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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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245/733

245:手本を見せよう。

 土の山に置かれた岩に近づき、手をついて魔力を通す。

「まぁやった訓練って言っても、本に書いてある通り魔力を流して捏ねてただけなんだけどね」

 尖った部分を柔らかくして捏ね回し、千切り取ってかざして見せる。

「ん…… 私も、一緒にやってみよう」

 両膝をついた姿勢から私の上に覆いかぶさるように前傾し、岩を両手で包み込んで魔力を流し始めるソニアちゃん。
 うっかりぐちゅっと岩に混ぜ込まれても困るし、少しソニアちゃんのおひざの方に近寄っておこう。


「【吸血鬼】も太陽が無ければ凄く強いんだし、【妖精】ほどすぐじゃなくてもその内取れると思うよ」

 喋りながら近寄ったら片手で膝の上をぽんぽんと示されたので、座れという事だと判断して乗らせてもらう。
 おおう、すべすべお肌がとても冷たい。
 人間達と違って、普通の体温ではないんだな。

 なんていうか、冷血動物的なひんやり感だ。
 もしくは死体みたいな? いや触った事なんて無いけどさ。



 むぅ、これは予想外の気持ち良さだ。
 シルクほどではないとはいえ、吸い付くようなやわすべお肌で、手をつくとひんやりした感触で力強く押し返してくる。
 あぁそうか、シルクが人間サイズならこんな感じなのかな。

 ちょっと試しに……
 おー…… 持ってた石を横に置いてうつ伏せにピトッと貼り付いてみたら、ほっぺたがひんやり気持ち良い……


「雪さん……? どう、したの……?」

「え、あ、ごめん。勝手にひっついちゃって」

 手をついて置きあがり、膝にまたがる様に座り直す。

「ん、それは、構わない、よ…… 座っていいって、言ったの、私だもの……」

 いや、それにしても上に座るだけなのと抱き着くのとは違うだろう。
 やったの私だけど。


「ま、まぁ気長に頑張ろうか」

 横に置いた石を拾って、ごまかす様な発言をしておく。
 別にごまかす必要は無いんだけど。

「うん、がんばる…… 取れるまでは、それっぽい石だけ鞄につめて、残りは柔らかくして、壁にしようかな」

「それがいいかもね。流石に全部入れておく訳にも行かないし、置いておく場所も無いし」

「外に出られれば、簡単、なんだけど」

「だねぇ」

 捨てる為に地表に顔出したら、日中だとそれだけで即死だもんなぁ。


「まぁ外に出られるなら穴ばっかり掘る必要も無いんだけど」

 出られないから地中で作業する訳だし。

「そう、だね。……あ、でも、ね」

「ん?」

「力仕事、っぽい事、新鮮…… 現実だと、皆、やらせてくれない、から……」

「あー」

 うん、まぁそうだろうね。
 こんな小っちゃい子に、重い物なんて持たせられないだろうし。
 いや、年上だけどさ。


「皆、優しくしては、くれるんだけど……」

「ま、まぁ良い事じゃないですか。大事にされてるんでしょう?」

「うん…… 良い人達…… それに、力が無いのは、ほんとだしね……」

 私なんて現実だと誰も近寄ってくれないから、どんな重労働でも自分でやるしかないし。
 しかも一人っきりで黙々と。



 何を作るでもなく石をこねこねして、適当な所で口を開く。

「で、【純魔法】の方なんだけど」

「あ、はい……」

「こんな感じで、自分の外に魔力を放出して留めておいて」

 ソニアちゃんの膝の上から顔の前に移動して、小さな魔力球を作る。

「で、私が覚えた時はこんな感じに圧縮して結晶にしてたら取れてたね」

 両手できゅっと握って結晶にし、ソニアちゃんから見える様に掲げる。


「おぉー…… なんか、難しそう……」

「あー、制御に失敗したら暴走するから、あんまり大きいのは試さない方が良いと思う」

「うん…… おうち、壊れたら、困る……」

「まぁその穴の底でやれば大丈夫かもしれないけど、自分が危ない事には変わりないからね」

 私もそれで一回死んでるし。
 まぁあれは指を突っ込まれた(異物混入の)せいもあるけど。


「気を付ける…… あ、出すだけなら、出来た……」

「おー、早いねぇ」

 近づけた両手の人差し指の間に、ビー玉くらいのサイズの魔力球が出来てる。

「で、これを…… むー、固まらない……」

 指同士を近づけてぎゅっと圧縮してるけど、すぐに元のサイズに戻ってるな。


「あれ? 何でだろ…… ちょっと貸してみて?」

「あ、うん……」

 ソニアちゃんの指の間から魔力球をひょいっと取り上げ、両手で挟んで圧縮していく。
 ありゃ、どんどん小っちゃくなっていくな。
 最終的に、私から見ても一ミリくらいになるまで圧縮して、やっと固まってくれた。


