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SaveOurSоuls《セーブ・アウァ・ソールズ》 DE《こちらは》総通局・電波監理部・監視第二課 作者:にのい・しち
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走れ!(×10)走れ!

 最後尾の車両で過ぎ行く風景を見守る男。
 彼は鉄道をこよなく愛している。
 故に鉄道員は天職となった。
 彼が仕事と同じくらい愛しているものがある――――家族だ。

 休日はリビングの床でゴロ寝をしながらテレビを見ていると愛する妻の掃除機に追い回され、リビングを締め出される。
 出会った頃は控えめで、細い身体は抱き寄せただけで砕けるかと思うくらい可憐だった。
 今は見事に肥えて家で歩くと怪獣のように室内が振動し口を開けば遠吠えのように近隣は週末旅行に行っただの近所の美容室に行く金が無いのは給料が上がらないからだと不満を漏らす。

 高校生の一人娘は生まれた時は天使のようとしか言いようがない可愛さで身体はマシュマロでも詰まっているかのように柔らかかった。
 笑う顔や泣く顔、怒った表情を幾度となく見ている内に幼稚園、小学校、中学校、高校生まで上がりいつの間にか悪態を付くようになるほど成長していた。
 そして思春期の娘は父である彼と口すら利かなくなってしまった。

 だが、長い結婚生活で妻の容姿や性格が変わろうと年頃の娘に無視されようと、愛する家族と生活の為に鉄道員はこれからも働て行く。

 電車が減速して行き車両全体がきしむ音が響くと、彼は通信機を手に取り先頭車両の運転手に確認した。

「どうしました?」

『停止信号です。多分、次の駅で問題が起きたんでしょう』

 彼は忙しい通勤ラッシュの運行を止められることに嫌気がさす。
 仕方ない、よくある事だ。
 後続の電車が来るまで時間はある。
 気を取り直し無線機に声を吹き込む。

「了解しました」

 彼が無線を切ろうとした瞬間、マイクから不穏なノイズが聞こえて来た。

 XXX XXX XXX,

 十字路の真ん中で足を止める。動きを止めた十和田を見て月宮後輩が声を掛ける。
「どうしたんですか? 先輩」

「電車が止まってる……」

 指を差し、踏切で止まる満員電車を後輩にも解るよう見せると彼女は当たり前のように言う。

「またですか。今度は遅延で時間の調整をしてるんでしょうね」

 確かに、何も気に病む光景では無い。何処かの駅で人身事故や出発の遅れが出た為、運転中の電車を一時ストップさせ電車同士の衝突が起きないよう運転を見合わせている。

だが――――。

「嫌な予感がする」

「何がですか?」

「電車は大きなカーブを曲がり切ったところで止まっている。しかも、住宅が壁のように並んでいるから、後から来る電車にはカーブの先が見えない」

「でも、停止信号が有るから後から来る電車も自然と止まるんじゃ」
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