今日こそはと、私、四番隊第三席伊江村八十千和は立ち上がった。
ここのところ毎日十一番隊の連中 皆さんが詰所で大騒ぎをされている。
騒ぎの中心は、(あのハゲとアフロ)斑目一角三席と綾瀬川弓親五席である。
詰所の障子を開けると、
そこにいた酒瓶片手に裸踊りを披露している連中もそれを囃し立てている声もそいつ等を肴に飲んで(いる奴等も)おられた十一番隊の皆さんが
ぴたりと
動きを止めこちらを(ガン見)みつめられた。
変な緊張感が漂ったが、一瞬で融解し、私が、
「失礼します」
と挨拶する頃には、再びその馬鹿騒ぎを繰り広げ余興を楽しんでおられるようでした。
騒ぎの間をぬって、中心人物の斑目三席の元へ膝を寄せた。
「斑目三席」
と声をかけると、横から茶わんを差し出され、無理矢理受け取らされるとそこに酒を注がれた。
御猪口ではない、茶わんにだ。
「わ、私は酒を頂きに参ったのではありません」
きぜんとした態度でこう申したところ、
「おいおい、まずは挨拶だろ」
こうさらにすすめられた。
「あ、挨拶」
「そうだよ、まずは、一杯・・・ちっ、こらぁ、誰だぁ、注いだのはっ! ケチんじゃねぇよ!!」
どこかへそう吠えると斑目三席は、
「すまねぇなぁ、これじゃ呑む気にならねぇよなぁ」
そう、後ろ頭を掻きながら自分が口飲みしていた銚子からさらに茶わんへと酒を溢れる程注がれた。
(隊服に酒がこぼれて良い迷惑)気を使って頂いたようです。
これが、十一番隊流ということでしょうが、受ける訳にはいかないので、丁重にお断りした。
「いや、しかし、勤務中故頂く訳には・・・」
「あぁ? 俺の酒が飲めねぇってか!!」
「なんだとぉ!! 斑目三席の酒が飲めねぇだとぉ!!」
一瞬、私の周りが暗くなったかと思うと十一番隊の残党 皆さんが私を取り囲み凄い形相で(メンチを切って)見下ろしていらっしゃった。
「いっ、い、いや・・・勤務中故・・・」
私はきぜんとした態度でもう一度お断りした。
非常によろしくない空気が漂っていた。
そこへ、
「おまたせしましたー」
と聞き覚えのある声が。
これぞ天の助けと皆さんの間から声の主の方を覗くと、
「熱燗になりまーす」
「荻堂!!」
四番隊第八席荻堂春信の姿があった。
前掛け姿で、四本銚子の入った籠を両手に持っていた。
「あ、伊江村三席。お疲れさまでーす」
「貴様、ここで一体・・・」
聞くまでもなかったが口をついて出た言葉だった。
荻堂は自分の姿を芝居がかった態度で見下ろして、
「出前持ち? ですかねぇ」
さらっとこう答えた。常々から私はこの男の、
"甘いマスクとさらさらヘアーの癒し系イケメンと女性死神の間で大評判なのが気に入らなかった。"
「勝手に書き加えるな!!」
「すいません、許可を取るのを忘れていました。後で申請書を提出します」
「そういう問題じゃないっ! 非常識にも程がある」
「始末書も提出しましょうか?」
「・・・なんで、出前持ちなどしているかと聞いている」
「何でって・・・山田七席につき合って?」
そういう荻堂の視線の先を追うと、
(うちの唐変木)四番隊第七席山田花太郎が
おぼんに乗った枝豆をそおっと斑目三席の前に差し出しているところであった。
自らの目を疑い、眼鏡を上げ直した。
「君っ! 山田七席、君はここで何をしているんだ。卯ノ花隊長から訓告を受けたばかりじゃないか」
「はい、・・・判ってます。でも、・・・ハハハハハ」
乾いた笑いだけで、その先の言葉は告げられなかったが、悲しそうに見上げた目が、「この人達に逆らうなんて出来ません」と訴えていた。
私もこれ以上は問い質す事が出来なかった。
「っていうか、おめぇ、俺達のこと忘れてねぇ?」
十一番隊の面々がこう(ツッコん)おっしゃった。出来れば忘れたかった。
「いっいえ、そのようなことは決して・・・」
「あぁん? じゃあ、呑むのか? 呑まねえのか?」
「そ、それは・・・」
ぱぁん!!!
派手な音をたてて、障子が開いた。
するとやはり、十一番隊の皆さんが一瞬動きを止め、
私の時とは違い、
その緊張のまま、斑目三席と綾瀬川五席以外は素早く立ち上がると九十度に身体を曲げ、大声を張り上げた。
「おつかれさまっす、隊長!!」
「おう、やってんなぁ」
(悪の親玉)十一番隊隊長更木剣八その人であった。
「あ、隊長。もう起きて大丈夫なんすか?」
「隊長、お身体の方は?」
斑目三席と綾瀬川五席が更木隊長に席を開けた。
「おぅ、かすり傷だ、大したこたぁねぇ。それより、俺にも飲ませろ」
とどっかりと腰をおろし、荻堂の持っていた熱燗を手に取った。
(もうダメだと思った。)お元気そうでなによりだと思いました。
「で?」
斑目三席が私を振り返った。
「あんた、結局なにしに来たんだ?」
「み、皆様方の診療でございます」
今日の抗議活動については、これにて終了した。 |