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  赤い橋 作者:有坂りさこ
莉紗子と二人きり、夜の野菜室で……
第4話 夜の帳
「静か……ですね」
 野沢菜の山を前にして、莉紗子は物憂げな目をあげて天井の梁を見つめた。
工場(こうば)の中に、まるで私たち二人きりのような……本当に静かなんですね、野菜室(ここ)
 莉紗子の言葉に、和藤はぎこちなく頷いた。
 何か気の利いた言葉を――
 そう思いながら、どうすることもできないもどかしさに身悶えしながら。
 仕事以外のことでは一切口を開かないという莉紗子。
 ボールはそんな莉紗子の方から投げかけられた。
「寒くないですか」
 和藤はどうにか訊いた。
「火を止めると、この部屋、底冷えする感じで」
「ええ、ちょっと」
 莉紗子はためらいがちに頷いた。
 しんしんと降りつもる雪の音までもが聞こえてくるようだった。
「じゃあ、ちょっとストーブの温度、あげてみますね」
 和藤は薄手のゴムのグローブを台のかたわらに置き、ファンヒーターのボタンを押した。
 ピッ、ピッ、ピッ――数度の電子音。
「すみません」
 莉紗子は小さく微笑んだ。
 ヒーターの火が、ボッという音を立てて一度大きくゆらめいた。
 再びグローブに指を通そうとした和藤に、莉紗子は「あの」と声をかけた。
「はい?」
 和藤はつとめて平静を装いながら、視線を上げて莉沙子の顔を見た。
 冷たく輝く涼しげな瞳――それがマスクと帽子の間から、和藤の顔をじっと見つめていた。
 その視線を受けとめることができず、和藤は思わず目を泳がせた。
「今日の帰り、申し訳ないのですけど、私をふもとまで送っていただけないでしょうか」
「えっ」
 莉紗子の言葉に、和藤は思わず声を漏らした。
「石破さん、大雪になりそうだったので定時で帰られたんです。事務所のほうで相談したら、和藤さんにお願いするように言われて……お願いできないでしょうか」
「大丈夫です。お気になさらないで下さい」
 和藤は即座に答えた。
「石破さんもあの車じゃ大変でしょうから……僕でよければいつでも」
「ありがとうございます」
 莉紗子はホッとしたように胸をなでおろした。
「この時間だとバスもなくて……よかった」
 そう言って、莉紗子は再び暗闇を映し出した窓に目をやった。
 
 重く垂れ込めた夜の(とばり)が、工場全体を包み込んでいた。 

                                 第4話 終


「赤い橋」から少し山を少しのぼったところに小さな温泉があるんです。動画に撮ってきました。
動画URL→ http://risako-novels.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-5f63.html
車の中、二人きりで帰宅することになった和藤と莉紗子……
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