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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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178/679

178:変な想像をしよう。

 私の言葉を聞いて少し飲むペースを上げたシルクを残し、一人脱衣場へ。
 えーと、タオルは…… あった。

 棚に積んであるタオルを一枚取り、体を拭き始める。
 むぅ、翅のせいで背中が拭きづらいな。
 まぁ拭けなくはないし、一人でもなんとかなる。

 タオルを持った手を後ろに回して、付け根を挟むようにして水気を吸い取る。
 根元が済んだら翅を出来るだけ広げて、反対側の手を脇の下から通して掴み、クイッと引っ張り前に向けてみた。
 あいたた、ちょっと引っ張り過ぎた。

 しかし薄っぺらくて、変に力を加えたらパキッて鳴りそうで怖いな。
 まぁそう簡単には壊れる様になってないだろう。
 【妖精】の力では、だけどね。


 ふー、できた。
 いや、子供じゃあるまいし自分の体くらい拭けて当然だけどさ。
 拭い終わった翅をパタパタ動かして風を当て、残った水気も飛ばしておく。

 しかしシルクはまだ出てこないのか。
 まぁさっきから水が流れる音は聞こえてきてるし、もうすぐかな?

 えーと、私の服は…… あれ? 見当たらないな。
 どこかに持っていってはないだろうし、ここに有るはずだけど……

 まぁいいや。椅子でも出して待っていようか。
 椅子って言うかめーちゃんの指先なんだけどね。
 まぁアイテム名も座椅子って表示されてるし。


 単品だと座椅子っていう表示の通りに高さが足りないので、座椅子部分に繋がってた部位も取り出してその上に置く。
 ふぃー、やっぱり座り心地良いなぁ。
 でもなんかちょっとだけ違和感が…… あぁそうか、服の分か。
 着た状態で座って変形させたから、裸だとちょっとだけズレがあるわな。

 まぁその位なら誤差だし気にするほどでも無い。
 背もたれに寄りかかって、横の部分に手を置いてのんびり待つとしよう。



 幸い待つと言う程の間も空かずに、シルクがお風呂からコップを持って出て来た。
 私を見てほっとしてからちょっとだけしょんぼりしたのは、服は着てないけど体は拭いてあるって事だろうか?

 差し出されたコップを受け取り、口を付けて吸い取る。
 シルクは湯あみ着を脱いで、普段着に着替えてるな。
 ……待て、なんでシルクの服の中に私の服が埋めてあるんだ。

 私の服の上にシルクの服が置いてあるならまだ解るけど、シルクの服で包んであったぞ……
 あ、しかも服を着終わったら懐に入れちゃった。
 服を着た人が居るのに裸ってのは少し落ち着かないから、私も着ちゃいたいんだけど。
 ……あ、見覚えのあるガウンが棚から取り出された。


「えーっと、今日はログアウトするんだし普通の服でも良いんじゃ…… ダメ?」

 椅子から浮き上がりつつ聞いてみるも、「なんで?」みたいな顔をされる。
 最後の「ダメ?」で、とても良い笑顔でコクッと頷かれた。
 そうですか。ダメですか。

 にしても、昨日と違って洗ったり手入れをする時間も無いだろうに。
 いや、そもそも洗う必要も無いんだけどさ。


 考えている内にガウンを着せられて抱き上げられていた。
 あ、いけない。

「シルク、待って待って。椅子しまっちゃうから」

 まぁここに置いておいても構わないんだけど、一応ね。
 私の言葉を聞いたシルクは私を片腕で持ち直し、椅子をヒョイと片手で掴んで私の前に持ってくる。
 あ、予想は出来てたけど降ろしてはもらえないのね。
 まぁ良いけどさ。

 シルクに支えてもらいながら椅子と土台をボックスに収納する。
 いやー、やっぱり持ってもらえると楽だね。
 水分抜いても重い物は重いし。



 改めて両手で抱かれ、ふよふよと自室へ連れられていく。
 そういえばカトリーヌさん、お部屋あるのにテーブルでログアウトしてたな。
 まぁまだベッドも無いし、別の場所でもそう変わりないか。

 部屋に着いてベッドの上に寝かされ、そっと布団をかけられる。
 とりあえず灯りは消してもらっておくか。

「お疲れさま。それじゃ最後に暗くしてもらえるかな?」

 頷いて入り口まで戻り、ぺこりと頭を下げてスイッチに手を伸ばすシルク。
 さて、ログアウトすれば自動で送還されるだろうしこのまま出るとしようか。

 あ、なんか出てきた。
 「ログアウト前に専用の空間で感覚の修正を行いますか?」か。
 うん、一応行っておくとしよう。



 ……ん、あれ? 頭にギアがある。
 「はい」を選んだのにそのまま出ちゃったのか?