「なんか、こんな小っちゃくなっちゃった」

「むぅ、ほとんど、見えない…… 雪さんの、そんなに縮まない、よね?」

「うん。大体一割くらいかな?」

 試しに同じくらいの魔力球を出して圧縮してみると、指先サイズで固まってくれた。


「なんでだろ…… 私の魔力、薄いのかな……?」

「うーん、どっちかって言うと【妖精】の魔力が濃すぎるんだと思う」

 【魔力感知】で見ても、ソニアちゃんは人間とはケタ違いに濃く見えるし。
 ってそのソニアちゃんでこれなら、人間の魔力で結晶を作ろうと思ったら一体どれだけ巨大なボールを作らなきゃいけないんだ……
 そりゃ純度の高い結晶が貴重な訳だよ。


「うーん、習得、難しい、かな……?」

「いや、でもそこまで珍しい魔法って反応じゃなかったしなぁ…… あ、そうか」

「ん……?」

「私は使ってないけど【純魔法】には【魔力弾】って魔法が有るし、さっきのボールを飛ばして破裂させてれば取れるんじゃないかな」

「あぁ…… むしろそっちが、普通の取り方、なのかな……」

「多分そうだと思う。でも破裂かー…… あ、その穴に落とせば良いのか」

「そこしか、無いね…… よーし、やるぞう……」

 うんうんと頷いて、穴の上で魔力球を発生させるソニアちゃん。
 あ、そう言えばさっきの結晶持ったままだった。


「そうだ、さっきの結晶返すね」

「あ、雪さんに、上げる…… 雪さんって、魔力が、ごはんなんでしょ……?」

「うん。それじゃ、ありがたく頂くよ」

「おやつ代わりに、召し上がれ……」

 にこっと可愛く微笑むソニアちゃん。
 うーむ、現実で可愛がる人達の気持ちがちょっと解る気がする。


「うん。頂きまーす…… え、何これ。すっごく美味しい」

 人間を溶かして食べた時みたいな、濃厚な味が一瞬だけ口中に広がる。
 ソニアちゃんは白桃味かぁ。

「おー、それは、良かった……」

「ちょっとそれ、一つ貰ってみて良いかな?」

「うん、どうぞ……」

 先ほどの様に指の間に浮かんでいる魔力球を手で取って、両手に持ってちゅっと吸い付く。
 あー、やっぱり。
 結構濃くて美味しいけど、さっきの結晶とは全然違う。
 圧縮すると量は減っちゃうけど、普通に食べるより美味しく頂けるんだな。


「それにしても……」

「ん?」

「雪さん、普通に手で持ってる、けど……」

「うん」

「それ、一応、攻撃魔法、みたいなものじゃ……?」

 あ、確かに。
 しかも【吸血鬼】の魔法だから、普通の人のと比べるとかなり強力な奴だよね。
 普通に持ってるし、自分から顔を突っ込んでいったけど。


「あー、まぁ【妖精】だし。魔法じゃそうそうダメージは通らないよ」

「そっか、すごいなー……」

「そういう種族だからね。その分、指で触っただけで死ぬくらいに物理攻撃に弱いけど」

「なるほどー…… 大変、だね」

「いや、【吸血鬼】も大概だと思うよ」

「あ、そうだね…… ふふ…… お互い、頑張らなきゃ、ね……?」

「だねぇ。まぁ欠点に関しちゃ頑張ってもどうにもならないから、他の所でだね」

「うん…… とりあえず、まずは頑張って、スキルを覚えるぞー……」

 よーしと意気込んで、穴に向かってぽいぽいと魔力を落としていくソニアちゃん。
 頑張るのは良いけど、暴発と魔力切れには気を付けてね?


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