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番外編
番外編「愛はふたりで学ぶモノ」(後編)

「本当にホテルの部屋みたいなんですね」
 続きの間もあり、ちょっとしたスイートルームだ。バスとトイレが一緒になっていて、狭いのが残念だが、まあ、文句をいう客はいないだろう。当然、無料なのだから。
「昔は純和風の二階建てで……祖父が愛人と会うのに使ってたって話だな」
「会うって……こんなところで、ですか? 同じ敷地内に奥様がいらっしゃるのに」
「モラルの欠片もない男だったんだ。そうでなければ……」

 十六歳のメイドに無理やり手を出したあげく妊娠させ、生まれた息子を母親と引き離したのだ。それも、金をやりたくないばかりに。強欲な悪党は多いが、ここまで畜生以下の男は少ないだろう。
 それが血の繋がった祖父だと思うと、卓巳は反吐が出そうになる。

「僕が入ったときに、祖母上の希望で新しい来客用の離れを建てた。部屋数は増やせたんだが、開放的にしたかったので、一階はあんな感じなんだ」

 最近で一番利用しているのは、卓巳の秘書の宗だろう。
 遅くまで卓巳に引っ張りまわされ、そのまま泊まっていくことも多い。ここしばらくは、卓巳が不在のときでも泊まるというが……まあ、深くは追求すまい。

「ねぇ卓巳さん、ここのテレビはブラウン管なんですね。それにビデオデッキも……」
「ああ、五~六年前に入れたきりだからね。今度、邸内のテレビはまとめて買い換えるという話だな。そのときにここも替えるんだろう」
 最近ではDVDレコーダーしか使うことがないので、万里子はビデオデッキが懐かしいらしい。
 ラベルのないテープが出てきたままの状態なので、それを指で押したりしている。案の定、テープはガチャッと大きな音を立て、再生をはじめた。
「あ、ごめんなさい。触ってしまって……でも、何のビデオだったのかしら?」
「さあ、なんだろうな。来客用に映画でも用意しているんじゃないのかな? ああ、ここにリモコンがある。――ちょっと待ちなさい」
 卓巳は何も考えず、赤い電源ボタンを押した。
 テレビの赤いランプがグリーンに変わり……室内に、スピーカーから流れた音が響き渡った。


『あっあっあっ、だめぇ、そこぉっ! やあーっ、あああーーっ!』


 遅れて映った画面には、女子高生が上半身だけセーラー服を着て、中年男に跨り腰を振っていた。
 ふたりとも言葉を失い、棒立ちになる。
 ……少しして、卓巳はハッと我に返った。

「だ、だれだ! こんな……こんな物を。まったく!」
 悪態をつきながら、さっさと消せばいいのだが……思わず、目が釘付けになる。万里子を喜ばせるために、と様々な教材を集め勉強している卓巳だが、アダルトビデオは目にしたことがなかった。

 宗曰く――
『愛を学ぶにはあまりオススメできない教材ですね。手っ取り早く抜くための映像に過ぎませんから……。アレを真に受けて女性に試せば、怒らせる可能性のほうが高いと思います』

 中学生レベルでストップしていた卓巳にとって、『手っ取り早く抜くため』というのが興味はあるが、少々怖い。
 巨乳というやつがが画面で揺れていたら、吐き気をもよおすかもしれない。
 それでもし、またダメになろうものなら、泣くに泣けないだろう。

「あ、あの、万里子? 万里子?」
「あ……私、こういったのを見たのは初めてで」
 こういったアダルトビデオにはレイプを取り扱ったものも多いと聞く。
 この作品は、セーラー服の女性が喜んでいるみたいなので、そういった感じではないが……。万里子の傷に触れたのではないか、と卓巳は慌てて口を開いた。
「怖がらせたのならすまない。私は君が嫌がるような真似はしないから、安心してくれていい」
「いえ……あの、この方……本当に高校生さんなのでしょうか? 私より年上に見えるんですけど」
 予想外にも、冷静な万里子の声が聞こえる。
 言われてみれば、女子高生というより二十代後半、下手をすれば三十代にも見えるだろう。
「セーラー服に見えるが……こういったデザインの洋服とか? いや、ああ、そう言えば、聞いたことがある」
 
 撮影では、実際に高校生は使うわけにはいかないので、成人女性が制服を着て高校生を演じる、と。
 それを聞いたとき、どうして女子高生なんだ? と卓巳は思ったが、世の中には女子高生とセックスしたい成人男性が多いらしい。有名女子高の制服に萌えるのだ、という。そういった男たちをターゲット――いわば金づるにして、女子高生・中学生が援助交際に走るのだから驚きだ。

