やあっ!皆!元気かい?
俺はクリーンマン。
汚い物や行動に対して敏感に反応して変身する正義の戦士さ。
前回の展開からこんなに月日が経ってしまったね。
え?今どこにいるのかって?それは勿論決まってるじゃないか。
自分の生まれ故郷の田舎町だよ!
え?前回は海外で終了したって?
「4」の終わりの時のことかい?そんなことは覚えてないなー。
そんことをいちいち気にするほど心の狭い人なのかい、君は?
それでも何か理由が付けいるのであれば、『ノコノコ舞い戻ってきた』でいいんじゃねーのっ!
ま、とにかくまた俺の活躍で町の安全は大丈夫だから。応援よろしくなっ!
久しぶりに戻ってきたこの町。
懐かしい。
俺が海外でデビューを果たした時にはさぞかし俺のことで盛り上がりを見せただろう。たぶん。
変身してないせいか、誰も俺のこの姿に気にも止めない。
最初に会いに行く人は決まっている。
新聞記者で俺の唯一の理解者である宮下裕子である。
なかなかの美人なのだが、その勝気な性格は正義の味方の俺を持ってしても恐怖へと導くほどの力だ。
俺は彼女の会社へ行った。
彼女は俺の顔を見るなり、「ああ…」と素っ気なく呟いた。
なんだ、その返事は?
俺は不機嫌になった。
久しぶりに会ったというのにその態度。
言い忘れたが、彼女とは昔結婚寸前までいったこのあるほど仲なんだぞ。(「3」参照)
「…お…おう、戻ってきたよ」
俺も平然なフリをしながら言った。
彼女は冷たい視線を俺に繰り出して、「あんたの居場所は…もう…ないわ」と悲しそうに言った。
なんだ?何を言っているのだ?この女何を言っているのだ?
俺は混乱した。俺の混乱振りを見て彼女は再度口を開いた。
「新しい戦士が現れたの」
新しい戦士。
何者だ?そいつは?
宮下裕子には余裕たっぷりに「あっそ」と答えたが気が気でならない。
俺の積み上げてきたこのヒーローの道がイバラの道に変化したことを肌で感じ取った。
「きゃあ!」
突如女性の悲鳴。
俺は早速出番だと急いで声の方へ向かう。
そこは変質者が美人を襲っていた場面であった。
決して美人だから息巻いたわけではない。
決して助けた後のことを考えたわけではない。
「うむむ!」
俺は美人を助けようと飛び出した。
瞬間!
突き抜ける一陣の風。
新しい戦士が登場した。
その戦士は颯爽と俺の前に立った。
「そこのうすらとんかちのアホ丸出しの変態野朗!」
戦士はうすらとんかちのアホ丸出しの変態野朗の変質者を指差して叫んだ。
うすらとんかちのアホ丸出しの変態野朗の変質者は戦士を睨んだ。
「なんだてめぇは」
戦士はパンパンと手を叩きクルッと一回転。
「俺の名前は…スーパー戦士!…」
回転が戻ると同時に高々とポーズを決めた。
「スーパァーマンだ!」
………………。
なぜか非常に微妙な感じのする名前だぞ、著作権とか、なんやらかんやら。
「いくぞ、このうすらとんかちのアホ丸出しの変態野朗め!」
スーパァーマンはうすらとんかちのアホ丸出しの変態野朗の変質者に勝負を挑んだ。
「素敵―!スーパァーマン様ぁぁぁぁ!」
なんてことだ。今まで俺の得られなかった黄色い声援が…奴に…。
しかもいつの間にか戦いの舞台は東京ドームへ。
更にリングが張られ、リング上には、変質者と俺とスーパァーマンの3人。
うそん。
実況は宮下裕子だ。
前々からいい加減だとは思っていたが、これは酷すぎないか?
作者も調子に乗りすぎではないか?
今回はシリアスだろ?ストーリーだろ?
