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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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122/677

122:木と話そう。

 珠ちゃんを止めて木をじっと見つめる。
 むぅ、なんだこの面妖な木は。町中だし敵ではないんだろうけど。

「……あ、驚いた……? それじゃ……成功って事で……」

 いや、何がだ。
 しかし妙に間の空いた喋り方だな。
 それぞれの言葉自体はそこまでゆっくりじゃないから、余計に違和感がある。

「ほんとは……後ろから…………『わっ!』て……驚かそうと……思ってたの……」

 ……何でだよ。


「あ……いきなり、ごめんね……? わたし……エイス・メイ……っていうの…………めーちゃんって……呼んで……ね……?」

 とりあえず「あ、どもども」って感じに頭を下げておく。
 フレンドリーな木だなー……
 ん、そういえばカトリーヌさんの話に【樹人(トレント)】なんてのがあったような。
 もしかしてこの木、プレイヤーなのか? いや、NPCの【樹人】なんて可能性も無いでは無いけど。

「……あ……私、【聴覚強化】……あるから…………普通に喋って……くれればいい……よ……」

 【妖精】の声が小さいのは知ってるんだな。
 今は中継出来る人が居ないから、スキルを持っていてくれるのは助かる。


「あー、どうも。【妖精】の白雪です。こっちは召喚獣の珠です」

「……白雪ちゃん……に、珠……ちゃん、ね? ……よろしく」

「よろしくです。ところで、ここで何をしてたんですか?」

「ぼーっと……してた…………白雪ちゃんが……こっちに来る……のが見えたから…………びっくりさせようと……したら見つかった……」

 ……暇だったのか?


「見つけたというか、なんか魔力を持った妙な木だなー、って気になって見ただけですけどね」

「あれー、それじゃ……自分から勝手に…………出て行っちゃった……のかー……残念……」

「まぁそうなりますね。……失礼ですけど、その喋り方って素なんですか?」

「……んー? ……やー、この状態だと…………喋りにくくて……ねー」

 ん、種族的な制限でもあるのかな?
 このゲームの事だから、どんな嫌がらせが仕込まれててもおかしくないしな。


「……んー……聞いてる方も……面倒だよね…………ちょっと……待ってね……」

 お、何かやるのか?

「えーい…………んっ……」

 おぉ、左右の大きな枝を残して他の枝葉が引っ込んでいく。
 下の方も二股に分かれて行ってるぞ。
 ただ結構メキメキ言ってるけど、これ大丈夫なのか?



「ふー…… よーし、これで喋りやすいよー」

 ……うん、シルエットは人型になった。それはいいんだ。
 確かに人型だけど、でっかすぎるよ! 何メートルあるんだ、これ……
 比較対象が無いから判り辛いけど、常人の三倍はありそうだな。
 私から見れば五十メートル越えだよ。
 結構離れてるのに、殆ど真下を見るような体勢になってるし。

 というか喋ってる時も口は全く動いてないから、何で喋りやすくなったのかも謎だよ。
 いや、謎しかないからそんなの今更なんだけどさ。
 木の時だってどこから音が出てて、どこで音を聞いてたのかもよく判らないし。


「あー、痛かったー。改めてよろしくねー」

「あの変身、そんなに痛いんですか?」

「あ、そこまででもないんだけどねー。なんていうか、関節を鳴らす感触が、全身で起きる感じかなー」

 なんかぞわっとしそうだな、それ。

「で、たまーに痛いのが混ざる。我慢できる程度だけどねー」

 しかし、普通に喋れるようになっても微妙に間延びした喋りの人だな。
 別に何も問題はないんだけどさ。
 顔立ちはキリッとした格好いい感じの人なのになぁ。
 いや、人形みたいに表情が動かないから余計にそう見えるんだろうけど。


「あぁ、そうだー。白雪ちゃん、ここに座るといいよー」

 開いた手の平を前にして垂らしていた両腕から、左腕だけを動かし始める。
 ……すごいゆっくりだな。しかもまたメキメキ言ってる。
 体を動かす度にそうなるのか?
 あ、背筋も伸ばし始めたな。

「お待たせー」

 しばらく待つと、前を向いた顔の正面に左手の甲が配置された。
 ここっていうのはその手の上の事か。
 私飛べるから、足場は無くても大丈夫なんだけどな。
 というか、そこに珠ちゃんを連れていくのは無理だなぁ。
 下で日向ぼっこでもしててもらうか?


「珠ちゃん、木登りはお好きかなー?」

 ……うん、好きみたいだな。
 尻尾がピンってまっすぐになった。

「私の体、登っていーよー。痛くないから、爪出しても大丈夫ー」

 なんだかわくわくした顔で、こちらをチラッと見る珠ちゃん。
 いいよ、行っておいで。
 ただ落っこちない様にだけは気を付けるんだよ?

 珠ちゃんから降りて背中をぽんぽん叩くと、テテテッと走って行ってめーちゃんの脚に飛びついた。
 おぉ、爪をひっかけて器用に登っていく…… うわぁ、あれ現実でやられると痛いだろうな。
 ん、良く見ると両足は地面に繋がったままなんだな。移動はどうするんだ?


 珠ちゃんは遊びに行ってしまったので、一人で飛んでめーちゃんの手に座る。

「それじゃ失礼して……と。わざわざ止まり木を作ってくれましたけど、何か用件でもあったんですか?」

「んー? いやー、せっかくだからお喋りしようよ、と思ってー。何か聞きたい事とか、あるかなー?」

 あぁ、要するに暇だったんだな。


「あー、それじゃ一つ。その状態になっても根は張ってるみたいですけど、移動ってできるんですか?」

「んー、一応、不可能では無いかなー。でも結構痛いしすっごい遅いから、出来ないって言ってもいいかなー」

「痛いんですか?」

「んー。一歩ごとに足を上げて根を引きちぎらないとだからー。髪の毛をプチッて抜いたくらいの痛みが、足にちくちく刺さるねー」

 結構つらそうだな……


「でも、最初の二歩だけなんじゃ?」

「んーんー。さっきの動きの遅さ、見たでしょー? 一歩進むたびに根っこを伸ばして片足を固定してからじゃないと、足を上げたらそのまま倒れちゃうよー」

 あぁ、しかも受け身も取れないのか……
 下手をすると腕がへし折れちゃうんだろうな。



「そんな体なのにさー。ひどいんだよー?」

「え、何があったんですか?」

「あ、変な感じがするから、普通に喋ってほしいなー。で、何がひどいってねー」

 変な感じと言われても。まぁそう言うならそうするけどさ。


「ゲームのスタート地点って、港でしょー?」

「うん」

 あ、この人プレイヤーだな、うん。

「あそこって、石畳じゃない」

「うん、そうだね」

 あぁ、まともに歩けないのか……

「だから根っこも張れなくて、その場に転がったまま潮風に吹かれ続けて、枯らされちゃったんだよー」

 ……うん、もっと酷かった。
 本当にこのゲームの開発は意地が悪いな。


「死に戻りで噴水広場に出て、それからどうやって移動したの? あそこも根が張れないと思うけど」

「こんなでっかいのが転がってて、すっごい邪魔になっちゃったんだけどねー。横に落ちてきた【鬼人】のおねーさんが、ここまで担いで持ってきてくれたんだー」

 これを担ぐのか…… やっぱ【鬼人】って凄いな。

「カトリーヌっていう、有名な人だったんだってー。白雪ちゃんは知ってるー?」

「あぁ、うん…… よく知ってるかな……」

 そういえばあの人、アレさえ無ければ凄く良い人なんだっけ……


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