(まったく、女というのは年齢に関係なく、金のためならなんでもする生き物だな)

 卓巳の中にふたたび女性不信の芽が出かけたが、
「制服に……ですか? 事件になっているものは新聞でも目にしますが。立派な立場や年齢のかたもいらっしゃるのに。欲望を満たすためなら、男の人って際限なく恥知らずになれる生き物なんですね」   
 万里子の言葉に卓巳のほうが焦った。
「僕は違う! セーラー服に興味はない。僕の興味はすべて、万里子、君だけだよ」
「あ、ごめんなさい。私もつい、むきになってしまって……」
 互いの表情がほぐれ、しっとりとしたムードが流れたとき、


『あぁーん! そこぉ、もっと突きあげてぇ~』


 経験の少ない卓巳でもわかりそうな、白々しい女のセリフが聞こえた。
 卓巳は舌打ちしつつ、
「まったく……ちょっと待ってくれ、すぐに消すから」
 リモコンに手を伸ばしかけた卓巳だったが、その一方で、万里子のほうはジッと画面をみつめている。
「万里子?」
「あ、いえ……あの……こういうの……卓巳さんもしたいですか?」

 “こういうの”とはたぶん、女性が上に乗る体位のことだろう。
 ハネムーンでようやく復活した卓巳だが、騎乗位という名前くらいは知っている。滞在先のホテルでは様々な場所で試みたものの、結局は正常位だけだった。
 むしろそれより、はしゃぎすぎて、帰国前夜に万里子からイエローカードを突きつけられた苦い記憶が甦る。

「そ、それは……その、万里子がイヤでなければ、試してみるくらい、してみたいかなぁと思うけど」

 小首をかしげ、新妻の顔色を伺う仕草は……およそ三十男とも、大企業の社長とも思えないものだ。取締役会の連中が見たら、口を開けたまま三分間は固まるだろう。
 そしてこちらも、人妻とは思えぬ初々しさで、

「卓巳さんがしたいなら……試してみても、いいです」

 思いがけない『イエス』に、卓巳は息を飲んだ。

「本当に? コレを試してもいいのかい?」
 卓巳の問いかけに万里子がコクリとうなずき、ふたりの唇が軽く重なった。

 ――そのとき


『オラオラ、もっと腰使え! 甘えてんじゃねーぞ!!』
 男の罵声とともに、パンパンと女性のヒップを叩き始めたのだ。白い肌に赤い手形が残る。
『やぁっ! 気持ちいいわぁ~もっとぉ~』 
『もっとケツふれよ! ほら、動けよ、メス豚!』
『あぁ~ん、もっと、言ってぇ~~ん』  


 卓巳はびっくりして画面をみつめ、目が点になった。

(アダルトビデオはコレが普通なのか? それとも……世間一般のカップルはこんなセックスをしているのか?)
 
 混乱する卓巳の耳に泣くような万里子の声が聞こえた。

「た……卓巳さん……コレもですか?」
「え? あ、いや、どうだろう……」

 刺激が強すぎて、卓巳は呆然としたままうわの空で答えてしまい。
 ハッとして万里子を見たときには、
「わ、わたし……私にはムリです。ごめんなさいっ!」
「いや、待て、万里子っ!」
 万里子は卓巳を突き飛ばすように部屋から出て行ってしまい……。 


『あ、あ、あぁん。もっとぉ~ぶってぇ~』
 

「――やかましいっ!」
 
 リモコンを握り締め、アダルトビデオに向かって怒鳴る卓巳だった。


                           ~一応…fin~
御堂です。
ご覧いただきありがとうございます。

しっとりイチャイチャさせるつもりが…
オチをつけたい性格なんです(^^;)

卓巳が怒りそうなんで、今週中に「騎乗位(?)実践編」をサイトでのみUPさせていただきます(笑)
よかったら、お越しくださいませ。

この後はアンケートお礼番外編「仲良きことは…」を連載予定です。
「愛を教えて」&「十八歳の愛人」のコラボになります!
前後編で済ませるつもりが、プロット書いてたら伸びる伸びる(^^;)
サイトとは同時連載になると思います。
こちらはもうしばらくお待ちくださいませ。

どうもありがとうございました。
拍手&メッセージお待ちしております。


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