ウェポンマスター
遊森謡子様企画の『武器っちょ企画』参加作品です。
以下、企画の概要です。
○短編であること
○ジャンル『ファンタジー』
○テーマ『マニアックな武器 or 武器のマニアックな使い方』
この作品は自作【俺達のRPG物語(+)】の登場人物を起用しています。
異界召喚される者の条件。
その一、現世サルクウェタルの裏側世界、地球の者であるということ。
その二、魔法陣との相互作用に適応した者であるということ。
その三、ウェポンマスターであるということ。
この三つの条件を満たし者、地球より言語レクチャーを不要とし、現世に召喚されたし。
「て、ぁあ! なんで俺が、そのウェポンマスターってやつなんだよ!」
精悍な顔つきのその少年は、魔法陣の中央で大声を出していた。
「知らん」
召喚魔法を統治しているかの如き、黒いローブに身を包んだ男は、いとも簡単に少年の質問を打ち切る。
「第一、ウェポンマスターって何だよ!? 何の説明も無いまま「はい、そうですか」って訳にゃあ、いかねぇだろうがよ!」
「汝、名は?」
ローブの男は、少年の質問が聞こえなかったかのように、静かに名を尋ねてくる。
「こっちの質問が先だろうが!」
「汝、名は?」
ローブの男は全く動じず、同じ質問を繰り返す。
「神崎 正志って、テメェ聞いてんのかよ!」
正志は名乗りと同時に、ローブの男に走り寄ると、素手のままローブの男の喉元に爪を立てた。
「神崎正志? あのキラヘル宿敵の?」
ローブの男は動じない。
「へぇ。キラヘルを知ってんだ」
正志の目付きが変わった。
「その能力、気に入った。キラヘルの次で悪いのだが、このサルクウェタルの魔王も倒してくれまいか?」
ローブの男はヒラリと身をかわすと、正志の前にひざまづいた。
「ヘッ! 知ったこっちゃねぇや。と、言いたいところだが、それを断っちまったら、この非現実な状況を打破できねぇんだろ? しゃぁねぇ、やったるわ。その代わり、この世界の戦力見せやがれ! 魔王にゃ魔法が効かねぇなんてぬかしやがるんだろうから、兵士でも戦士でも何でもいいから戦わせろや! それで、そっちの戦力を推し量ってやろうじゃねぇか!」
正志が言うが否や、正志の周りに槍や剣を持った甲冑姿の兵士が数人現れた。
「へ! そっちも初めっから、そのつもりだったってか? しかも俺は無手、そりゃあ、卑怯ってもんじゃねぇのかよ!!」
そう言うと、正志は一人の兵士にタックルすると、その手に持っていた三角形の盾を奪いさった。
「よぅし、これで俺の勝ち決定だな」
言ったが途端、正志は消え去り、一人の兵士が冑と鎧の隙間から血を流して倒れ込んだ。と思うと、別の兵士が吹っ飛び倒れ込む。
「盾っつうのはな。防具ってイメージが強ぇえんだけど、そうじゃねぇんだよ。この盾、三角形になってっだろ? しかも、その辺や角は薄く加工されている。どうしてか解るか? これはな、殺傷武具なんだよ!」
声は聞こえど姿は見えず、兵士は次々と殺られていく。それに見兼ねたローブの男は、「そこまで!!」と叫んでいた。
「神崎正志。その能力、本物のウェポンマスターじゃ。装備を与える。その装備を持って、魔王を打ち倒してくれぬか? 魔王を倒せば、汝は地球に強制送還されるであろう」
正志の前に並べられた剣や槍・斧、甲冑や盾を見て、「じゃ、これでいいわ」と革製の盾と木の棒を持ち上げた。
「重装備は身体能力を鈍らせる。それに、武器が木の棒って見りゃあ、魔王も油断するだろうよ」
ニヤッと笑う正志を見て、ローブの男はその不安を隠せずにいた。
対魔王戦、魔王は自分の前に立ちはだかるただの民間人ぽい装備の少年に失笑した。
「こ、これがウェポンマスターたる勇者? その装備で? 我に勝てるとでも思うておるのか!?」
その言葉と共に正志は姿を消すと、魔王の身体に小さな傷が無数に築き上げられていく。
「おのれ、ちょこまかと」
反撃を繰り出す魔王であったが、正志の機敏な動きにはついていけず、喉元、両胸、頭部に小さな穴を開けられ絶命した。
「木の棒を侮るんじゃねぇよ! 先を尖らせれば、そいつは槍をも凌ぐ殺傷武器だ。使う度に鋭利になり、テメェのようなウスノロにゃぁ、うってつけの武器なんだよ! わかったか阿呆が!!」
その言葉を最後に、正志の身体はスゥっと薄くなり、魔王の前から姿を消したのであった。
「なぁ、頼? お前、異世界転生とか信じる?」
真顔で尋ねる正志に「お前、阿呆じゃねぇの」と、頼は言葉を返した。
「だよなぁ……」
そう言うと、正志は手にした木の棒を、ポイッと雑木林の中へ投げ捨てたのであった。
約一年以上前の作品ですが、俺達のRPG物語(+)も宜しくお願い致します。