endless battle(25/69)PDFで表示縦書き表示RDF


endless battle
作:唯



第25話 『事情』3



「かーえーでっ!どーだったんだ?拓羅と仲直りしたのか?」
「・・・・・・ほっといて」
「・・・ハイ・・・」
 拓羅の家から戻ってきた楓は、靴を脱ぎ捨て、部屋に閉じこもった。それからもう四時間が経過していた。
(腹減ったぞ・・・)
 今は午後九時だ。いつもの夕飯の時間はもうとっくに過ぎている。流石にファングも腹が減ってきたようだ。
「か・・・楓?その・・・オレ・・・腹、減ったんだけどさ・・・」
 すると、凄い勢いでドアが開いた。不機嫌そうな顔で出てきた楓は、キッチンへ行き、棚を開けてファング用のドッグフードを専用の皿に盛った。無言でファングの前に出す。そしてまた自分の部屋に戻り、ドアを閉めた。所要時間は三十秒だった。
「・・・・・・早ッ・・・」
 しかし、やはり三十秒は三十秒。いつもより大分ザツだった。ドッグフードが台所からファングの足元まで散乱している。ファングはそれさえも拾って食べた。
(勿体ねぇ勿体ねぇ。美味ぇ美味ぇ)
 そう思いながらボリボリと食べた。


 その日、楓は自分の部屋の椅子に座ったまま朝まで起きていた。その間時々目を長く瞑ることはあっても寝る事は無かった。楓の中に「どうせ明日は休日だし」と言うヤケクソな気持ちがあったからなのかもしれない。
 翌朝七時頃。
楓の部屋の外からは、あくびまじりに彼女の名前を呼ぶファングの声がしていた。
「楓ー?起きてるか?入るぞ」
 その声に楓は一瞬ピクンと動き、ドアの方を見て返事をした。部屋に入るとファングは少し驚いた。そこには今まで見た事の無い、椅子に座ったままボーッとしている楓が居た。
「・・・楓・・・?どうした?」
 彼女が喋りだすまでには時間が要った。
「・・・・・・・・・ファングー・・・」
「ん?何だ?」
「・・・もー無理」
「えッ!どどどどうかしたのか?調子悪いのか?腹痛いのか?頭痛いのか?」
 ファングの対応は、久しぶりに孫に会った祖父のようになっていた。
「もー無理なの!とにかく無理なのっ!」
「な、何がだ?一体どうした?」
「だってさぁー・・・そんなのさぁー・・・・・・ねぇ?」
「ねぇ?・・・って言われても・・・」
「だって帰ろっつったって無理に決まってんじゃん!ファングのばかっ」
「えっ・・・オ、オレ?」
「もーヤダ!ホンットヤダ!マジでヤダッ!」
「・・・大丈夫かお前?もしかして酔ってんのか?」
「酔ってないもーん!タクがばかなだけだもんねーっだ!」
「拓羅?」
 返事はなかった。
「拓羅が何か言ったのか・・・?何言ったんだ?アイツ・・・」
 ファングは考えた。楓をこんな風にさせる言葉とは一体何なのだろうか。そして拓羅は何故そんな言葉を楓に言ったのか――――。
 考えていると、ゴン、という鈍い音が静かな部屋に響いた。ビックリしたファングが慌てて楓を振り向くと、彼女の顔と机が正面衝突していた。
「ぶっ・・・ぶつかっ・・・楓・・・?い、痛くないのか・・・?ってか・・・もしかして寝てんのか・・・?て事はさっきの、寝言か・・・?」
(それとも・・・本心か・・・?)
 ファングは真剣な顔で、スヤスヤ眠る楓を見た。その寝顔は、彼女の年齢よりももっと幼く見えた。そんな安心しきった寝顔を見て、ファングは少し微笑んだ。
(・・・まだ十八だもんなぁ・・・・・・)
 人間の歳で言えばファングは二十八歳。丁度楓達より十歳上だ。
(拓羅は・・・コイツに何言ったんだ・・・?)












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう