餓え縦書き表示RDF


餓え
作:馬路キレ子


腹が減った。
もう三週間も何も食ってない。

腹が減った。
最後に胃に入れたのは、泥水だけだ。

腹が減った。
こんな暗い夜道に食べ物は落ちてないか。

腹が減った。
犬ころも美味そうだ。猫も美味そうだ。

腹が減った。
だが、腹が減りすぎて捕まえられやしねえ。

腹が減った。
誰か俺を満腹にしてくれ、腹が減った。

腹が減った。
うらぶれた路地の裏から、ぶくぶく太ったボウズが出てきた。

腹が減った。
幸せそうに買い食いしているボウズの手には、てりやきバーガーとポテトとジュース。

腹が減った。
てりやきバーガー落ちろ。ポテトも落ちろ。

腹が減った。
器用にチューチュー吸ってるジュースも落ちろ。

腹が減った。
おいしそうにむしゃむしゃしやがって。ちくしょう。

腹が減った。
周りに誰も居ないのを確認して、噛み付いた。

腹が減った。
痛がってうるさい。首をへし折って黙らせた。

腹が減った。
赤色のジュースが美味い。肉は焼いて食べれる。

腹が減った。
まだ食べたい。

腹が減った。
ちぇっ、カバンはプラスチックか。これは美味しくない。

腹が減った。
あらかた食べ終わった。ちとぶかぶかだが、服はもらっとこう。

腹が減った。
血まみれの俺を血相変えて捕まえる警官。いてえよ、なにしやがる。

腹が減った。
がみがみうるせえ。俺はイラッとして、そいつを食おうとした。


バキューン!


うぇっぷ、満腹だ。
こんなマズイもの、腹に入れるなよ。いてえし、重たいじゃねえか。


人間なんでも究極を突き詰めると、理性よりも本能が先に出るもんだ。食うにしたって、死ぬにしたってしかり。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう