(本当に……卓巳さんはわたしにコレを着ろって言うのかしら?)
万里子は卓巳から渡された包みを開け、呆然と眺めていた。
カメラの件はともかく、少し泳いでみたいな、というのが万里子の本音だ。去年は一度も泳ぎに行けなかった。マタニティスイミングの教室もあったのだが……それだと多くの人間に肌を見せることになる。それに、生徒は全員女性とは言え、コーチや関係者には男性もいるだろう。
かなり良くなったとはいえ、ライカーの仕打ちに万里子の症状は悪化した時期もあった。
卓巳に言えば、きっと教室そのものを貸切にしてくれるはずだ。だが、マンツーマンで指導を受けるようなものでもない。
しばらく悩んだが……。
やがて諦めたように、万里子は袋に入った水着を取り出し、身に着けた。
「卓巳さん……あの、わたし……こんなのは初めてで」
卓巳の好きなビキニスタイルだ。問題は……なんと豹柄の紐ビキニなのである。下半身はわずかな部分を隠すだけの布地しかなく、両サイドを紐で結ぶ。
トップスは三角の布が二つあるだけで……首の後ろと背中で結んだ紐が、何かの拍子に解けないかと心配でならない。
それに、子供を産んで半年。服のサイズは元に戻ったが、体型まで元通りかどうか……自信がない。
「卓巳さんは、フリルがお好きだったんじゃなかったんですか?」
「……」
卓巳はきらきらした瞳で万里子を見つめている。
「卓巳さん?」
「あ、ああ……もちろん、嫌いじゃない。でも、実はネットで見つけて……どうしてもやってみたくなったんだ!」
そう言った直後、卓巳は羽織ったパーカーを脱いだ。
すると……なんと見事な豹柄のビキニパンツが!
「た、た、たくみ、さん? あの、それ……って」
「そうだよ、万里子。お揃いなんだ! 凄いだろう? 『ワイルドでセクシー』なんて謳い文句でね。ほんの二年前まで、私の辞書にはないものだった。自信もなかったし……。でも、今はそうでもない。もちろん、君限定だけどね」
万里子は、ようやく思い出した。
そういえば、卓巳はペアルック大好き人間であった。携帯も時計も傘もお揃いである。そしてつい先日、万里子が結人の離乳食用に、ウェッジウッドから出ているピーターラビットの『洗礼シリーズ』を購入した。万里子愛用の『ティータイムシリーズ』とお揃いだと喜んでいたら、なんと卓巳もピーターラビットを買って来たのである。
今では三人とも、食卓には仲良くウサギ柄が並んでいた。
卓巳は嬉しそうに笑っているが、万里子は目のやり場に困る。
豹柄のメンズビキニは、おそらく布地の面積は万里子が穿いているのとそう変わらない。見事な盛り上がりに、万里子は色々なことを想像してしまい……頬が火照ってしまう。
「あ、約束通り、ちゃんとカメラは動かして貰ったから。もちろん、安全の為と言っておいた。君は何も心配しなくていい」
その言葉通り、卓巳はそそくさとプールに入り泳ぎ始める。万里子もそれに倣うが、この水着はあまり泳ぐには適さないようだ。肌にピッタリと張り付き、ちょっとでも激しく動かすと、あらゆる部分がはみ出てしまいそうになる。
「きゃ……ん」
サイズアップした胸元がビキニから零れ落ちそうになり、万里子は慌てて直した。卓巳はその姿がカメラに映らないよう、すぐに万里子の前に立つ。
だが、お互いの水着のせいかも知れない。妙に色っぽい万里子に、別の部分が勃ち始め……。
「万里子……愛してるよ」
そのまま万里子を抱き寄せた。彼女は懸命に卓巳の胸を押して、
「ダメですって……カメラが」
「じゃあ、すぐに部屋に戻ろう!」
卓巳はそのままプールから上がろうとしたのだ。
しかし、
「た、たくみさん……横から……出てます」
「え?」
元気になった時の〝卓巳〟が、小さな布地でカバーできるはずがなかった。
「ど、どうしよう……万里子」
「んもうっ、知らない! 小さくなるまで、そこに居なさいっ!」
怒りながらも卓巳の前に立ち、更衣室まで一緒に付いて行く万里子であった。
~*~*~*~*~
「万里子を抱けるようになったんだ。文句は言いたくないけどな……頼むから、中学生みたいに反応するのは止めてくれ。せめて、歳相応に……。いや、まあ、ダメよりマシか」
相棒の機嫌を損ねて、肝心の夜に沈黙されては洒落にならない。
卓巳は独り、桜の見える露天風呂に浸かり、そんなことを呟いていた。
「判った。悪かった。息を吹き返してくれただけでも感謝してる。おかげで息子が持てたんだし……。次は頑張って娘を頼むぞ」
ひらひら舞う桜の花びらが数枚、湯船に浮かんでいる。淡く色づいた桜は、卓巳を見つめる万里子の頬の色と同じだ。傾き始めた陽射しを受けて、桜の木に金の粉が降り注いでいた。
「……全部貸切にして、万里子と一緒に見たかったな」
ポツリと卓巳がこぼした時だった。
「ええ、本当に。とっても綺麗ですね」
背後で万里子が答えたのである。
「どうしたんだ? 今は男湯の時間だろう!?」
万里子はバスタオルで前を隠している。水着を着ているにしても、あのビキニだ。ここにもし男たちが入ってきたら、卓巳は万里子を抱えて飛び出すことになるだろう。
だが、卓巳の問いに万里子はクスッと笑った。
「いやだ、卓巳さん。わたしが男湯に入ってくると思いますか?」
「い、いや……」
「女将さんにお願いして、三十分だけ清掃中ということで貸切にして頂いたんです。その代わり、年末の使用人の慰安旅行はここにしてあげて下さいね」
万里子は茶目っ気たっぷりに、可愛く舌を出して笑顔を見せた。
(熊谷よりよっぽど機転が利くじゃないか!)
