ファイル374:消えない傷跡(トラウマ)『中編』
刃
「ねぇ、リリス?あなたが初めて帝丹小学校に転校して来た時、アタシが話した話覚えてる?」
ユリ
「ええ、もちろん覚えてるわよ。あなたが私に打ち明けてくれた事・・・あなたが帝丹小学校に転校する前寝屋川小学校にいた頃、その『紫の瞳』を理由にイジメられていた話をね・・・」
果たして、刃の消えない傷跡とは何なのだろうか・・・?
回想・・・
寝屋川小学校
『今日から皆さんとお勉強する事になった、剣野刃さんです。みんな、仲良くしてあげてくださいね。』
『はーい・・・』
休み時間になると、刃の周りに自然と男子が集まっていた。
『なぁ、剣野さんって生まれはどこなん?』
刃『お、大阪だよ・・・』
『ほな、オレらと同じで関西弁しゃべれるんやな?』
刃『でも、長い事外国にいたから、そんなにうまくは・・・』
『心配あらへんて!オレらが教えたるさかいな!』
刃『あ、ありがとう・・・』
クラスのほとんどの男子陣は、刃のそのポニーテールの髪型と、『紫の瞳』がカワイイと思っていた。
そのため、男子陣に囲まれている刃が、女子陣は面白くなかったのだ。
人気があるだけなら、まだいい方だろう。
ところが刃には、一部の女子陣の彼氏達までもが惹かれていったのだ。
その事で、余計に刃は女子陣に恨まれていたのだった。
そしてある日を境に、刃へのイジメが始まった・・・
刃の机に落書きをしたり、下駄箱の靴の中に画鋲を入れたり・・・
そしてまたある時には、トイレに連れて行ってイジメるという事までされていた。
日を増すごとに、イジメはエスカレートしていった。
しかし、刃は何も言わなかった。
どうせ、後数ヶ月もすれば平次のつてで別の学校に転校できる。
それまでは我慢しようと思っていたのだ。
しかしそんな刃の頑張りを、イジメていた女子陣は容赦なく踏みにじったのだ・・・
ある時、刃は校舎裏に呼び出され、女子陣にイジメられていた。
手足を縛り上げられた状態で、刃は殴る蹴るの暴行を受けていた。
刃『ケホッ、ケホッ!もう止めて!どうして、こんな事をするの!?』
『アンタがアタシ達の彼氏達まで奪ったからや!!』
刃『そんな・・・アタシ、知らないよ!』
『アンタにその気がなくても、男子らを誘ってるんや!その『紫の瞳』でな!!』
刃『そんなの・・・言いがかりだよ・・・』
『そやったら、もう学校に来れなくしてやる!!』
女子の1人が、竹刀を振り上げた。
刃『もう・・・止めて・・・』
『何しとるんや、アンタら!』
『ヤバッ!!学級委員の江坂と、副委員の八木、ほんで風紀の大沢や!!』
『逃げるで!!』
刃をいじめていた女子連中は、足早に逃げ去っていった。
バサッ・・・
江坂繭美『さぁ、もう大丈夫やで。』
繭美達は、刃の手足の戒めを解いた。
刃『ありがとう・・・ねぇ、どうしてあなた達はここまでしてくれるの?ただのクラスメイトなのに・・・』
八木幹彦『それはやな・・・ボクらが浪花の少年探偵団だからや!』
刃『浪花の・・・少年探偵団・・・?』
大沢健太『そや!ワイらは学級の平和を守ると同時に、大阪の平和も守ってるんやで!』
刃『ヘェ・・・スゴいなぁ・・・』
繭美『なぁ、刃ちゃん。ウチらの仲間にならへんか?』
刃『アタシが・・・あなた達の仲間に?』
幹彦『そや。ボクらの仲間になったら、イジメられる事かてきっとなくなるで!』
刃『でも・・・いいの?アタシ、こんな憎たらしい瞳をしてるのに・・・』
健太『全然憎たらしくなんかあらへんよ!』
繭美『ウチは好きやで?アンタのその瞳がな。』
幹彦『まるで、スミレみたいでキレイやんか!』
刃『あ・・・ありがとう・・・』
こうして、刃は浪花の少年探偵団の仲間入りをした。
転校するまでに数多くの事件を解決し、イジメていた女子陣からも一目置かれるようになっていった。
そしてもう、彼女をイジメる者は1人としていなくなった。
幸せな気分のまま、刃は帝丹小学校に転校していったのだ・・・
回想終了
ユリ
「そうだったわね、そんな過去があったんだよね、リアンには・・・」
刃
「うん・・・」
ユリ
「そんなに嬉しい事があったのに、どうして私にあんな話をしたのかな?」
刃
「だって、あんな思いをしたのは初めてだったから・・・」
ユリ
「小学生の女の子も、今はマセてきてるって事じゃないの?」
刃
「そうなのかなぁ・・・」
ユリ
「そういう事だと思うよ。第一、この学校に来てから、そんなイジメは1度も受けていないんでしょう?」
刃
「うん。」
ユリ
「だったら、もっと自分に自信を持たなきゃ。」
刃
「そうだね。じゃあ、今日はアタシもう早退するよ。」
ユリ
「そう。気をつけて帰ってね。」
刃
「うん。」
ユリが教室に戻って来ると、コナン達が刃の状態を聞いてきた。
コナン
「刃ちゃんは大丈夫だった?」
ユリ
「ええ、たぶん疲れてたんでしょうね。今日はもう早退するって言って、さっき出ていったわ。」
哀
「よかった、何ともなくて。」
ユリ
「うーん・・・」
歩美
「どうしたの、ユリちゃん?」
ユリ
「私今日学校に来る時、刃ちゃんと来たんだけど・・・何か、後ろから変な人が私達の事見てたんだよねぇ・・・」
真希
「ヤダ、怖い。」
風月
「そういうのって、ストーカーっていうのよね?」
暁
「ああ、女性に男性がつきまとう悪質な犯罪・・・近年では、真逆のケースもあるってニュースでやってるけどね・・・」
ユリ
「フーン、そうなんだ・・・(待てよ?もしあの男が、私かリアンの事を狙っていたんだとしたら・・・)ああっ!!」
ユリの顔が真っ青になった。
ユリ
「ヤ、ヤバい!!!」
そう叫ぶが早いか、ユリは走り出していた。
刃はゆっくりと路上を歩いていた。
その表情はどこか明るい。
刃
「フゥ・・・リリスに話して良かった。何か、頭の中がスッキリした感じだ・・・もう、あの夢を見なくなればいいんだけどなぁ・・・」
そんな事を思っている彼女が、気づくハズもなかった。
自分の横に、怪しい車が近づいてきている事など・・・
そして、次の瞬間・・・
ガバッ!!
刃
「キャアッ!?」
刃は体をつかまれ、横付けしてきた車の中に引きずり込まれた。
刃
「な、何す・・・うぐっ!!」
刃を引きずり込んだその何者かは、彼女の口をハンカチで塞いだ。
刃
「う〜っ、う〜っ!!」
刃はしばらくもがいていたが、やがて目がトロンとなっていった。
刃
「うぅ・・・(ね、眠・・・い・・・)」
刃はそのまま気を失った。
『ん?何だこの時計みたいな物は?邪魔だな。』
バキッ。
ポイッ!
ブォォォォォ・・・ |