歯医者
歯医者に行った。
以前通っていた歯医者は、出禁20年の刑をくらったので別の歯医者に行った。
最近出来た歯医者だったが待合室は異様な雰囲気に包まれていた。
すぐ隣の診療室からは断続的に悲鳴や命乞いが聞こえてきた。
僕は帰りたくなった。
黙って帰ろうと出入り口に行くと、ドアは外側から鍵をかけられていたので諦めた。
受付で若い男が「俺の人生を返せ!」「人間に戻してくれ!」と物騒なことを叫んでいた。
診療室から患者が一人出てきた。
目が虚ろで、足取りが怪しかった。
隻腕の男だった。
なぜか左腕が無かった。
僕は帰りたくなった。
受付の壁の上部に『歯科医療検定修了書 平成〇年〇月〇日 〇〇〇〇殿』と記載された歯科医師免許が貼りつけてあり、一瞬ホッとしたがよく見ると明らかに手書きだった。
僕は帰りたくなった。
しばらくすると、診療室から「次のモルモットを呼べ!」という男性の声が聞こえた。
どうやら歯科医は患者をモルモットと呼んでいるようだった。
僕は帰りたくなった。
診療室のドアが開き、白衣を着た美人な歯科助手に名前を呼ばれた。
歯科助手は狂喜に満ちた笑みで僕を見据え、手と白衣は真っ赤な血で染め上げられていた。
僕は帰りたくなった。
診療室の床は肉片や血液などで汚れており、人間の腕や眼球が落ちていた。
落ちている左腕はまだ新しいものだった。
警察に連絡しようと思い携帯を取り出したが圏外だった。
椅子に座らされ麻酔を打たれた。
なぜか頭部に打たれた。
注射器の中には黄緑の蛍光色で沸騰した液体が入っていた。
…目が覚めると自分の部屋のベッドにいた。
どうやって家まで帰って来たのか記憶がなかった。
部屋の鏡で確認すると虫歯が綺麗に治っていた。
僕はこめかみに刺さっていたボルトを抜いてまた床についた。(ヒジに付いていた刃物はカッコイイのでそのままにしておいた)
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