卓巳は思わず、万里子を秘書にしようかと思ったくらいだ。
しかし、その三秒後、卓巳の意識は真っ白になる。
万里子がバスタオルを外すと――なんと、全裸だ!
桜に負けないほど艶やかで華があり、そして素晴らしい曲線をしている。当然、幾度となく目にした裸体だが、今日はいつも以上に息を飲むほど神々しい。
初めての露天風呂……そこに万里子が立っているというだけで、卓巳の頬が緩んでくる。
万里子が湯船に入り、卓巳の隣に座ったとき、少し強い風が吹いた。
二人に頭上に桜吹雪が舞い散り……。まるで幸福を祈るフラワーシャワーのようであった。
「万里子……さっきのこと、許してくれるかな?」
「さっき?」
「確かに無節操だが、本当に君だけなんだ。だから」
「許すも何も、本気で怒ったりしてませんから。ただ、卓巳さんに厭きられないか不安で。結人を産む前と比べられたら」
「何を馬鹿なっ! 私には君しかいないんだ。よく知ってるじゃないか」
「それは以前の話でしょう? 今は……あんなに立派に……」
万里子の視線を受け、卓巳の股間に再び熱いものが滾り始めた。
「これは、君がいるからだ。万里子、君の視線が私に魔法を掛けるんだ」
万里子の細い肩を抱き寄せ、髪から額、瞼、頬とキスでなぞる。そして唇に辿り着いた時、万里子の口元が薄っすらと開き、卓巳を誘った。
もう片方の手が、万里子の胸の丸みを撫で擦る。すると、万里子は卓巳に体を預け……その手が彼の胸に触れた瞬間、トクンと高鳴った。
湯の中で入れてしまっていいものだろうか?
それとも立ち上がってバックから?
初めての経験に舞い上がる卓巳に、万里子の喘ぎ声が聞こえたのだ。
「卓巳さん……わたし……我慢出来ない」
「あ、ああ……私もだ。いくよ……万里子」
卓巳が万里子に腰を押し当てた瞬間――。
「――卓巳さんっ!? 何を考えてるんですか? 熱くて、逆上せそうって言ってるのにっ!」
万里子の息が上がり、真っ赤になっている理由が判り……
「ご、ごめん。じゃ、続きは洗い場で」
「こんなとこで、なんて……卓巳さんのエッチ! 変態!」
「万里子……万里子ぉぉぉ」
露天風呂に卓巳の叫び声が響き渡り……。
満開の桜は幸せなふたりを見て、いつまでもクスクスと笑っていた。
~fin~
御堂です。
正解はなんと3番!
卓巳がペアルック目的のチョイスでした(爆笑)
正解者はいなかったかも…
でも、露天風呂のほうで念願の5番を叶えて貰いました!
結果はコレですけど(^^;)
ここでお終いだと可哀想なので(卓巳が)…
サイトでもうちょっとラブラブシーンもお見せしようかな~なんて(笑)
1~2日以内にUP予定です。
良かったら、サイトまでお越し下さいませ(^^)/
(http://book.geocities.jp/arlequin_roman/pic/novel/aiwoosiete/index.html)
ではでは…完結マークは入れず、番外編第二弾を書きたいと思います。
ありがとうございましたm(__)m
拍手&メッセージお待ちしております。
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