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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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339/679

339:カップに入れよう。

 とりあえず落ち着いてもらわないと、話も出来そうにないな。
 ていうか取り乱して脚バタバタされなくてよかった。
 あんまり暴れられると手が滑りそうだし。

「はい、離さないから大丈夫だから、落ち着いて深呼吸ー」

「うー、絶対だからね! ふざけたら怒るからね!」

 うん、これフリとかじゃなくてからかったら本気で怒られるやつだな。
 私も怖かったから気持ちは解るし、きっちり固定しておいてあげよう。


「ん?」

 すー、はー、と深呼吸するちっちゃいお姉ちゃんを見ていたら、シルクが横に来て裾をクイっと引いてきた。

「どうしたの? ……ああ、なるほど」

 腕は動かさない方が良いだろうとなるべく首だけを動かす様にして右を見てみれば、シルクがティーカップを右手にぶら下げていた。
 おお、力持ち…… って言っても庭に居る(いまの)シルクなら体感で三キロくらいか。
 ちゃんと量った事はないけど、ティーカップって大体二、三百グラムくらいだったと思うし。

 まぁそれはともかく、空のカップを持ってきて両手で差し出す様に持ってるって事は、ここにお姉ちゃんを入れろって事だよね?
 お姉ちゃんがわたわたし始めたのを見て、すぐに取りに行ってくれたのかな。


「お姉ちゃん、ちょっと動かすよー」

「ゆ、ゆっくり、慎重にお願いしますよ」

 なぜ敬語。あー、それだけ切実だってことか。
 あ、シルクの方からお姉ちゃんの下にカップを動かしてくれた。
 それじゃ、そーっと下ろして……


「た、たすかった…… うう、シルクちゃん、大好きー」

 お姉ちゃんの足がついたのを確認してゆっくり手を離すと、カップの中にへにゃっとしゃがみこんだ。
 ……なんか可愛いな、これ。ちっちゃいし。

 ん、なんかドサッて音が遠くから……って何やってんだ。

「この扱いはあんまりではないでしょうか」

「うるせぇよ。今お前、放っといたらそのまま突っ込んで行ってただろ」

 芝生の上に、手巻き寿司の様に厚手の布でぐるぐる巻きにされたモニカさんが倒れてる。
 我慢できなくなって可愛がりに来ようとしたのか……

 顔と足だけが出た状態で、両端と真ん中の三か所を縄で縛られてるな。
 あれだと動きようも……ってそのまま立ち上がった。
 ……なんかシュールな絵面だけど、まぁあれなら流石に走って来たりは出来ないだろうから放っておこう。


「なぁ、何で皿じゃなくてカップの方なんだ?」

 テーブルのソーサーを摘み上げ、ぷらぷらさせながら聞いてくるアヤメさん。
 割れちゃうから落とさないでね?

「そっちだと壁が無いからじゃないかな。やっぱり掴まる所があると安心感がかなり違うし」

「あ、そっか。これだと横に落ちちゃいそうで怖いのか」

 こくこく頷くシルクと、ブンブンと激しく頷くお姉ちゃん。
 レティさんも私を乗せた時、指を曲げて手すりを作ってくれてたしね。

 ていうかそんな頷いても、アヤメさんの位置からじゃお姉ちゃん見えてないと思うよ。
 立ってる時の肩くらいの高さだしアヤメさん座ってるし、へたりこんだお姉ちゃんの頭はカップのふちより低いし。


「あ、私土足でカップに入っちゃってる…… えっと、脱いだ方が良いかな?」

「いや、今更だし良いんじゃない? それに脱いでも鞄無いから、入れる所が無いでしょ」

 少し下がってカップのふちに手をかけて覗き込み、中にちょこんと座っているお姉ちゃんにツッコミを入れる。
 どうせカップの底に置いておくなら同じ事でしょ。

「あ、そっか。鞄って装備してたら一緒に縮んだのかな?」

「どうだろ。まぁあれも初期装備だし縮みそうではあるけど、使えなくなってたりしそうだよね」

「あー、確かに。……うぅ、やっぱ下見ると怖いや」

 お姉ちゃんが立ち上がり、カップのふちからにゅっと顔を出して下をのぞき込んですぐに下がっていく。
 まぁ足場が出来たとはいえ、高さはほとんど変わってないからね。


「ミヤコさん、小さくて可愛らしいですわ」

 あ、離れてたカトリーヌさんがよく見るために近づいて来た。

「うぅ、よくこの高さが平気だなぁ……」

「慣れも有りますが私たち【妖精】は自分で飛べますので、転落を恐れる必要がありませんからね」

「良いなぁ……」

 今ばっかりは本気で羨ましそうだな。
 まぁ気持ちは解らなくもないけどね。



「あー、とりあえずここに居てもなんだしテーブルに行く?」

 カップから離れて移動を提案する。
 ……アリア様がまだかなーって顔してるしね。

「あ、うん、そうだね。シルクちゃん、お願いしまーす」

 シルクがお姉ちゃんの言葉にコクリと頷いたのを見て、振り向いてテーブルへ向かう。


「へぶっ」

 ……なんか後ろから妙な音が聞こえた。
 何があったのかと振り向いてみると、オロオロした表情になっているシルクとカップの壁面にぶつかったらしいお姉ちゃん。
 そうか、【浮遊】も無いし大きさも私たちの半分以下だから、【妖精】以上に慎重に運ぶ必要が有るのか。
 シルクがスライド移動する加速について行けずに、叩きつけられちゃったんだな。

「うぅ、痛くないけどそれが余計に変な感じ……」

「ちょっ、大丈夫!?」

「えっ? ってうわぁ!?」

 壁から離れたお姉ちゃんの頭が、グニャッてちょっと潰れちゃってる……
 よく見たら壁側にあった腕も粘土みたいに折れ曲がっちゃってるし。


「あわわわ、なにこれ、痛くないのが逆に怖い……」

「と、とりあえず腕を元の形に…… 痛くない?」

「う、うん、大丈夫。……あ、動くようになった」

 ぐにゃぐにゃになった腕をそっと動かして、まっすぐにしてみたらゆっくりと元の形に戻っていった。
 あ、頭の形も直ってる。

 粘土みたいなガムみたいな、もしくは柔らかめのグミみたいな不思議な感触だった。
 展延性ってこういう事か……

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