おかしくないか?なんで急に…。
「おい、…黙れ」
宮下裕子は声低く静かに言った。
俺は黙るしか術はなかった。
そんなこんなで、スーパァーマンは変質者を倒したみたいです。
それはもう核とか大砲とか使ったそうです。
地球が半分消えたそうです。
いよいよ俺との対決。
そういえば、こいつの容姿を説明するのを本気で忘れていた。
スーパァーマンは男です。
ギリギリまで性別を決め兼ねていたからです。
赤いマントしてます。
青いコスチュームです。
胸に平仮名で「すうぱあ」って書いてます。
その文字を逆三角で覆ってます。
彼の本名は苦楽県都だそうです。
それがこのスーパァーマンの容姿です。
とにかく強いそうです。
俺よりも強いみたいです。
でも最終的に俺が勝つみたいです。
…って何言ってんの〜!?
「さあ、いよいよ緑怪人ことクリーマンと我らがヒーロースーパァーマンとの一騎打ちです。実況は私世界の記者宮下裕子がお送りします」
「さあ、さあ、かかってこいやー、緑怪人、いや、クリーンマン、俺はスーパァーマンだ!」
「ふっ、後悔するぜ、俺はクリーンマンだ!」
「おお〜っと、緑怪人、自ら唾を道端に吐いた〜!彼の身体が光り輝く!これが!そう!緑怪人、クリーンマンです!全身緑色に胸に『くりん』の文字、あ、これは『クリーン』って意味です。遂に現れましたクリーンマンです!実況は私宮下裕子です」
「ふふん、出たな、行くぞ、クリーンマン!俺はスーパァーマンだ!」
「覚悟しろ!俺はクリーンマンだ!」
俺は、いつの間にか世間で完全な悪役となっていた。
最初のころが懐かしい(「1」最後参照)俺の時代があったはずなのだ。
こんなどこの馬の骨ともわからぬ奴に、ヒーローの座を奪われるなんて…。
いや、でも、こんな全身緑の俺が受け入れられるはずがないんだ。
こうなれば、いっそのこと、悪役のままで通すか…。
汚いことをし続ければ一生この姿のままになる。
それもいいか。
俺なんて…。
俺なんて…。
俺なんて…。
「そんなことないよっ!」
子供の声が響いた。
振り返るとそこには身に覚えのない子供がいた。
「そんなことはない!貴方は、僕の命の恩人じゃないか!」
涙ながらに子供叫んだ。その場がざわつく。
「…え?」
「忘れたの?貴方が…貴方が…僕を助けてくれたことを!」
「…あっ!!」
俺の脳裏に過去の記憶が鮮明に蘇る。
そうあれは2年前、汚物にまみれた最悪の川で溺れていた子供を飛び込んで助けたことがあった。
当然汚いから変身する。
あの時の子供か!
俺の姿が焼き付いていたんだなぁ。
俺の心に勇気がわく。
そうだ。
負けるわけにはいかない。
俺のやってきたことは間違いではない。
俺は俺の信じる道をこれからも行くしかないんだ!
俺は復活した。
「ありがとう、君のおかげで、俺は救われた。今度は君が俺を助けてくれたんだね」
俺は笑顔で子供に言った。
さっきまで泣いていた子供はなぜか涙も乾き真顔で俺の顔を見ている。
「…?どうしたんだい?緊張してるのかい?君の名前を教えてくれよ」
俺は握手を求めた。
「……」
子供は喋らないし、動かない。
じっと俺の顔見ている。
やがて、確信を込めて、うん、と頷いた。
「ごめん、違う人だった」
子供はさあ〜といなくなった。
「うそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
という俺の叫びと、ガラガラ崩れる当てにならない自身の記憶。
そして、呆れて席を立つ観客が見えた。
「くぉら!貴様!ダラダラ時間延ばししやがって!このスーパァーマンの活躍はいつ見せることができるのだ!?」
「そうよ、そうよ、世界に羽ばたく絶妙な実況でメジャー進出狙っていたのに!私こと宮下裕子が!」
2人は怒って俺に言った。
「ああ、すまん、じゃあ始めようか…」
力なく俺は言った。
「テンション低っ!」
2人はハモった。
今になって気付いたのだが、観客が1人もいなくなっていた。
皆呆れ返って帰ってしまったのだ。
俺よりもがっくりとうな垂れるスーパァーマンと宮下裕子。
スーパァーマンは騒がれたい。
宮下裕子はメジャーデビュー。
見てる人間がいないのであれば、それは叶わぬことである。
「あ…じゃあ…」
「え?ああ、お前の勝ちでいいよ」
スーパァーマンは言った。
なので、見事俺は勝利した。
いいのか?これで?
