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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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115/678

115:塗りたくろう。

「ま、あんな奴の事は忘れて一杯食べな! どれにするんだい?」

 うん、何も無かった事にしよう。

「カトリーヌさん、何食べたい?」

「良いんですの……? あぁいえ、選ばせて頂けるのは嬉しいですが」

「んー、世の中には知らない方が良い事もあると思わない? というかあんまり関わりたくない」

 そもそも通訳が居ないとまともに質問も出来ないし。


「ふむ、藪をつつく必要もありませんか。ではイチゴをお願いします」

「はいはーい」

 リクエストに従いイチゴの籠から一つ選び、ぺちぺち叩く。
 別にカトリーヌさんが自分でやってみれば良かった気もするけど。


「はいよ、イチゴね。切ったげるからそこで待っといで」

 うーん、これ一粒くらいなら持ち上げられるんじゃないかな?
 叩いたイチゴのヘタを両手で掴み、力を込めて浮上する。
 おー、ちょっと重いけどなんとかなるな。

「ほらほら、無理しなさんな」

 おばちゃんが心配して手を出してくれたので、そこに置いた。
 うん、一粒くらいなら運べるな。だからなんだって話だけど。


「ほー、持ちあがるものなのですねぇ」

 先に妖精棚に座っていたカトリーヌさんが、少し感心したような声をかけてきた。 

「確かイチゴって一粒十グラムちょっとって聞いた事があったから、行けるかなーって思って試してみた。確かに、硬貨よりちょっと重い位だったね」

「なるほど。ところで白雪さん、何やら行列が出来始めている様ですが」

「あー、今日も販売するって思われちゃってるのかな? 一応さっき集めた蜜があるから、売る事は出来るんだけど」

「何か問題が?」

「いや、別に問題は無いんだけどね。ただ何も言わない内から集まられちゃうと、持ってなかった時になんか申し訳ないからさ」

「あぁ、確かにそれはありますわね」

「まぁ一応、いつも持ってる訳じゃないって言ってはあるんだけどね。お、出来たかな?」

「はいお待ち。……ほらあんたら、すぐ買わないんだったら邪魔にならないようにしな!」

 薄切りにしたイチゴを乗せた小皿を私たちの前に置き、行列を成していた人達に一喝するおばちゃん。
 悪いけど、蜜は食べ終わるまで待ってくれたまえ。


「おいしーですわぁー。この体は良い事づくめですわねぇ」

 両手で持ってスイカの様に食べながら喜ぶカトリーヌさん。
 良い事って、大半は「カトリーヌさんにとっては」じゃないかな。

「まぁ沢山買えば普通の体でも一杯食べる事は出来るけどね」

「うーん、そうかもしれませんが…… こう、プリンやケーキに飛び込んで、中から食べるというのもしてみたいですわね!」

「んー、掘り進むほど食べられないっていうか、進めても途中で埋まってそのまま死ぬのがオチじゃないかな」

 埋まったら翅も動かせなくなるし。
 一応崩れて来る前なら【空間魔法】で離脱できるだろうけど、そこまでする意味も無いだろう。


「白雪さん、夢が無いですわ。……はっ、それはそれでやってみたいですわね!?」

「いや、同意を求められても困るんだけど。私は無駄に圧死したくないよ」

「あっ、埋もれた後が勿体ないですわね…… 残念ですがやめておきましょう」

 まぁ、食べかけの上に死体が埋まってるプリンはなぁ……
 あ、死に戻りで消えるから「埋まってた」か。うん、どうでもいいな。
 どちらにせよ、いくら何でも捨てるしかないだろう。
 ……モニカさんあたりは欲しがりそうで怖いけど。



「ふー、食べた食べたー。ごちそうさまでした」

 完食したので手を洗い、おばちゃんにお辞儀する。

「ところで、今日はやるのかい?」

 何を、とは言っていないけど意味は解るので頷いて返事をする。
 そういえば今日はいつもの兎さんは居ないのかな?
 いや二日連続で居たってだけで、いつも居るのかは知らないけどさ。

「あぁ、あの子ならさっきまで居たけどね。何か言いたい事があるのかい?」

 きょろきょろしてるのを見て、おばちゃんが教えてくれた。
 別に何かあるわけでも無いので首を振っておく。
 ……さっきまで、か。うん、気にしないでおこう。


「ほら、始めるよ。蜜が欲しい連中は順番に来な」

 棚に銅貨を入れるザルと、何か立札を置いて宣言するおばちゃん。なんだこれ?
 前側を覗きこんでみると「妖精の蜜 銅貨二枚」と書いてあった。わざわざ用意してくれたのか。

「むぅ、お手伝い出来る事がありませんわね……」

「ん、カトリーヌさんもやる? 半分預けようか?」

「いえ、白雪さんにかけて貰いたい方も多いでしょうし、ぽっと出の【妖精】は引っ込んでいますわ」

「別に大丈夫だと思うけどなぁ」

「いえいえ。ファン心理を侮ってはいけませんわ。私はお客様に挨拶でもしている事にしますわね」

 いや、ファンっていう集まりでもないと思うけどなぁ。
 そうだったとしても私個人のじゃなく【妖精】のでしょ。
 まぁいいんだけどさ。これも仕事みたいなものだし、無理にやらせる気も無い。



 ってしまったー…… 一度死んだせいで蜜が全部むき出しになってる……
 むぅ、仕方ない。手がべたべたになるけど我慢するしかないか。
 素手で塗りたくられるのが嫌な人は、今日は諦めてくれ。
 最初の一人はどうしようもないけどね。
 兎さんが居れば先に言えたんだけど、居ないものは仕方ない。


「ありがとうございましたー」

 私が蜜をかけ終わったお客さんにカトリーヌさんがお辞儀する。
 うん、幸い嫌がられる事も無く順調に売れてるな。
 帰り際の挨拶も、何となく好評っぽい。

 あ、もう無くなるな。知らせないと。
 もう蜜が無いってアピールをすると、イチゴを持ったまま「えぇ!?」と言ってしょんぼりする羊さん。
 って貴女かい。今までと時間ずれてるのに、しっかり聞きつけて来たのか。
 大丈夫大丈夫。最後の一つだよ。


 手に付いた蜜を舐めとり、小鉢で手を洗って置いてある布で拭く。
 やっぱり手がべたべたになるのは手間だなぁ。

「ほら、もう品切れだよ。散った散った」

 列の残りの人達におばちゃんが品切れを告げ、撤収してもらう。
 うーん、いくつあるか先に言っておけば無駄に並ばせずに済んでたよなぁ。
 次からは気を付けよう。……伝える手段も考えないとだけど。


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