 あ、違う。私の部屋、こんな木製っぽい壁じゃないわ。
 頭から外してベッドに置いてみたけど、こんな部屋に最新機器って違和感が凄いな。

「うーん、ここでちょっと体を動かしてみれば良いのかな?」

「はい。リハビリルームへようこそ、白雪様」

「ふぉぉっ!!?」

 独り言に対して至近距離から返事があった事に驚いて奇声を上げる。
 あー、びっくりした。
 何で背後に居るんだ。わざと脅かしてないか、カメリアさん……


「っと、どうも。お久しぶりです」

 つい久しぶりって言ったけど、現実で考えるとまだ一日しか経ってないんだよね。
 まぁゲーム内だと一週間は経過してるんだし、一応ここもゲーム内だし良いか。

「はい。この度は多大なご迷惑をかけ、誠に申し訳御座いません」

 なんか深々と頭を下げられた。
 え、何?


「えっと…… あ、最初の説明が足りなかった事ですか? それはそういう決まりなら仕方ないですよ」

 いや、言ってはみたけど本当にそういう決まりなのかは知らないんだけどね。
 まぁカトリーヌさんも聞いたらほっとしてたって言ってたし、多分あってるだろう。

「白雪様の仰る事もですが、初めからこの空間を用意していなかった事で、白雪様の生活に支障をきたしてしまったかと……」

「あー、まぁちょっと人に怯えちゃったのと体を何度かぶつけたくらいなんで。大丈夫ですよ」

「そう言って頂けると助かります……」

 悪いのはカメリアさんじゃなくて開発だしなぁ。
 謝るなら運営・開発側が直接言うべきだろう。
 全体に向けて謝罪の告知は出してるのかもしれないけど。


 ……もしかして、実はカメリアさんも運営スタッフだったりするのかな?
 あ、でもお姉ちゃん達の話を聞く限りだと全員カメリアさんにガイドされてるっぽいんだよね。
 名前出しても「え、誰?」ってなってなかったし。
 一人ずつ順番に応対してる訳じゃないんだし、流石に全員を一人で同時にこなすのは人間には無理だろう。

 ……でも運営サイドならアバターの設定も自由自在だろうし、スタッフ全員の見た目が統一されてる可能性もあるか?
 うん、そのあたりを言い出したら考えるだけ無駄だな。
 話し方とかがきちんと統一されてたら探りようも無いし。
 仕草の癖とかまでじっと観察すれば、もしかしたら気付けるかもしれないけどさ。

 まぁそんなのただの想像だし、別に良いか。
 カメリアさんはカメリアさんって事で。


 実際、仮想空間だし割となんでもアリだもんな。
 あんまり色々考えてると、「私は現実世界に存在する人間だと思い込んでるけど、実はそういう設定のAIでした」なんてホラーじみた事にまで考えが飛びそうだし。

 ギアを介してこの世界に来てるって言うのはあくまでも「私」の認識であって、もしかしたらログアウトした先の「現実世界」も用意されたゲームの中なのかもしれない。
 ゲーム内のNPC達にとってこの世界が「現実」なのと同じ様に、そういう風に作られた別の世界を「現実」だと思ってるのかも。
 ゲームの中で感覚も完全に再現されてしまってる以上、区別のしようも無いんだから。


 ……ヤバいヤバい。あんまりこういう事考えてると、そのうち本当に心が壊れちゃうぞ。
 でも実際こっちからは判らないだけで、そういう設定の「プレイヤーもどき」とかが用意されてる可能性も……

 ええい、やめやめ。私は私だ。
 こういう時に黙って考えてるとろくな事にならない。
 とりあえずカメリアさんと話しながら、体を動かしてスッキリしよう。


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