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VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
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101:耳を触ろう。

「まったく…… ほら、転がったままだと危ないよ……ってそれは望む所か」

 転がったままのカトリーヌさんの手を取り、引っ張り上げる。
 ずっとそこに寝ていられても話が進まないのだ。

「このサイズを満喫するのは構わないけど、とりあえず先にやるべき事を一通り済ませちゃおう?」

「すみません。せっかく案内して頂けるというのに、私が邪魔をしていては仕方ありませんわね」

「まぁ私はやりたいことやってるだけだし、あんまり気にしなくてもいいけどね」

 案内なんて要らないから自由にさせろって言うならさっさと引き下がるし。


「そうそう。でも踏ませようとするのは勘弁して欲しいかな……」

「まぁいいんじゃない? もう慣れたもんでしょ。そういえば、お姉ちゃんが私をぷちゅってしたのもこの辺だったっけ」

「むー、皆ずっとそれ言うんだからー。っていうか、殺すのなんて慣れないよ……」

「別に私達って、人間達と違って殺されても大して気にしないけどねー。あ、でもシルクがお仕事してる途中で消えちゃうのは困るな」

「軽いなぁ…… まぁペナルティないもんね。というか私達って、まだ二人しか居ないじゃない」

「まぁね。とは言え即死じゃなきゃ痛いから嫌だけど」

「私は大歓迎ですわ」

 うん、知ってる。


「即死できなかった時は【自爆】すれば……ってあれは使うと痛いんだっけ?」

「使ったことはまだ無いけど、わざわざ『激痛を伴う』って書いてあるってことは、かなりの物なんじゃない? あ、先に言っとくけど試さないでね?」

 一応カトリーヌさんに釘を刺しておこう。

「今は大丈夫です。先程ご迷惑をおかけしたばかりですし、流石に自重致しますわ」

 「今は」かー。まぁやってみるのは自由だし、案内が終わったら口出しする事じゃないか。
 他の人に迷惑がかからなければだけどね。



「さて。立ち話をしててもしょうがないし、とりあえずもう一度飛んでみようか。それじゃ…… ここまで上がってきてー!」

 普段飛んでいる十五メートル位の高さまで上昇して、カトリーヌさんに呼びかけた。
 地面から飛び立って、こちらを見たままゆっくりと上昇して近づいてくる。

「やはり、結構高い所を飛ぶのですね」

「うん、人の目につく高さとなるとこれくらいはね。で、ちょっと真下を見て?」

「はい? おぉ…… これは、中々……」

「慣れないと少し怖いってのはこういう事だね」


「ミ、ミヤコさん、少々頭をお借りしますわ……」

「えっ、ちょっと?」

 動揺したのか更に上昇して、戸惑うお姉ちゃんの頭にぺたんと座り一息つくカトリーヌさん。
 別に手を出してもらえば良かったんじゃなかろうか?

