます」
 一歩踏み込めば額がぶつかりそうな距離に近付いた彼女の耳元に申した。彼女は「あ、うん。おはよう」と言い、にっこり微笑を深くした。
「えーと……そのう……」
「うーんとさぁ、もしかして黒木くん、ワタシの名前覚えてくれてない?」
 彼女は可笑しそうに訊いた。ぼくは否定しようとしたが出来なかった。どうも、嘘をつけそうになかった。
「……すいません。覚えてません」
 正直に漏らした。彼女は頬笑む。
「やっぱり。黒木くん、クラスの人に対して無関心そうだったから」
 幸せそうに細まった目がぼくを捉えている。気恥ずかしい。
「ワタシは崇城楓子そうじょうかえでこ。宜しくね」
 崇城さんはぺこっと頭を下げた。ぼくも慌てて頭を下げる。
「宜しく、お願いします……」
「敬語じゃなくていいよ」
 彼女の笑い声が耳に木魂する。不快ではないが快くもない。相殺されている。
「……あのう、今日は早いですね」
 こういうときにどう会話をすればいいのかわからなかったので、自分の疑問をぶつけてみた。
「んーとね、なんていうかな……起きる時間が、昨日までとは三〇分位早くなったんだよ」
 説明しづらそうに崇城さんははにかむ。
「ところで、黒木くんって部活って何か入ってる? 仮入部期間、そろそろ終わるよね? どこか見たりした?」
 話しを逸らす目的であったとしても、さらに会話を続けてくれたのは……嬉しいというわけでもないけど。
「ぼくですか? ぼくは文芸部です」
「へー。小説とか書くの? すごいなぁ!」
 彼女の言葉は社交辞令とかの類だと思うのだが、ぼくには判断しかねた。












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