虚しさが残るこの気持ちで俺は町を歩いていた。
いつもと変わらぬ町、喧騒、当たり前の一日が始まっている。
俺はなぜこんな特殊な身体で生まれたのだろうか?
悲しくなる。この身体がなければ、今頃普通に暮らしているのだろう。
親を恨む気はない。
親父だって悩んでいたはずだ。
でも、時代が違う。
今の時代は俺が受け入れられる時代ではないんだ。
必要とされない。
俺はいらない。
この世にいらない人間なのだ。
「死のう」
俺はぽつりと呟いた。
数日後。
俺は遊園地にいる。
アトラクションのバイトだ。
汚い物を見ると瞬時に変身するこのトリックなしのパフォーマンスが受けに受け、ちびっ子達の人気者だ。
ほら。こんな俺にだって使い道はあるじゃないか。
いらない人間なんているわけがない。
いてはいけないことなどない。
人は何かの理由があってこの世にいるのだ。
俺は全てを悟る。
いつか来るさ、また、俺の時代が。その日まで、人生を諦めるわけにはいかない。
なあに、死にやしないさ。
なんとかなるもんさ。
俺のことを人違いだと言っていたあの時の子供がいた。
俺は感情抑えきれずにドサクサに紛れてドロップキックを食らわせてしまった。
瞬間でクビ。
な…なあに、なんとかなるさぁ…。
家に帰ると、手紙が3通入っていた。
ファンレターというやつだ。
俺は嬉しくて泣きそうになった。
1通目は小さな子供が親に教えられながら書いたのだろう。
全然読めない。
だけど『頑張って』とか書いている。
ところどころ『バカ』とか読めるが気にしない。
2通目は宮下裕子だった。
『とにかく頑張れ』と緑色の封筒に緑色の字で書かれてあった。
この女の考えていることはよくわからない。
俺をけなしたり励ましたり、結局何がしたいのだ?
3通目は封筒には宛名がなかった。
開けてみると。
『やあ、元気かい?今回はすまなかったね、君に辛い思いさせて悪かったね。色々考えたんだけどさ、思いつきでその場その場で書くことの難しさを体感したよ、うん。次回はさ、ちゃんと考えてさ、書こうと思うんだ、何かリクエストあるかな?ある?いや、ネタがないとじゃなくてさ、君の希望を聞こうとしてるんだけどさ……』
延々と言い訳めいた文章である。
宛名は…『作者』とあった。
俺はその手紙だけをグシャグシャに丸めてゴミ箱に捨てた。
クリーンマン5 完
あとがき。
え〜、どうも。
今をときめくクリーンマン作者のハンサムです。
クリーンマンもシリーズ「5」となりました。
皆さん、読んでいただきありがとうございます。
今回は従来のパターンを休憩して、シリアスで、ストーリー性のある話を真面目にやろうと決めたのです。
…が。
あれが、僕の限界ですよ。
結局ああなるのですよ。
前半真面目に書いてて、中盤で、あ〜、やっぱこれだな〜となって。
後半なんとか真面目路繊に戻そうと努力はしたのですが…。
最後の最後でこれですわ。
「4」の時に初出演して以来、味をしめた作者は今回も友情出演してしまいました。
クリーンマンの格言で「困った時は作者出せ」というのが確立してしまったみたいですが。
さて、「6」の件ですが。
構想全くありません。今回に懲りて元のパターンに戻すことになるかとは思いますが。
でもね、「5」のテーマはね、ちゃんと考えていたんですよ。
わかりました?その辺のところ?
ええ、最後の方の…。
そうそう。
『いい加減』…ってちゃうぞ!!!
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