挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
76/440

76:感想に引こう。

「へぐっ」

 お姉ちゃんの後頭部にアヤメさんの手刀が叩き込まれた。

「もうちょっと言い方ってものがあるだろうが。どうやら人それぞれ魔力の味が違うらしいよ。あの子は焼き芋の味だったそうな」

「あぁ、確かに芋女だのライチ野郎だの言ってたな」

「で、溶かしたら更に美味しくなるらしい。でも結局の所、人間を美味しいって言ってる事には変わりないか」

 やっぱりそこに落ち着くのか。いや、やったのは事実だから文句も言えないけどさ。


「まぁ襲ったりはしないから大丈夫って本人が言ってるのを信じるしかないんじゃないかな。もし襲われてもすぐに食べられるようになる訳じゃないみたいだから、相打ちくらいには出来るだろ」

 信用が無いのか万一の話なのか。後者だと思いたいね。

「ある程度接触しなきゃいけない分、まだ抵抗しやすいか。まぁ食べた直後の様子はともかく、今の妖精さんを見る限りは大丈夫そうだな」

 うんうん。でも溶かす事への抵抗は減ってしまった気もする。
 まぁあの惨状を見て、また見たいとか言う人も居ないだろうし大丈夫だろ。



「おっ、帰ってきたみたいだね」

 あれ、兎さんが肩を貸してる。熊さんの足取りが怪しいぞ。
 大丈夫かな、衝撃が強すぎたんだろうか。俯き気味で顔がよく見えない。

「おかえり。はい、着てた服」

「ほら、着いたぞ。受け取れよ」

 魔人さんが出迎えて服を返してるけど、反応が薄いな。本当に大丈夫か?


「妖精さん、こいつどうしたんだ? なんか復活してからずっとこんな感じなんだけど」

 ん、なんかピクッてしたぞ?

「うーん、なんと言いますか。平たく言うと溶かして食べちゃいました」

「食べたって…… え、嘘、マジで?」

 あ、一歩下がった。でも熊さんが下がらないから、すごい不自然な体勢になってるな。

「気持ちは解るけどマジです。一応事故みたいな物だって主張はしますけど」

「どんな事故が起きたらっておわっ!?」


 突然、俯いていた熊さんの頭部が跳ね上がった。ビックリしたー。
 ……あ、これ大丈夫じゃない奴だ。完全に色々ダメな表情だわ。

「食べられるのって…… すんっごい、気持ち良い……」

 うん、駄目だこれ。というかキャラ変わってないか?
 兎さんの肩から手を降ろして離れて、両手を頬に当てて目を瞑り感覚を反芻している。


「えっ、溶かされるのよりもっと良いの!?」

 おいやめろ、話を膨らませようとするな。嫌な予感しかしないんだよ、この流れ。

「全っ然別物だねー。無駄死にのあんたと違って、私の体は妖精さんの血となり肉となったのさー」

 待て、落ち着け。確かにMPは凄い沢山回復したし、お腹は一杯になったけどさ。

「ずるい! ねぇ、どんな感じだったの!?」

 何がずるいというのか。やめて、周りの皆もちょっと興味持ち始めるのやめて。



「いやー、溶け始めたあたりからもうかなり気持ちよかったんだけどさー。なんていうか、マッサージなんて比じゃない感じ?」

「うん、そこまでは私も体験したから解るよ。気持ち良いよねぇ」

「どんどん体が崩れて行っても感覚はあるんだけど、途中からはもうそれが体の何処なのかさえも判らなくなってねー」

 まぁそりゃ引っ付いてた所とかどんどん混ざっていってたし、手も足も無くなってたもんね。

「ただ何かが触れてるって事は解ってたかなー。何かって言っても地面と服くらいだけど。音は聞こえてたけど、目は見えなくなってたねー」

「あー、わかるー!」

 何なんだその共感は。他の人全然付いていけてないよ。
 っていうか完全には判ってないんじゃないかな? 混ざった事に何も言って来なかったし。


「で、気持ち良さも十分に堪能したしって事で妖精さんに声かけた訳だけど」

「いやぁ、あれ怖かったよー」

「そうなの? 自分じゃ普通に喋ったとしか思ってないんだけどねー」

「お前が溶けたときも十分ホラーっぽかったからな?」

「あー、そうなんだ。自分じゃ解らないもんなんだね」

「俺らはあの時耐えられずに吐いたんだぞ」


「あっ、もしかしてあの時何か当たったのって……」

 げっ、気付いてたの!?

