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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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218/676

218:静かにしてもらおう。

「ほら、落ち着いて少し下がりなさい。嫌われてしまうわよ?」

 フェルミさんが静かに素材屋さんの後ろに歩いて来て、両肩を掴んで引き寄せる。

「う、ごめんなさい……」

「まったく。それで、一体どうしたのかしら?」

「お布団を作ってたら姫様が店まで来て、『ふふん。これを見ろ、妖精に貰ったのだ。どうだ、良い物だろう』って言って、綺麗な糸で織られた布を見せびらかして帰って行ったんだよぅ」

「あの方は…… お暇なのかしら?」

 わざわざその為だけに店まで行ったのか、アリア様……
 せめて何か買って行こうよ。いや、そういう問題じゃないか。


「あー、それなら確かにこの子が出した糸ですね」

 黙っていてくれてるけど、なるべく大きな声で返事をしておこう。
 未だにがおーっと威嚇してるラキを拾い上げ、手の平に乗せる。
 ほらほら、ラキも落ち着いて。この人、敵じゃないから。

「おぉ、妖精さんの声が聞こえる!」

「だから声が大きいと言っているでしょう。いい加減にしないと追い出すわよ?」

「う、ご、ごめんなさい…… 妖精さんも、ごめんね?」

「い、いえ。大丈夫です」

 正直ちょっと耳が痛かったけど、怪我とかしたわけじゃないし。


「えっと、その…… 良ければなんだけど、私にもあの糸ちょっと貰えたらなー、なんて……」

 先ほどまでとは打って変わって、もじもじしながら控えめに要求してくる素材屋さん。

「あら。タダで貰おうなんて、少し厚かましいのではないかしら?」

「う、そんなつもりは無いよぅ。ちゃんと代金は払うもん」

 フェルミさんの容赦ないツッコミが入る。
 まぁ確かに、アリア様に渡したのも織機の代金みたいな感じだったしね。

 とはいえ今のは揚げ足を取った感じがするけど、フェルミさんの表情を見る限り、友達をからかってるだけだろうな。


「あ、少しなら無料で良いですよ。元々商品サンプルとして持ち込んでみようと思ってましたし」

「ほんと!? ご、ごめん、声が大きかったね…… だから、その、フミちゃん? それカチカチするの、止めてくれないかな?」

 フェルミさんが何度も言ってるのに、嬉しくて勢いよく迫ってくる素材屋さん。
 でも流石に、微笑みながら大きめのやっとこをカチカチと鳴らしてるのは怖いよ、うん。
 あれでどうしちゃうつもりなんだ。


「まったく…… ところであなた、まだ名乗ってないんじゃないの?」

 フェルミさんが呆れ顔でやっとこを棚に片付けながら、素材屋さんに確認する。
 うん、確かにお互い名乗ってない気がする。

「えっ? あ、そういえばそうだね。えっと、私はティアーナって言うの。改めてよろしくね、妖精さん」

「はい、ティアーナさんですね。私は白雪と言います。この子は私の召喚獣のラキで、こっちが同じく召喚獣のぴーちゃん……」

 紹介しようと振り向いたら、なにやら少し困った笑顔のぴーちゃんが。
 うん、まぁ何で困ってるかは一目瞭然なんだけどさ。


「で、その背中に貼りついてるのが、私と同じ【妖精】のカトリーヌさんです」

「初めまして、カトリーヌです。よろしくお願いしますわ、ティアーナさん」

 ぴーちゃんに背後から抱き着いて、背中のもふもふ羽毛に顔を埋めていたカトリーヌさんが、何事も無かったかのように澄ました顔で挨拶する。
 こらー、そのもこもこは私のだぞー。

「え、あ、うん。よ、よろしく……」

 流石にちょっと戸惑ってる。
 うん、まぁ仕方ないよね。



「それで糸なんですけど、何か巻く軸とか持ってますか?」

「う、色々持ってるけど空の軸は持ってないなぁ。フミちゃん、何か棒とか無いかな?」

「ここをどこだと思っているの。棒くらい有るに決まっているじゃない」

 棚へ向かって歩いていくフェルミさん。

「えっと、出来れば未加工のままの、素材としての棒が良いかなー……」

「……そう。仕方ないわね」

 その背中にティアーナさんが声をかけると、少し立ち止まって別の棚に向かう。
 どさくさで商品を売りつけようとしないでください、フェルミさん。


「はい、どうぞ」

 フェルミさんが戻ってきて、机にゴトッと棒を置く。
 ……やけに重い音がしたと思ったら、この棒って金なんじゃないの?

「いやいや、普通の木の棒で良いってば。そんな大金、持ってきてないよ」

「冗談よ」

 スッと隠し持っていた木の棒を差し出すフェルミさん。
 ここ、こんな物も置いてあったんだな……
 普通に箱に入ってたみたいだし、初対面の人に留守番させてちゃ駄目でしょ。



「あ、ついでに私の糸も出しますね」

「えっ!? 白雪……ちゃんも、糸出せるの……?」

 驚いて声が大きくなりそうになったところでフェルミさんの目がスッと細くなり、それに気付いたティアーナさんが声を潜める。


「はい。こんな感じで、色々出せる様になりました」

 太さを変えたりゴムにしたりして何本か出してみせる。


「おー、すごーい。それじゃ、その細い奴をお願い出来るかな?」

「はい。それじゃ、ラキはそっち側に引っ付けてね」

 ティアーナさんが両端を摘まんで横向きに持っている少し長めの棒の、中心と端の中間地点に糸の端を貼り付ける。
 ほらほらラキ、このお姉ちゃんは悪い人じゃないから。
 むぅーって顔してないで糸上げよ?


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