挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOで妖精さん 作者:しぇる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

10/734

10:乗せてもらおう。

 レティさんの左手の上で急上昇に耐える姿勢を取ってから、ゆっくりと立ち上がって貰った。
 指をそろえて付け根を曲げて貰い、壁兼手すりを作ってもらっている。
 声が届かないのでジェスチャーでお願いした。

 さっきの握手で思った通り、レティさんは体を動かすのが上手い。
 きれいな加減速で出来るだけこちらの負担を抑えてくれた。


 泣きわめくお姉ちゃんをなだめたアヤメさんが近づいてきた。
 お姉ちゃんは落ち着いたみたいだけどその場で佇んでいる。

「すいません、また取り乱しました。ご迷惑をおかけしました……」

 レティさんの手の上で立ち上がり、頭を下げる。


「いやー、あれは取り乱すのも仕方ないだろう……」

「ですよねぇ。むしろこの短時間でまともに喋れている事の方が驚きですよ。
 私ならログアウトして逃げて、戻ってくるかも怪しいですもの」

 あっ。

「ログアウトっていう手段を完全に忘れてた顔だな……」

 お恥ずかしい。


 視線を逸らして周りを見て気づいてしまった。
 肩の高さまで上げて貰ったけど、今ここすごい高い。レティさんの手もそう広い訳じゃない。

「あの、失礼かもしれませんが座ってお話させてもらっても良いですか?
 上げて貰っておいて悪いんですが、ちょっと高くて怖いので……」

「あー、そっちの感覚だと五階建ての屋上くらいの高さなのかな?そりゃ持つとこあっても怖いわ。
 ってか私たちも座らない?そこにベンチもあることだしさ」

 う、移動か。レティさんは丁寧に運んでくれるとはいえ、横の動きに耐えられるかな?

「そうですね。では移動の準備をするので白雪さん、少し手を下げますので揺れに備えて頂けますか?」

 と思ったら考えがあるようなので、言うとおりにしゃがんで構えた。
 それを見てゆっくりと私が乗った左手を下げていく。

 お腹の前の辺りまで下がった所で止まった。手は横向きになっている。
 一旦指から手を離してくれと言われたので両手を下に降ろす。
 指がまっすぐ伸ばされ、そこに右手が近づいてきて指を重ねる様に左手の下に添えられる。

「これから親指を動かしますので、指の中ほどまで行って外側に向かって深く腰かけて下さい。
 両手は後ろについておいて頂けると助かります」

 言われた通りに動き、恐る恐る指の端から足を出し座る。

 するとゆっくりと左の手の平が起き上がり、私のお腹の前に親指が添えられた。
 左手が静止すると今度は右手が同じように動き、親指同士を接触させる。

 座禅の時の手の形を平たくした感じかな?


「私の親指に掴まっていてくださいね。
 それでは参りましょう」

 ジェットコースターの安全バーみたいに置かれた親指にしっかりと掴まる。
 ある程度体を固定できていると安心感があるな。


 ただこれ、傍から見るとかなり微笑ましい絵面になってるんじゃ……
 いや、やめよう。考えないでおこう。
 アヤメさんのこちらを見る顔がすこしほっこりしてたのなんて気のせいだ。


 やっぱりレティさん凄いな。
 歩いていても重心がブレてないのか、手も殆ど動かない。身体の制御能力がとても高い。

 とはいえ、私のスケールだと揺れ幅が10倍になるから流石にそれなりには揺れる。
 しかし親指を抱えていることでなんとかなる程度の揺れだ。


 程なくしてベンチの前に着いた。
 手を元に戻すと言われたので先ほどと逆の順番で動く。
 但し今度は手の高さを上げることは無く、私の乗った手の高さを殆ど変えることなく自分の胴体だけを降ろして静かにベンチに腰掛ける。

 レティさんは日本舞踊でも嗜んでいるんだろうか?
 あれってゆっくりと正確に、自分の意識した通りに体を動かせないといけないらしいし。
 いや詳しくは知らないけどね。


 それはさておき、お姉ちゃんが未だに近寄ってこない。

「アヤメさん、お姉ちゃんに私は怒ってないよって伝えて貰えませんか?」

「あいよ。 おーい! 白雪ちゃんが怒ってないからさっさとこっち来いってさー!」

 ちょっと言葉盛られた。

 それはいいけど、割と近くで大きな声を出されたので思わず耳を押えてしまう。

「おや? ごめん、うるさかったかな?」

「すいません。声の大きさもサイズと同じような差があるみたいなんです。
 私の声がアヤメさんにしか聞こえないくらい小さいのとは逆に、皆さんの声がかなり大きく聞こえてしまうんです」

「あー、そっかそっか。気付かなくてごめんよ。
 二人とも、白雪ちゃんからだと大声に聞こえるらしいから少し声を抑えめに話してあげて」


 あ、説明してる間にお姉ちゃん来てた。

 ベンチに座らずに膝立ちになってこっちと目の高さを合わせてくる。
 まだ涙目のままだ。

「ごめんなさい……」

 返事をしても聞こえないのは解ってるので顔の前で大きく「気にするな」と手を振っておく。

「ほら、怒ってないって言ってるんだから座りなよ。
 さっきみたいな事にならないように、ちゃんと気を付ければいいんだよ」

「……うん、 うん!」


 アヤメさんに諭されて普段通りの表情に戻ったお姉ちゃん。
 私(というかレティさん)を挟んで反対側に座った。

 ……やっと普通に話が出来るよ。長かったなぁ。
 いや、普通にって言っても私の声はアヤメさんしか聞き取れないんだけど。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