ファイル338:江戸川コナンの苦悩の1日『1』
ある日の米花町
この日、歩美は親友である東尾マリアの家に遊びに来ていた。
彼女達は屋根裏部屋に今いるのであるが、そこで歩美は異様な物を発見した。
季節外れも甚だしい雛人形である。
歩美
「ねぇマリアちゃん、どうして今雛人形が出してあるの?」
マリア
「歩美ちゃん、無闇に触ったらアカンで。それはな、呪いの雛人形なんや。」
歩美
「呪い?」
マリア
「そや、その雛人形は下手に触ると呪いの封印が解けてまうんや。まぁ、それだけやあらへんけどな。ホンマは早う処分したいんやけど、強力な力を持つ物やから捨てるのも難しいんや。」
歩美
「ヘェ・・・」
ちょっと胡散臭いなぁと感じながら、歩美はもう1つ気になる点を見つけた。
歩美
「どうしてお雛様が2つあるの?」
そう、なぜかお雛様が2つで、お内裏様がない。
マリア
「それはようわからへんのやけど、ただお雛様にも注意が必要なんや。」
歩美
「フ〜ン・・・」
歩美はお雛様を取ってみる。
別段、普通の雛人形だ。
歩美
「呪いの雛人形ねぇ〜・・・」
しかし、いじりまわしているうちに首が外れた。
ボキッ!!
歩美
「!!!(・・・あら?)」
マリア
「あと、特にありえへん事やけど、絶対に首をもいだらアカンで。もしそうしてしまうと、封印が解けてまう。ウチら女には呪いはかからへんけど、この辺で一番の美少年に・・・恐るべき呪いがかかるからな!!!」
キラ〜ン!!
と、そこでマリアは歩美が持っているお雛様の首がもげているのに気づいた。
ジィィ・・・
マリア
「もう!!歩美ちゃんのドアホ〜ッ!!!」
歩美
「ゴメ〜ン!!!」
呪い、発動!!?
同時刻・阿笠邸
コナン
「ったく・・・なんでオレが・・・」
コナンが愚痴る。
刃
「文句言わないの。コナン君も阿笠博士にお世話になっているでしょ。」
ユリ
「そうよ。」
そう言うのは刃とユリだ。
今日は哀が出かけていて、コナンはヒマしていた。
そこで阿笠博士に会いに来たら、生憎博士は外出中。
そして、家の掃除をしていた剣野刃と金田一ユリの2人に付き合わされるハメになったのだ。
なんか悪い事の予兆じゃないといいのだが・・・
刃
「まぁ、私としては町内で一番の美少年と名高いコナン君と一緒に掃除できて、うれしいけど。」
ユリ
「私も刃ちゃんと同じ事を考えていたわ。本当にコナン君かっこいいもん。」
誉めているのか、煽てているのか・・・
と、その時・・・
カッ!!!
コナン
「ん、なんだ?今の効果?」
ユリ
「さぁ?作者のミスでしょ。」
コナンの言葉にそっけなくユリが言った。
コナン
「じゃあとりあえず、ボクは2階の窓拭いてくるね。」
キラキラキラキラ・・・
刃・ユリ
「うん、お願いね・・・え!!?」
2階へ行くコナンを見送ろうとした2人の目が点になる。
コナンがさっきとは全く違う格好をしていた。
その格好とは、頭に白いフリル付きのカチューシャを乗せ、エプロンドレスを着て、そして足には黒い小さな靴。
日本語でいうなら女中さんの服。
そして、今の流行の言葉で言うなら、それは秋葉原で有名なメイド服であった。
一方のコナンは、そんな事を全く気にしていないらしく、2階へ上がっていった。
刃
「ユリちゃん・・・今、何か恐ろしいものが・・・」
ユリ
「ええ・・・ちょっと疲れているのかしら?」
刃も悪夢を見たような表情である。
2人は恐る恐る2階へ上がっていく。
さっき見た光景が夢であってほしいと祈りながら・・・
そして、2人が見たのは・・・?
