SF奇兵隊2 伝法赤い筏(5/27)PDFで表示縦書き表示RDF


SF奇兵隊2 伝法赤い筏
作:隆伊



写真


 龍馬は三岡八郎に会いに来た。
「松平春嶽老に会ってきた」
 久しぶりの客を三岡は歓迎した。
「老いたな」素直な感想を述べた。松平春嶽である。
「そうか・・・・・・」酒を勧めながら三岡が答える。
「やはり公武合体を願っておるが、難しかろう。何しろ長州があの有様じゃき。しかも、井伊亡き後も変わらず幕軍は強い。井伊存命中に米国より武器供与を受けた故にじゃ。しかも、昨今はフランス国の軍事介入を許す流れもある」
「ほう・・・・・・」三岡はつい最近まで春嶽により謹慎処分にあったゆえ世情に疎い。
「列強がアジアを植民地とする際の常套手段じゃ。うまい具合に米国は国内で戦争が起こり今は日本どころではなくなったからよかったようなものの」
「だが、取って代わったように仏国が出てきた。ナポレオン三世じゃな」
「幕府側も阿呆じゃ。米が手を退くなら仏とは、安易。小栗案じゃ。もし奴が中央に居ればその話、矢が飛ぶ勢いで進むじゃろう」
「小栗はまだ小倉にあるのか?」
「ほうじゃき、まだましじゃ。じゃが奴が小倉城におる故、九州諸藩は身動きが取れない。しかも海峡を睨み下関に侵攻しようとその機会を虎視眈々と狙っておる」
「暗い話ばかりじゃのう、萩はどうなっておる」そう聞かれた竜馬の顔が一層曇る。
「それよ。幕末、既にわしはそう呼んじょるが差し障りあるまい? 萩におる豊永こそ、幕末最大の奸物じゃ。己が出世の為に罪なき民を虐殺し奇兵であったと偽り、井伊亡き後は、長州征討軍指令官じゃき。西南雄藩のなかに獅子身中の虫が二匹おる。一匹は小倉城に、もう一匹は萩城にデンと腰を据えておる」
「なるほどの・・・・・・土佐、薩摩は?」三岡は連合諸藩の名を出した。
「動けぬ、今はまだ」
「何故か?」
「両藩ともに、討幕にあたり朝意という大義名分がいる。今のところ京の帝は傍観しとうきに」
「なるほどのう・・・・・・ところで水戸はどうじゃ。風の噂に水戸藩受難と聞いた」
「それよ、井伊暗殺後、幕府の水戸に対する仕打ち、とても親藩とは思えぬ惨さじゃ。次期将軍と目されていた水戸藩ゆかりの一橋慶喜の永蟄居始め、名立たる要人の謹慎、登城差控え、尊皇派藩士の切腹、死罪、獄門、並びに、次々押し付けられる無理難題。水戸藩士らの無念、今では天を突かんばかり。残念でならんのは、一橋慶喜が将軍職に就いておれば、仏国の内政介入も許さんかったと思われること・・・・・・。彼ならば徳川家存続よりも、日本国全体を考えることが出来たじゃろうと俺は思うちょる・・・・・・。ところでその水戸に、実は一月ほど前行ってきた。何人かと話をしたが、中に一人、人物がおった。大物じゃと思うが物静かな男で、この龍馬の物差しを以ってしても計りきれん」
「ほう、どんな男で名は?」
「匡家としかわからぬ。隠居同然の暮らしをし、滅多と人に会うことは無いそうじゃが、不思議とわしは歓迎されたようじゃ。一晩酒を酌み交わしたが、後から思い返したら、語ったのはわしばかりで奴は笑みを浮かべて聞くばかりじゃった。この龍馬が手玉に取られて腹の中をすっかり見られた。あんな経験は初めてじゃ。語るに実に心地よかった。今、おまんと話しとるようにの・・・・・・」
 その夜、龍馬と三岡は八時間にも及び語りあい、翌朝龍馬は発った。立ち去り際、龍馬は懐から出した物を三岡に手渡した。自分の写真である。照れくさそうに、
「貰うてくれ」と言った。三岡は蓬髪を束ね彼方を見て立つ写真の中の龍馬を見、不吉な予感がした。












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