SF奇兵隊2 伝法赤い筏(8/27)PDFで表示縦書き表示RDF


SF奇兵隊2 伝法赤い筏
作:隆伊



星と花


 竜馬暗殺の報にも、東夷は悲しみを面に出さなかった。ただ、逝ったか、とのみ呟き東の空を仰ぎ見た。長くはあるまいと思っていた。彼の人の剛毅豪胆なふるまいをよく知れば。ただ、自分の方が先に逝くと思っていた。見上げた空にひときわまばゆい星のあった。それが、竜馬のように見えた。俺がカタをつけるべきじゃない。と、目をそらした。まだ、言い訳をしている。
 既に、海援隊と薩摩藩が暗殺者捜しに躍起になっている。彼等も針路を東にとり、京都を目指す。


 晴蔵はその少女を見るたびに、不憫に思う。その子には幼い時の記憶がない。血のつながらない香枝を母と信じ、行方の知れない小一郎を父と信じている。何故、そう思うようになったかは知らぬ。そのいきさつは解らぬ。おそらく、葛藤の末起こった劇的な精神の変化だろう。過去の残虐な事件の記憶を消し、新たなる人格を得た。
「狸が食いたいな」その子が言う。晴蔵は笑いながら答える。
「先月撃ったゆえ、しばらくは近寄らぬ。干し肉ならあるが」
「それでいい」無邪気に受け答えているが、以前のあどけなさが消えている。大人びてきている。この年頃の少女は刻々と変化する。花がひらいてゆくように。だが、この子の場合は悲しい花だ。行く手に血と戦いの匂いがする。
「何故、引っ越した?」またその話か、と晴蔵が苦渋の笑みを浮かべる。もし、昔の小屋を引っ越していなければ、小一郎は容易に香枝達を見つける事ができたかも知れない。彼の小屋が、香枝達と小一郎を結ぶたった一つの接点だった。だが、あそこも幕軍に踏み込まれる寸前だった。すんでに逃れ難を避けたのだった。
「しかたのないことじゃ」それよりも・・・・・・、逆に問い返した。
「小一郎がまだ生きていると・・・・・・?」信じておるのか。
「勿論だ」千鶴は少し憤った顔を見せた。
 晴蔵は話題を替えた。
「その髪は誰に切ってもらった?」西洋人の男性のような髪型を言った。散切り頭というやつだ。近頃では、日本人も真似する者が多い。
「おっ母だ」男に見えるように、と。頼んだのは彼女だが。
 誉めようがなく晴蔵は再び話題を替える。
「一口に井戸と言っても、大井戸はじめ色々な種類があるが・・・・・・」
「もう聞き飽いた」茶碗の話は。












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