そこには、コナンがメイド服で窓拭きをしている姿があった。
その姿を、影から見る2人。
ユリ
「どう思う、刃ちゃん。」
刃
「どうって、そりゃ・・・」
一瞬言葉に詰まる刃。
刃
「コナン君の中で何かが目覚めたとしか・・・」
ユリ
「まぁ、似合っているから問題ないといえば問題ないんだけど・・・」
確かに違和感はない。
しかし、コナンが自分から女装するなんて、あまり考えたくない2人である。
そこで、意を決して刃がコナンの本心を聞いてみる事にした。
刃
「アタシが聞いてみるから、ユリは下がってて。」
ユリ
「わかったわ。けど、私的にはアリだとだけ言っておいて。私は受け止められるから・・・」
そう言うと、ユリは1階へ降りていった。
サッと後ろに近づく刃。
刃
「コナン君?」
コナン
「何、刃ちゃん?」
手を止めコナンは振り返った。
ここでさりげなく核心をつく。
刃
「コナン君は・・・自分が人と違うな〜とか思った事ある?例えば、その・・・自分の趣味とか。」
コナンは人差し指を顎に当て考える。
コナン
「う〜ん、そうだねー。ボクはいたって普通だと思うけど。例え人と違った趣味でも、自分が好きなら胸を張ってやるべきだと思うよ。」
コナンの台詞に、刃の心は暗くなる。
刃
「(すでにそんな・・・固い決意だなんて・・・!!)」
そんな彼女をよそに、コナンは続ける。
コナン
「自分のやっている事に自信を持って、堂々と生きるのが良いとボクは思うけど。刃ちゃんはどう?」
逆に質問される刃。
刃
「そ・・・そうね・・・その通りだと思うわ。」
刃は決めた、本音を言っておこうと。
刃
「まぁ、アタシもユリも、多分哀ちゃん達も全然平気だから・・・その・・・コナン君がそういう服を着るのが趣味でも・・・その・・・」
コナン
「ハ?」
ようやく彼は刃の言っている事に気づいた。
どうやら彼女は、自分が着ている服の事を言っているようだ。
コナンは自分の体を見回し、さらに体を1回転させてみる。
見慣れぬ服、そしてフワッと広がるスカートに、ようやく異変に気づいた。
コナン
「ぬあああ!!な!!なんだ!!これは〜っ!!!」
恥ずかしさのあまり、コナンの目には涙が。
そして、刃の方に振り向く。
コナン
「刃ちゃん!ど・・・どうしてボクにメイド服を!?ヒドいよぉ〜・・・」
どうやらコナンは、自分がメイド服を着ているのは刃がやった事だと勘違いしたらしい。
まあ以前の事を考えると否定しきれないのだが、もちろん今回は冤罪なので、刃もすぐに言い返した。
刃
「ア、アタシじゃないわよ!!アタシじゃ!!」
と、そこへ下へ降りたユリと共に、歩美とマリアが駆け込んで来た。
歩美
「うーん、遅かったようね・・・スゴ・・・」
マリア
「そやね。わー・・・」
予想以上の結果に唖然とする2人。
コナン
「歩美ちゃん!!それにマリアちゃんも!!」
そして、マリア達はコナンに事の説明をしだした。
コナン
「ハ?雛人形の呪い?」
マリア
「うん。昔々女装が好きな人形師がおったんや。そやけどその人形師は外見にコンプレックスを持っとったんや。それでどんどんジレンマが大きくなっていったんや。」
『ああ、どうしてワシはこんな体に生まれたんだ。』
マリア
「その人形師は腕がよくて、お殿様や家臣の家に雛人形を作って納めとったんやけど、ついにジレンマが抑えきれなくなったのか・・・」
『あ!気づいたらお内裏様に12単衣を!!』
マリア
「それがキモイっちゅうウワサが城内で話題沸騰。運悪くちょうどその人形師の横領事件とかも発覚してもうて、その人形師は斬首されてもうたんや。そやけど、最後の死に際になってもその人形師はなぁ・・・」
『ああ・・・一度でいいから女の服を着たかった・・・!!』
マリア
「ほんで・・・その強い思いが、それ以来美少年を女装させる呪いになってもうたんや。」
コナン
「あんまり同情できる話じゃないね。特に横領って・・・」
コナンの率直な感想である。
マリア
「そやけど、そういう呪いに限って力が強いんや。」
それはコナン自身わかっていた。
なぜなら、なぜかこの服を脱ごうとしても脱げないからだ。
コナン
「でもなんでよりにもよってメイド服なんだ?」
マリア
「そりゃたぶん、人形師の趣味やわ。」
そっけなく言うマリア。
マリア
「たぶん、コナン君に似合うと思ったんやろ。」
すると、それにうなずく人物が1人いた。
ユリだ。
ユリ
「確かにメガネっ娘のメイドさんはいいセンスしてるわね。さしずめ、チビエマってトコね。」
コナン
「(そんな事に感心してほしくないよ・・・)」
心の隅でボソッとつぶやくコナンであった。
マリア
「でも見惚れているばかりでは困るわ。呪いのかけられた日、つまり今日中に呪いを解かへんと・・・」
コナン
「解かないと・・・!?」
イヤな予感・・・
マリア
「一生女装が趣味の、男の子になってまうで。」
コナンの顔が蒼白になる。
コナン
「微妙な呪いだね。」
マリア
「そやな。」
と、ここでコナンは一番聞きたい事を聞いてみる。
コナン
「で、呪いを解く方法はあるの?この服脱げなくて・・・」
コナンに言われ、マリアも思い出した。
マリア
「ああ、それはな・・・その呪いのかかった人間、つまりコナン君の恋人を倒す事や。」
コナン
「・・・え!!?(それって、つまり・・・)」
歩美
「じゃあ、コナン君が哀ちゃんを倒すって事?」
マリア
「ま、そういうこっちゃな。」
歩美が言い、その言葉に、マリアが大きくうなずく。
コ哀のカップリングは既に公認なのだ。
コナンの心境は最悪であった。
何が悲しゅうてメイド服を着せられ、そして大好きな哀を倒さねばならないのだ。
刃
「それって、コナン君にとってはどっちに転んでもイヤな結果よね?」
刃が、ズバリ真実を衝く。
マリア
「たぶん、職人の嫉妬か逆恨みか・・・それともイヤがらせか・・・やな。」
コナン
「(イヤがらせだ・・・絶対に!!)」
心の中でののしるコナン。
まぁ確かに、コナンにとっては最悪のイヤがらせである。
ユリ
「まぁ倒すって言ってもさぁ、適当に戦って哀ちゃんにワザと負けてもらえばいいんじゃない?」
ユリが気の利いた事を言う。
しかし、悪い事は重なる。
マリア
「それなんやけど・・・実は、条件があるんや。」
コナン
「条件?」
また一体どんな条件がついているのか、コナンは不安になる。
マリア
「その対決を、お祭りのある所でやらなアカンのや。」
コナン
「何それ!?」
訳がわからない。
コナンには全く理解できない。
その考えに答えたのは刃である。
刃
「大衆に醜態を見せるって魂胆じゃないかな?」
大いにあり得る事だ。
歩美
「今日お祭りやってる所は・・・あ、確か帝丹小学校の運動場で、町内会の振興祭りがある。」
歩美が思い出して言った。
コナン
「ええ!!」
町内のお祭りとなると、つまり知人も一杯来そうだ。
コナン
「(そ、そんな・・・人がいっぱい集まるような場所に、この格好で・・・!?)」
考えるだけで悪夢である。
そして、考えすぎたのかコナンは倒れてしまった。
ドサッ・・・
刃・ユリ・歩美・マリア
「コ、コナン君!!」
4人が近づいて声を掛けるが、コナンは完全に失神している。
彼をマリアと歩美が急いでベットへ運んだ。
残った刃とユリは善後策を考える。
ユリ
「やっぱ、刺激が強すぎたのかなぁ?」
刃
「とにかく、このままじゃマズいわ。コナン君の将来に関わるわ。とにかく哀ちゃんに適当に対決してもらって、ワザと負けてもらうしかないわね。」
ユリ
「けど哀ちゃん、どこへ行ってるのかしら?私行き先聞いてないし・・・」
刃
「歩美ちゃんとマリアちゃんにも聞いてみよう。とにかく急がないと・・・」
ユリ
「そうね。」
彼女達は行動に移った。
その哀はというと・・・
公園にいた。
哀
「ハァァァァ・・・」
深いため息をつく哀。
何やら、悩み事があるらしい。
「あれ?哀ちゃんじゃないですか。」
哀
「え!?」
声をした方に振り向くと、そこには・・・
哀
「あ、瑛祐さん。」
そこにいたのは、本堂瑛祐であった。
瑛祐
「どうしたんです。そんな思いつめた顔しちゃって。何か悩みでもあるのですか?」
そう、哀には今悩みがあった。
それは、四六時中コナンの顔が頭に浮かんでしまう事である。
事に、夢の中には毎日のように登場するのだ。
もちろん、彼女自身彼とは相思相愛だと思っているし、周りのみんなも2人の仲を認めている。
これ以上求めるものはないはずなのに、なぜ彼の事ばかりに頭が働くのだろうか。
それが彼女の悩みであった。
それを彼にしゃべろうか迷ったが、何かしらアドバイスをもらえるかもしれないし、それに彼なら下手に口外する事もないだろう。
というワケで、彼に全て話してみた。
瑛祐
「(この子は本当にコナン君・・・イヤ、新一君の事を想っているんだな。)」
瑛祐はすぐに、哀の悩みが恋愛感情にある事がわかった。
もちろん、今までも2人の仲が深かった事は彼も知っている。
しかし、哀自身の気持ちが今までのものだけでは事足りなくなっているのだろう。
ただ彼自身ストレートに言うより、彼女自身が気づいた方が良いと思った。
瑛祐
「人が一生にできる事はそう多くないですから、悩むより行動する方が良いと思いますよ。それでも何を悩んでいるのかさえわからない時は、目を閉じて考えてみると良いでしょう。自分の心に素直になれば、なすべき事は見えてくるはずです。」
哀
「・・・(自分の心に・・・素直になれば・・・)」
しばらく哀は考え込む。
そして・・・ |