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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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227/677

227:奥へ進もう。

「それでは」

 サフィさんを引きずって行った狐のお姉さんに続いて表に出て、ドアをパタンと閉めるランディさん。
 そういえば開きっぱなしだったんだよね。


「さて。それじゃ行こうか」

 何事も無かったかの様に奥に歩いていくランディさんに、ラキを頭に乗せたぴーちゃんと一緒に付いていく。
 二人ともちょっと怖がってるな。大丈夫大丈夫。……多分。

 それにしても、パッと見た感じだと擬態だなんて判らないなぁ。
 いや、判らなく出来なきゃ意味ないんだけどさ。


「床はちゃんと硬いんですね」

 普通に歩いているディーさんの足元を見て呟く。

「うふふ、ディーに文句を言われたからね。頑張って固めてるのよぉ?」

「仕方ないじゃないか。一歩ごとに足首まで沈み込まれてちゃ、歩くだけで疲れてしまうよ」

 あー、それはきつそうだなぁ。
 雪の中を歩くみたいに、一歩一歩脚を上げて引き抜かないとって感じになるのかな。


「そういえばこの家全部がジェイさんって事は、さっきのもどうにでも出来たんじゃ?」

 ふと気になって聞いてみる。
 通路を閉じたりして逃げられなくすれば良かったんじゃないのかな。

「うーん、出来なくはないと思うんだけど…… ナカの一部だけを素早く動かすのって、結構難しいの」

 右腕の先端を顎に当てて、少し首を傾げながら答えるジェイさん。
 こっちの体は凄い器用に操ってるけど、家の側は違う難しさがあるのかな?


「ゆっくりやるなら大丈夫なんだけどね。咄嗟に動かそうとしたら無意識に連動して、他の所も動かしちゃいそうになるのよー」

「うっかり研究室を動かされちゃ、機材が大変な事になるからね」

 あー、精密機器とかも多そうだもんね。
 そうじゃなくてもガラス器具とかがぶつかって割れちゃったら困るだろうし。


「うふふ。だからこの体でおっかけてたの」

「そういえば、どっちが本体なんですか?」

「この体と、家って事? うーん、どちらかと言えば」

「こっちだけど」

 うおう、言葉の途中で区切って館内放送みたいに天井から続きが。
 ちょっとびっくりした。
 むぅ、クスクス笑ってる。またからかわれてしまったか。


「この体は…… 手首から先を切り離して動かしてるみたいな感じかしら?」

「へぇー」

「ほら、こんな感じ」

 私の前に左腕をゆっくり伸ばしてきて、少し平べったくしてその上に右腕を乗せる。
 おおー。
 先端がぐにょって変形して、私と同じくらいの大きさのちっちゃいジェイさんになった。
 背中に繋がった右腕をぷちんと切り離して、単独で動き始める。


「うふふ、みにジェイちゃんよー」

「自分をちゃんと言う歳でもないだろうに」

 自分の触手の上でブンブン腕を振るジェイさんに、ディーさんが笑いながらツッコむ。

「うふふ、まぁ良いじゃないの。小っちゃいのって可愛いじゃない?」

「解らんでもないがね。それもやっぱり自分で言う事じゃないんじゃないか?」

「んもう。ディーはうるさいわねぇ」

「はっはっは」

 うるさいとは言うけど、ジェイさんも別に怒っては無いみたいだな。
 仲が良いなぁ。うん、良い事だ。



「あれ?」

 ふと大きい方のディーさんを見てみると、切り離した時の姿勢のままで全く動かなくなってる。

「あぁ、いくつも一緒に動かすのは難しいのよ」

「簡単な操作なら出来るんだけどね」

「両手で別々の複雑な動きは、なかなか出来ないでしょう?」

「体の何処に集中するかって感じだから」

「切り替えるのは簡単よー」

 ちっちゃいジェイさんとおっきいジェイさんが、交互に口を開く。
 なかなか出来ないって事は、頑張ればそのうち出来るって事かな?


 おっきいジェイさんの脚が、下から二本伸びてきてちっちゃいジェイさんに巻き付く。

「きゃー、たーすけてー」

「完全に棒読みじゃないですか」

「うふふ。万一本気にされたら困るじゃない?」

 笑いながら棒読みの悲鳴を上げる小さな自分を手の上から連れ去り、ずぶっと口にねじ込んで食べてしまうジェイさん。
 下の方から「しにたくなーい」って聞こえるけどやっぱり棒読みだ。



「しかしそれにしても、君が表まで取り逃がすなんて珍しいじゃないか」

 思い出したように口を開くディーさん。
 珍しいって言えるほどの回数、普段から脱走されてるのか?

「うふふ、白雪ちゃんが来てたからね。ディーの自己紹介に丁度良いわ、と思ったのよ」

 あー、あの謎兵器。
 っていうか未だに手の平から鉄杭が出たままなんだけど。


「ふむ、確かにね。しかし、白雪さんに危険が及んだらどうするつもりだったんだい?」

「あら。あなたはそんなヘマ、しないでしょう?」

「そうだがね。しかし可能性はゼロじゃないんだから、次からは止めてくれよ」

「はぁい。ところでディー、それしまわないの?」

 にょろっと腕を伸ばして、ディーさんの手から出た杭をぺちぺち叩くジェイさん。
 やっぱ邪魔に見えるよね。


「はっはっは、さっきから試しているんだがどうやら故障している様だね」

 ん? 掴んだり押し付けたりしてる素振りも無かったし、何か操作してる感じも無かったけど。
 自動で巻き取る装置とか、意識すれば巻き取ってくれる装置とかが組み込んであるのかな?

「また引っかかっちゃったの? やっぱり設計し直した方が良いんじゃないかしら」

「うーん、そうだねぇ。ジェイ、すまないが私の部屋の六番の棚から替えを頼むよ」

 あぁ、ちゃんと予備の腕は用意してあるんだな。
 まぁ当然か。


「はーい。それじゃ、その腕はこっちにちょうだい。机に置いておくから」

「うむ、ありがとう」

 ジェイさんの言葉と共に、廊下の壁に小さな穴が二つ並んで開く。
 そこにディーさんがずぼっと腕を一本ずつ突っ込み、両肩の先でカチッと外して壁から離れた。
 ほー、そこが外れるようになってるんだな。


 外れた腕がずぶずぶと飲み込まれて行き、少し待つと穴が有った所の少し横からずぼっと新しい腕が生えてきた。

「はい、どうぞ」

「ジェイ、代わりの腕は普通に持ってきてくれよ」

 カチッと接続して腕を引き抜き、ジェイさんの粘液でヌメヌメした手を見て少し困った顔で言うディーさん。


「良いじゃない、こっちの方が早いのよ。はい、タオル」

「まったく……」

 文句を言いつつ受け取ったタオルを使い、手慣れた動作で両腕から粘液を拭い取るディーさん。
 いつもの事なんだろうなぁ……


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