第10話 『憧れの修学旅行!−ファングもついてくぞ−』
坤の死後、敵が全く来なくなった。平和なまま一週間が過ぎようとしていた。
「楓ー暇なんすけどぉー」
「オレも。暇なんすけどぉー」
「あーもー!ピーチクパーチクうるっさい!」
「ピーチクパーチクじゃねぇもん!オレオレだもん!」
「そーだ!オレオレだ!」
「はいはい。もーいーよ、なんでも」
いつものようにため息まじりでそう言った。
ファング達は今、何故か楓の家に来ていた。シンプルな部屋だ。ファングと拓羅は、丸い小さなテーブルを挟み、向き合って座っている。楓は家中を忙しなく歩き回り、家事をしていた。洗濯機の中に洗剤を入れている時、はたと気が付いた。
一人首を傾げながら呟いた。
「・・・なんであたしがこんなセコセコ働かなきゃなんないんだ・・・?っていうかあたしは二児の母か?」
洗濯機に向かって話しかけても応答は無い。ひたすらグルグル回っているだけだ。しばらくして、一人と一匹が居る部屋に向かった。
「あ、楓!遊ん」
「居候!働きなっ!」
「・・・・・・・・・はい?」
そう言うわけで、拓羅は家事を手伝わされていた。まあ当然と言えば当然だ。自分の家がすぐ隣だという事も忘れて、懸命に手伝った。と言うより、手伝わざるを得なかった。ファングは手が無いため、一匹でちょこんと座って、泣き泣き手伝う拓羅を見ているだけだった。
そんなこんなで更に一週間が経過した。
今日はすっかり忘れ去られていた学校がある日だった。朝早く―――6時頃、フライパンを玉じゃくしで叩く音が響き渡った。
ガンガンガンガンと耳元で鳴らされるので、ぐーたら寝てなんていられない。強制的に起こされたファングと拓羅は、しばらくゴロゴロした後、朝食を終えた。そして楓と拓羅は学校へ行く準備をする。忙しさに興奮したファングは、ベラベラと喋り、その周りをただグルグルと回るだけだった。
「なんだ?なんなんだ?ガッコってなんだ?なんだ?ニワトリの一種かっ?」
それを繰り返し、二人の周りを何周も何周も走っていた。
「じゃー行ってくるね。留守番よろしくっ」
バタンとドアを閉める音が犬一匹しか居ない家に寂しく響いた。
「・・・・・・・・・・・・つまんねっ」
そう言った数秒後、ファングの目は「イタズラっ子の目」と化した。
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