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死ぬ理由と生きる理由
作:霽月



第7話「今の状況を打開するために」


 あの崖から帰ってきてからすぐに私はベッドの上に横になった。暗い部屋の中で天井を見つめながら今日のことを思い返す。
 また、夕方になるまで彼と一緒にいる羽目になってしまった。
 ただ、今日は昨日と違って彼は何か食べ物や飲み物を買いに行ったりはしなかった。それに、昨日よりも早い時間に会っているから昨日よりも一緒にいた時間は長い。
 だからと言って会話の量が昨日より多かったかというと、そんなことはなかった。昨日と同じくらいしか言葉を交わしていない。
 だけど、今日は新しく彼のことに関して知ることが出来た。それは、彼が昔、死にたい、と思っていたということだ。
 少ししか会話をしないのにそういうことを知れる、というのは結構珍しいことなのかもしれない。私は聞かれれば普通に答えるけど一般的な思考の持ち主はそう言うことはないと思う。死にたいと思ったことがある、ということは何かがあった、ということだ。わざわざ自分の傷に塩を塗るような真似はしないと思う。
 何か特別な理由があるか、私みたいに少し変わった思考を持っているかのどちらか出ない限り。
 彼はどっちなんだろうか。特別な理由があったのか、それとも変わった思考を持っているのか……。
 少し考えてすぐに考えることを破棄してしまう。どうせ私は近いうちに死んでしまうんだ。彼が死にたいと思っていたということをどうして私に言ったのかなんてどうだっていい。
 それよりも今はどうやってあの場所で彼に会わないようにするかを考えないといけない。彼がいたらあの場所から飛び降りることができない。
 とりあえず、彼をあの場所から離す方法を適当に思い浮かべてみる。
 説得する、のは無理だろう。今日、実際にやってそれほど効果が出なかったわけだし。
 じゃあ、力尽く追い返す、というのはどうだろうか。これはまだやっていない。でも、よく考えてみれば、彼は男で、私は女だ。特別に何かをやってるわけでもないので力尽くでやったところで軽くあしらわれてしまいそうだ。
 それなら、どこかに隠れておいて時間になったら飛び出していく、というのは……私自身が気に入らない。死ぬ直前くらい落ち着いていたい。そんな慌てた様子で死にたくなんかない。自分の死に方はちゃんと拘らないといけない。
 更に頭を捻らせて考える。何個か案が浮かんだけど、気に入らなかったり、うまくいきそうになかったりと良いものは浮かばなかった。
 う〜、と唸りながら知恵を絞る。天井を見ていたはずなのに気がつけば仰向けになって枕に顔を突っ込んでいる。
 と、彼が言っていたあることを思い出した。彼は最近引っ越してきた、と言っていた。そして、手続きをちゃんとしてなかったから今週は学校に行くことができない、というようなことも言っていた。
 そうだ、彼は学校に行かなくてはいけない身なんだ。普通に私と一緒にいたからそのことを完全に忘れていた。
 思い出せばあとは考えなくても自動的に答えが導き出された。
 そう、彼は来週から学校に行かなくてはならない。ということは、来週の月曜日から彼はあの場所には来れないはずだ。そうなれば、あとは簡単だ。彼がいないんだから私があそこから飛び降りればそれで終わりだ。
 答えが出てしまえば本当に簡単なことだった。待つのはあまり好きではないけど、この際仕方がない。
 あと、月曜日になるまではあの場所には行かないようにしておこう。私がもうあの場所には行かなくなったんだと彼に思わせることができる。そう思わせることができれば彼はもう私のことなんかすぐに忘れてしまうだろう。あまり多くの人に私のことを覚えていてほしいとは思わない。
 私みたいないてもいなくてもそれほど変わらないような存在でも、死んだ、ということが広がれば私を知っている人に衝撃を与えてしまう。できるなら、そういう衝撃は与えたくない。静かに最後まで誰にも死んだことを知られることなく終わらせるのが私の理想としている形だ。
 不謹慎だと思われるかもしれないけどこうやって、死ぬ事について考えていると楽しくなってきた。
 今日は金曜日。月曜日まではあと三日。その間、私は何をしていようか。












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