「あっお姉ちゃん、ストップストップ。迂闊に動くと死んじゃうかもしれないから、ちょっと待ってあげて」

 カトリーヌさんの元に向かいつつ、お姉ちゃんを制止しておく。

「う、うん。カトリーヌさん、大丈夫? っていうか雪ちゃん、どさくさに紛れて私の耳をモフらないで……?」

 このチャンスは逃さないぞ。なんとなく触らせろって言うのが恥ずかしくて、ずっとお預けだったからな。
 あ、へにょってなった。そろそろやめておこう。

 よし、いつかはあのふさふさの尻尾もモフってやるぞー。



「……ふぅ。もう大丈夫、落ち着きましたわ。ご迷惑をおかけしました」

 頭から飛び立ち、正面に回って頭を下げるカトリーヌさん。

「いやぁ、じっとしてればいいだけだったからカトリーヌさんはいいよー。それより、雪ちゃんがくすぐってきたのが辛かったよ……」

 あー、そういえばくすぐったいんだったな。シルクに掴まれてビクッてしてたし。

「ごめんごめん。つい、ね。これで許してよ」

 ふーっと【妖精吐息】をかけてあげる。

「むー。まぁいいけど……」


「落ち着いて見れば、なんともそそる眺めですわね。【浮遊】を解除してみたくなりますわ」

「それじゃ、まずは役場に行って【吸精】と【妖精魔法】の登録を済ませちゃおうか」

 スルーして話を進めてしまおう。全部に突っ込んでいてはキリがない。
 失礼な感じはするけど、それはそれでなんか嬉しそうだからいいや。

「私はどうしよっかな。役場の食堂でお手伝いとか出来ないかな?」

「登録のついでにライサさんに聞いてみようか。ポチ、いくよー」

 少し離れた場所に伏せで待機しているポチを呼んで、役場に向かって出発だ。



「す、すみません。出来ましたら、少々速度を落として下さいまし……」

「あ、ごめんね。うっかりしてたよ」

 自分がもう慣れているから、つい普通に飛んでしまったよ。

 初めは慣れていない生身での高速移動に加え、【浮遊】のレベルも低いので全力で飛ばないと人間が歩くのにも付いていけない。
 軽くぶつかるだけでも腕や脚の一本くらいはすぐにもげるから、気を抜く事も出来ないしね。

「これくらいなら大丈夫かな?」

「はい、なんとか…… しかし、初めて経験することばかりでとても新鮮ですわ」

「そうだろうねー」

 まぁ普通は自分の体一つで空中を高速移動する機会はあんまりないわな。




 雑談しつつ私とお姉ちゃんで障害物に注意して進み、役場にたどり着いた。

「ふぅ、ただ町の中を移動するだけでこんなに大変だとは……」

「まぁ慣れればどうってこと無くなるよ。【浮遊】のレベルが上がればスピードも出るようになるしね」

「速度にも慣れないとですわね…… しかしこれに慣れると絶叫マシンなど、どうということもなくなりそうですわ」

「あー、あれ位の動きなら自前で出来るしねぇ」


「おーい、早くおいでよー」

「あ、ごめんごめん。えっと、あのカウンターに居るのがライサさんって言って、【聴覚強化】を持ってる受付さんだよ」

「一人で来ることがあれば、あの方の窓口へ行けという事ですわね」

 軽く説明しつつ役場に入っていく。預ける訳ではないのでポチはお外で待機だ。
 ライサさんの窓口へ向かおうとしたら、私たちを……というかカトリーヌさんを見たライサさんが、机の下から缶を取り出して机にタンッと置いた。
 あー、あれ金平糖が入ってた奴だっけか。



「いらっしゃいませ、白雪様。そしてそちらの方は初めまして。私、ライサと申します。役場に御用の際は、私までどうぞ」

「私はカトリーヌと申します。よろしくお願いしますわ」

「まずはお近づきの印に、こちらをどうぞ。ここですぐに召し上がって頂いて結構ですので」

 あ、やっぱりだ。人差し指に一粒乗せて差し出してきた。
 受け取って口を付けるカトリーヌさんを、ニコニコ見守っている。
 いや、餌付けするにしても先に仕事してからにしなさいよ……


「ライサさん、誘拐しようとしたらまたジョージさんに締められますよ?」

「そのようなつもりはありませんとも。ええ。だから貴方は本来の仕事に戻ってくださいね」

「信用できねぇんだよ、お前は。で、そっちは新顔か?」

「あ、はい。新しい【妖精】のカトリーヌさんです。カトリーヌさん、この人はここの警備をしてるジョージさん。役場で変な事をしたら怒られるから、気を付けてね」

 ぺろぺろしてるカトリーヌさんに紹介しつつ注意しておく。

「いえ、変な事をすれば怒られるのは当たり前かと思いますが……」

 おおう、なんてこった。カトリーヌさんに普通に突っ込まれてしまった。
 そんな私を置いといて、二人は挨拶を交わしている。



「あ、そうだジョージさん。後でアリア様の所にも顔を出そうと思うので、話を通しておいて貰えますか?」

「はいよ。来るときには役場の中で呼べば迎えに行ってやるよ」

 ジョージさんはこちらの返事も待たずに消えていってしまった。



「私も居るんだけどなー……」

 お姉ちゃんが少し離れた場所で呟いていた。うん、なんかごめん。
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