「あぁ、それ妖精さんの」

「ストップストップ。あー、ごめんなさい」

 隠してたことも含めてね。とりあえず目の前で頭を下げておこう。

「いいよいいよ。別に今更だし、気にしてないよー」

 ほっ。よかった。



「もういいかーい?」

「あっ、ごめんね」

「そんでまぁ、体のどこかに妖精さんに口付けされた訳だけど」

 口付けって言うなよ。確かに付けたけどさ。

「うんうん、私が気になるのはそこからだね」

「妖精さんのちっちゃい口の中にちゅるっと吸い込まれてさ。そこで身体をかき回されて、妖精さんの舌で唾液とぐちゃぐちゃに混ぜられて……」

 やめろ、恍惚とした顔でほうってため息つくんじゃない! いかがわしい雰囲気を出すな!
 大丈夫かこれ、キマっちゃってないか? 開発、そのうち本当に訴えられるんじゃないか?
 でもそうか、触覚が有るって事はそういう事か。うわぁ……


「妖精さん、人のパーティーメンバーに変な趣味を植え付けないでくれよ……」

「いや、これ私のせいなんですかね…… 確かに責任が無いとは言えませんけど」

「うん、解ってはいるんだけどさ。この有様じゃぼやきたくもなるだろ?」

「とりあえず他の妖精が出てきたときに、誘われてフラフラ付いていかない様に気を付けてあげて下さい」

「だねぇ…… この分じゃ本当に行きかねないよ」

 兎さんの気苦労がどんどん増えていく。ごめんよ。


「で、ごっくんされてお腹の中に落ちて行ったら、今度はそこでほろほろ崩されていってさー。あの感覚は現実じゃ絶対に味わえないねー」

 そりゃそうだろ。というかそこまでも全部無理だよ。

「多分そこで取り込まれたんだろね。感覚が途切れたよー。それを私が全部消えてなくなるまで、何回も何回も繰り返すんだー」

 うぅ、勘弁してくれ。こっちを見るお姉ちゃんの目が「うっわぁ……」って感じだよ。
 さっきとは別の方向で思いっきり引かれてるよ……
 私はそういうのじゃないから、その目は熊さんに向けてくれよぅ。

「へぇー、いいなぁ。私もやってみたーい」

 うわぁ、ここにもう一人居たよ。

「お前、何回デスペナ貰う気だ。昨日の分もまだ取り戻してないだろうが」

 良かった、おじさんが止めてくれた。殆ど喋らないから影薄く感じるな、この人。


「うーん、仕方ないかー」

「私としても他のパーティーになるべく迷惑かけたくは無いので……」

「延べ七回分もその子らにデスペナ食らわしてる奴の言う事じゃなくないか?」

「好きでやったのは一回も無いから。事故と周りに押されただけだから」

「事故はともかく、流されたらやるんじゃん」

「もー、いいのー!」

「雪ちゃん……」

 くそぅ、残念な子を見る顔でこっちを見るんじゃない!
 私だって申し訳ないとは思ってるんだよ。デスペナの上に穴埋めに一日使わせてるんだから。



「食べられるのって、イイ……」

「妖精さん…… これどうしよう?」

「私に言われてもどうしようも…… わざと敵に食べられに行かない事を祈ります」

 わたしわるくない。噛まれれば痛みで正気に戻ると思おう。
 治らなかったら、うん、どうしようね。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